241 小屋の設計
仕様が決まったら、建てる場所を決めなくてはならない。
「ボアボア、ちょっといいか?」
少し離れた場所でヌタ打ち場でぬた打っているボアボアに呼びかける。
ボアボアは気持ちよさそうにドロドロになっていた。
「ぶぶうい?」
「すまない。気持ちよくぬた打っていたところに」
「ぶうい!」
ボアボアは気にしなくていいと言ってくれる。
「ありがとう。ボアボア。」
「ぶい」
「えっとだな、ヤギたちとカヤネズミたち、それにフクロウたちの住処を作ろうと考えているんだが」
「ぶぶい」
「どのあたりなら邪魔にならない?」
「ぶうい~」
ボアボアは周囲を見回す。
ボアボアの家の周りには、道具小屋と温泉小屋もある。
そして、畑があり、畑の向こうにはぬた打ち場があるのだ。
「ぶい?」
「温泉の近くか」
「ぶぶ~い」
ボアボアはヤギたちも温泉に入りたいとのではないか、と考えたらしい。
「メエメエ、温泉は好きか?」
「めえ~」
どうやらヤギたちも温泉は好きらしい。
「とはいえ、冬は入りにくいよな?」
温泉に入ること自体はいいのだが、濡れた状態で外に出たら一気に凍り付いてしまうだろう。
「めえ~」
「あ、大丈夫なのか」
「めえめえ」
どうやら、毛の構造的に体は濡れないらしい。
それに、外側の毛は水を弾くから、そもそも濡れないとのことだ。
「めえ~」
「まあ、そうか。毛がびしゃびしゃになるなら、雨や雪で死んじゃうか」
ヤギたちは巣を持たずに生き延びてきたのだ。
雨や雪、強い風も、身を寄せ合うだけで凌いできたのだ。
柔な毛皮はしていないのだろう。
「じゃあ、温泉の近くにヤギたちの小屋を建てようか」
「ぶい」「めえ~」
ボアボアとメエメエの賛成を得られたので、建築予定地と歩いて行く。
「ぶいぶい~」
ボアボアは楽しそうに付いてくる。
メエメエとヤギたち、その背に乗ったカヤネズミたち、それにストラスとフクロウたちも付いてきてくれる。
みんな小屋に興味を持ってくれているようだ。
そしてジゼラは、いつの間にか、近くで草を食べている陸ザメたちと遊んでいた。
温泉の小屋を建てた裏側。
そこに広がる空き地に、新しく建てることにする。
温泉はボアボアの家の裏側に隣接している。
ボアボアの家の奥にある扉を開けたら、そこはもうお風呂場なのだ。
つまり、ボアボアの家、温泉、ヤギの家という並びになる。
ボアボアの家の出入り口、温泉、ヤギの家の出入り口は直線に並ぶ構造だ。
出入り口が真逆の方向を向いているが、寒いときはどちらかから入り、温泉を経由して移動すればいい。
「大まかな出入り口の方向と、建てる場所が決まったら、次は全体構造のイメージだな」
まずは、ぼんやりとしたイメージを、はっきりとしたイメージにするところからだ。
ヤギたちのために屋根を三角にして登りやすくしなくてはらなない。
そして、フクロウたちのために屋根の近くに出入り口と小さなベランダを作る。
窓もあった方が良いだろう。
ヤギたちやフクロウたちでも開閉できるように形に工夫をした把手をつけたほうがいい。
ヤギたちが入るメインの出入り口も大切だ。
大きくする必要があるが、あまり大きくしすぎると、寒気も入りやすくなる。
それに、カヤネズミたちが出入りするための小さな出入り口も必要だ。
ヤギの扉の近くに作ればいいだろうか。
「……カヤネズミたち」
ふと気になることができたので、尋ねてみる。
「ちちゅ?」「ちゅー」
「シロのおしっこの臭いは怖いか?」
魔狼の尿は、ネズミ避けになる。
尿に限らず、魔狼の匂いがする時点で、ネズミなどは近づかない。
ネズミにとって、魔狼は天敵だからだ。
「ちゅ!」「ちゅちゅちゅ」「ちっちゅ」
「なるほど、怖いことは怖いと」
「ちゅ~」
「だが、慣れたと……」
「ちゅちゅ~」
カヤネズミたちは言う。
そもそも、この拠点の匂いが怖すぎると。
「めえ~」
「ヤギたちも怖いか」
「めえ~~」
メエメエも言う。
拠点からは魔狼の匂いだけでなく、キマイラと複数の竜の匂いがしている。
まともな生き物は近づかない。
だからこそ、メエメエたちは拠点の存在は知っていても近づかなかったのだ。
「めぇ~」
そして、メエメエはボアボア、ベムベムと遊ぶ、ヒッポリアスと子魔狼たち、それと見守るシロに目をやった。
「めえ~めえ~」
「今は心強いか。そうだな。シロも子魔狼たちも、ヒッポリアスもヤギたちのことは仲間だと思っているよ」
「めえ」
強い生き物が仲間になってくれたのは頼もしい。
シロもヒッポリアスも、飛竜も、ボアボアたちも信用できるものたちだ。
そうメエメエは言う。
だからこそ、赤ちゃんヤギも連れてくる気になったのだと。
「そっか、よかったよ」
「ほっほう?」
ストラスが、それで本題は何だと聞いてくる。
小屋の建築計画を練っているときに、魔狼の尿について聞くのだから建築に関係するのだろう?
そう、ストラスは思ったようだ。
「ストラスは賢いな」
「ほほう」
お世辞はいいと言いながら、少しストラスは照れていた。
「旧大陸でも、フクロウは森の賢者って呼ばれていたよ」
「……ほう」
照れるストラスの頭を撫でる。
「それで、本題は、カヤネズミたちでも開閉できる扉を作ろうと思ったんだが……」
「ちゅちゅ?」
「そう。カヤネズミたち以外のネズミが入ってきたら困るだろう?」
野良ネズミに、餌を食い荒らされたり、糞尿で汚されたりされると困る。
「ほっほう」
「あ、たしかに、野良ネズミはストラスたちが対処してくれるか」
「ほう!」
フクロウはネズミの天敵だ。
「ほっほほう」
ストラスは、カヤネズミは食べないから安心しろといい、
「ちゅちゅ」
カヤネズミは、わかっているよと返事をした。
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