248 拠点に戻ろう
次はいよいよ暖炉の製作作業だ。
俺はみんなに告げる。
「暖炉の製作作業にはいるから、一旦拠点に戻るよ」
「ぶぶい!」「べむべむ」
ボエボエとベムベムは付いてきたいらしい。
「もちろん、見学してもいいよ、面白くないかもしれないけど」
「ぶっぶい」「べえむう」
「テオさん。赤い石だね!」
なぜかジゼラが張り切っている。
「そうだな。もう一時間ぐらい経っているだろうし」
正確な時刻はわからないが、そのぐらいは経過しただろう。
「ヤギたちはどうする?」
二十頭全員で来られるとと大変だが、数頭なら大丈夫だ。
「めええ~」
「ああ、そっか。子ヤギを迎えに行くのか」
「めえ」
「大丈夫か。誰か護衛をつけた方が良いんじゃないか?」
飛竜か暇な冒険者が一緒に同行すれば、子ヤギの移動も安全だろう。
「めえ!」
「大丈夫か。まあ、それはそうなんだろうけど……」
そもそも、子ヤギといえど、普通に外で暮らしているわけで、ただ歩いてくるだけで危険など無いと言う。
「うーん、念のためにぼくはついていくよ」
「めえ?」
メエメエは「本当にいいのか? 暖炉作りが楽しみなんじゃないのか? 危険などほとんど無いし、気にしなくてもよいのだぞ?」と言っている。
「もちろんいいよ。子ヤギが怪我したりしたら、後悔するし。赤い石の暖炉作りは何度もやるだろうし。ね、テオさん」
「ああ、後で見せよう」
「うん、お願い。メエメエ、行こっか」
「めえ~」
「がう?」
「うーん、飛竜は付いてこない方がいいかも。子ヤギが怯えるし」
「がう」
「じゃあ、また後で」「めえ~」「ちゅちゅー」
ジゼラとメエメエとその背にのるカヤネズミは、ゆっくりと歩いていった。
それを見送って、
「じゃあ、俺も一旦、拠点に戻るよ」
「ぶい」「がお」
「うん、ボアボアと飛竜、頼んだよ。何かあったら、拠点のどこかにはいるから」
「ぶぶ~い」「がぁお」
そして、俺は拠点へと歩いていく。
ヒッポリアスとピイ、ケリー、フィオ、シロ、子魔狼たちは一緒だ。
ボエボエとベムベムも、赤い石に興味があるらしく付いてくる。
「ぴい~?」
「ありがとう、疲れがとれるよ」
ピイのマッサージは本当に効く。
全身の疲労感や肩の凝りが癒えていく。
「いくらピイのマッサージがあっても、さすがに疲れないのか?」
ケリーが心配してくれる。
「まあ、大丈夫だよ。サイロは少し疲れたけど」
ヤギたちの小屋はヒッポリアスやボアボアの家と基本構造が同じだ。
だから、慣れてコツを掴んでいるのであまり疲れない。
だが、サイロは初めて作る種類の建築物だったので、いつもより疲れた。
「じゃあ、暖炉の製作も疲れるんじゃないか? はじめてだろう?」
「そうだな、でも、かまどと方向性は似ているし大丈夫だろう」
「そうか。無理はしないようにな。明日寒波が来るわけでもないのだし」
「うん。わかってる」
「だんろーだんろー」
「きゅおきゅお!」
フィオとヒッポリアスが楽しそうにはしゃぎ回っている。
ぐるぐる回りながら、俺たちの先頭を進む。
「わうわぅ」「……ぁぅ」「わふ」
子魔狼たちは、フィオとヒッポリアスの後ろをかけてついていく。
まさにコロコロといった様子である。
その少し後ろをシロがついていく。
子供たちは相変わらず元気だ。
先ほどまで子魔狼たちは眠っていた。
だが、ボエボエとベムベムは昼寝していない。
ボエボエは俺の隣を歩くケリーに抱っこしてもらっていた。
そして、ベムベムは右手でスコップを持ち、左手で俺の右手を握っている。
「ぶい?」「べむ?」
「ボエボエとベムベムは眠くないか?」
「ぶぶい!」「べむ!」
ボエボエとベムベムは眠くないと言っている。
しかし、いつ眠くなるのかわからないのが、子供というものだ。
「そっか、眠くなったら寝ていいぞ」
「ぶい!」「べぇむ!」
子供たちのことは注意して見てあげた方が良いだろう。
「ボエボエは、ケリーに懐いているな」
「そうだね。元々人懐こいんだと思うよ」
「ぶいー」
ボエボエはキマイラの子供だ。
だが、とても猪の子供、うり坊にそっくりなのだ。
そんなボエボエは、ケリーの胸に鼻をくっつけて、ふごふごいっている。
「そういえば、ボアボアにお乳をもらう話があったな。ケリーはどう思う?」
乳があれば料理の幅が拡がる。
チーズやバターも作ることができる。
昨日、収穫した燕麦と組み合わせればパンと合わせれば、食生活が豊かになるだろう。
「ボアボアの体調はもう万全だな。乳搾りしても何の問題もなさそうだ」
「そっか、じゃあ。あとで乳を分けて貰おうか」
ボアボアの了承はもう貰っている。
ボエボエの乳離れが急速に進んで。ボアボアは少し乳が張って痛いらしい。
「ふご……ぶい」
「……」
俺はケリー相手にふごふご言っているボエボエを見る。
ボエボエは肉が旨いから、母乳はもういいと言っていたが、本当はまだ乳離れしたくないのではなかろうか。
「ふむう」
ボエボエが母乳も飲みたい気分になったのなら、俺たちが分けてもらう量は控えめにすべきだろう。
あくまでも、ボアボアの母乳は、ボエボエのためのものなのだ。
「ぶい?」
「なんでもないよ」
「ぶぅい」
楽しそうなボエボエは元気に鳴いた。
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