249 赤い石の性能
子供たちも一緒なので、少しゆっくりめに拠点へと歩いて行く。
ゆっくりでも、ボアボアの家エリアと拠点は近いのですぐに到着する。
「だんろーだんろー……だん……ろ?」
「きゅ……きゅお?」
先頭を歩いていたフィオとヒッポリアスが、足を止めた。
「しろい!」
「きゅお!!」
フィオとヒッポリアスが見ているのは、白くなって、ものすごく高熱になった赤い石だ。
もはや白い石である。
それをヴィクトルとイジェ、それに三人の冒険者が囲んでいた。
「ほう、凄いな、クロ、ロロ、ルル、近づいたらだめ」
『わかった』「ぁぅ」『ちかづかない!』
子魔狼たちはそういうが、赤い石に対する興味を隠し切れていない。
油断したら、匂いを嗅ぎに行きそうだ。
「シロ、フィオ。クロ、ロロ、ルルをあまり近づかせないように頼む」
「わかた!」
「わふ」
「ボエボエとベムベムも、近づいたらだめだよ」
「ぶい!」「べむう!」
「このあたりから、近づいたらだめ」
赤い石から三メトルぐらい離れた地面に足を使って線を引く。
「ぶぶい!」「べむ」
俺はベムベムの手を離して、頭を撫でる。
「ベムベムはケリーと一緒に居てくれ」
「べむ!」
俺が赤い石に近づくと、ヴィクトルが笑顔で尋ねてくる。
「テオさん、あれはサイロですか?」
「ここからも見えるか?」
俺は後ろを振り返った。
木々の向こうにサイロの上部が見えた。
「おお、見えるな。たしかにあれはサイロだ。だが見よう見まねなんだ。上手く機能するかどうか」
「機能すれば、冬季の陸ザメたちとヤギたちの食事が助かりますね」
「そうなんだが、どちらにしろ、今年は難しいかもなぁ」
「サイロ、ミタイ!」
「そっか、イジェも後で見に行こう」
「ウン!」
俺たちの会話を聞いていた冒険者の一人が言う。
「俺の地元にもサイロはあったなぁ、懐かしい」
「そうか、もし良かったら、後で見て問題点とか合ったら教えてくれ」
「任せろ! と、いっても俺はサイロの使用者側で、制作側じゃないから、アドバイスは難しいが」
「それでもいいさ。よく知っている人の感想は役に立つ」
「そっか! 任せろ!」
サイロの話が終わったら、赤い石の調査だ。
そして、俺は赤い石に手をかざす。離れているのに暖かい。
「かなり高温になるんだな」
「ウン。サムイフユでも、アンシン」
「いつから、この状態なんだ?」
「そうですね。十分前ぐらいでしょうか?」
「ソノグライ!」
やはり、魔力をこめてから本領を発揮するまで、一時間はみた方が良いらしい。
「イジェ、この状態が一日続くのか?」
「ウン。ツヅく」
「テオさん、どうですか? 薪の代わりに使えますか?」
「そうだな……。多分使えるが、念のためにもっとよく調べてみよう」
「お願いします」
これだけの熱量を出しているならば、充分家を暖めてくれるだろう。
だが、結論を出すためには、鑑定スキルを使ってしっかり調べた方がいい。
俺は発熱する赤い石に鑑定スキルをかけた。
「おお、充分熱いな」
「具体的にはどのくらいですか?」
「……そうだな。アルミニウムなら融けかねないな」
「おお、それはすごい。ならば暖炉の材料も気をつけなければいけませんね」
「だが、流しの製作につかった、鉄、クロム、ニッケルの合金ならいける」
「優秀な合金ですね」
「ああ、配合比率次第だが、鉄よりも融点は高い」
「テオさん、アカイイシのセイノウはドウカナ?」
イジェは、なぜか少し不安そうに首をかしげている。
「素晴らしいよ。まず熱が充分高い。そして何より、輻射熱が多い」
「フクシャネツ?」
「なんと説明すればいいか……」
俺は考える。
少し離れた場所にいるフィオたちも真面目な表情でこちらを見ている。
フィオやシロ、ヒッポリアスたち、子供にもわかるように説明した方が良いだろう。
俺は赤い石に手をかざす。
「こうやると、触れてないのに暖かさを感じるだろう?」
「カンジる」
「かんじる! ごはんつくるとき、かまどもそんなかんじ」
「そう、フィオの感じたそれも輻射熱」
「きゅおー」「わふ」
ヒッポリアスとシロも理解したらしい。
子魔狼たち、ボエボエとベムベムは、何も言わないが、なんとなくわかっているっぽい気配を感じる。
「その暖かいのは、熱源の素材と表面の状況によって伝わりやすさが変わるんだが……、赤い石の伝わりやすさはかなりいい」
「イイって?」
「部屋が暖かくなりやすいってことかな」
「ソッカ。ヨカッタ」
赤い石の性能がわかったので、次は暖炉の構造だ。
「ちなみに、イジェの村の暖炉は、どういう構造だったんだ」
「ンーット。ヘヤのカベゾイにアッテ……」
「それは旧大陸の暖炉と同じですね」
ヴィクトルがうんうんと頷いている。
「アカイイシのマワリにコンナカンジデ、キンゾクのカガミをオイてた」
「鏡か?」
「ソウ。カガミ。コレが、アカイイシだとすると、コンナカンジで」
イジェは赤い石に見立てた、小石の周りに半月状の線を引いた。
「壁側に鏡か」
「ソウ。アッタカイのがカガミでハンシャして、ヘヤのナカがコウリツよくアッタカクなる」
「なるほど、輻射熱を反射させるのだな。理にかなっている」
少し離れたところで、子供たちと一緒に話を聞いていたケリーが頷いていた。
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