238 ヤギ小屋の相談

※※※1/14に6巻が発売となります。よろしくお願いいたします※※※

 ベムベムとボエボエをみて、ヒッポリアスと子魔狼たちが尻尾を振って、じゃれつきに行く。


「きゅうおー」

『あそぼあそぼ!』「ぁぅ」『いっしょ』

「べむ!」

「ぶぶい!」


 ベムベムもボエボエも嬉しそうだ。

 すぐに一緒に遊び始める。追いかけっこをするらしい。


「まてまてー」


 フィオも一緒になって、遊び始めた。

 フィオは子供なので、もっと遊んだ方が良い。


「…………」


 それを少し離れた場所からシロが見守る。


「シロ、ありがとう」

「わふ」


 シロはいつも保護者をしてくれるのだ。


 俺は子供たちを見守りながら、飛竜に尋ねる。


「ジゼラたちは遠くまで行ったのか?」

「がう~」

「なるほど。周囲を見回るだけか」

「があぁう」

「そろそろ戻ってくるのか。じゃあ、待たせてもらおうかな」

「がう!」


 子供たちがボアボアの家の方に走っていったので、俺と飛竜も近くに移動する。


「がう?」

 飛竜は何か仕事があったんじゃないのかと尋ねてくる。


「ああ、ヤギたちの小屋を建てようと思ってな」

「がぁう~」

「どんな小屋がいいのか聞きとりしないと、建てられないからな」

「がう!」


 俺と飛竜、そしてピイは遊ぶ子供達を見守りながら、ヤギたちの帰りを待った。


「テオさん、どしたの?」


 最初に、俺たちに気付いたのはジゼラだった。

 ジゼラの横にはケリーがいる。


「ストラスがテオが来たって教えてくれたんだ」


 ケリーはそういって、上を指さした。

 上空にはストラスたち、フクロウが旋回していた。


「ぶぶい」「めぇ~~」

「べむ!」


 ジゼラとケリーの後ろにはボアボアとヤギたち、陸ザメたちがいた。

 ヤギたちの背中にはカヤネズミたちがいる。


「カヤネズミたち、みんな食べているんだな」

「虫がいっぱいいたんだって」

「ちちゅ」


 ヤギたちの背に乗ったカヤネズミたちは、美味しそうに虫を食べていた。

 周囲を探索しながら、虫を捕まえたらしい。


「なんかねー。虫がたくさんいたんだって」

「ちちちゅ」


 虫が多いことは、農業的にはあまり良くない。

 カヤネズミたちが虫を減らしてくれたら農業的にも助かる。


「そっか、たくさん食べてくれると助かるよ」

「ちちゅぅー」

「新大陸のカヤネズミが好む虫の種類がわかってよかったよ。む? その虫は初めて見るな」


 ケリーはカヤネズミが食べている虫を観察しながら、メモを取っている。

 どうやら、探索中、ケリーはカヤネズミたちの生態調査ができなかったらしい。

 きっと、ヤギたちやフクロウたちの調査をしていたのだろう。


「ちゅー」

「ジゼラ通訳してくれ」

「ふぃおがする!」


 子供たちと遊んでいたフィオが駆けてきた。


「お、フィオ頼めるかい?」

「まかえて!」


 フィオはやる気だ。

 テイマーとして活躍できることが楽しいのだろう。


「ちゅう~」

「このあたりのいなごはふといから、うまい」

「そうか。イナゴも地域によって、太っていたりするのか、餌の違いだろうか」

「ちゅ~」

「ふゆがくるまえに、くいだめする」

「ほう。そうか、こちらのカヤネズミたちは冬は何を食べているんだ?」

「ちゅ~」

「このみ!」

 フィオを通訳にして、ケリーが順調に調査を進めている。


 そんなケリーとフィオを気にせずに、ヤギたちは近くの雑草をもぐもぐし始めた。

 ヤギたちの背に乗るカヤネズミを追いかけて、ケリーとフィオは移動していく。


 そして、ボアボアと陸ザメたちは俺のところに来てくれる。


「ボアボア、おはよう。陸ザメたちもおはよう」

「ぶうい!」「べむべむ~」


 俺はボアボアと陸ザメたちを撫でた。

 俺が撫でると、満足したのかボアボアはぬた打ち場に、陸ザメたちはヤギたちのところに移動していく。

 陸ザメたちも、ヤギたちと一緒にむしゃむしゃ雑草を食べている。


 そんな陸ザメたちとヤギたちに付いていかず、群れの長であるメエメエは、俺の前に来てくれる。


「めえ?」


 俺は俺で、俺の仕事を進めなくてはならない。


「メエメエ、昨日約束した小屋を建てに来たよ」

「めえ~」


 メエメエは大きな声で鳴くと、体の割に小さな尻尾を勢いよく振った。


「メエメエ、どんな小屋がいいの?」


 メエメエの名付け親であるジゼラが、メエメエを撫でながら尋ねる。


「……めぇ~~……めえ」


 メエメエは考えながら語り始める。

 メエメエの要望は極めて控えめだった。


 雨や風、雪が防げたらそれでいいと言う。


「もっと、何か希望があれば言っていいぞ。叶えられるかはわからないが、言うだけならただだ」


 俺が、そういってもヤギたちは要望を言わない。


「めえ~」

 今まで巣もない生活をしていたから、屋根があるだけでありがたいという。


「そっか。ボアボアの家みたいな感じでいいのか?」

「めえ!」


 すると、メエメエを撫でていたジゼラがいう。


「崖登りできる場所とか欲しくない?」

「めえ?」

「ほら、メエメエたちって、高いところに登るの好きでしょ?」

「めえ」


 好きだけど、別に巣の中になくてもいいよとメエメエは言う。


「そっかー。あ、なら、屋根に登れるようにする?」

「め?」

「テオさん。出来るよね?」

「まあ、可能だが……」


 屋根を三角にして、その先、軒の部分を地面の近くまで伸ばせば可能だ。


「だけど、屋根に登りやすいように、ひっかかりをつくると、雪が滑らなくなるから」

「めえ!」


 特に引っかかりはいらないとメエメエは言う。

 引っかかりなどなくとも、登ってみせると言う力強い意思を感じた。


「そっか、じゃあ。そうしようか」

「めえ!」


 ヤギの小屋の大体の方向性は定まった。

 次はフクロウたちへの聞き取りだ。

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