237 赤い石の性能を確かめよう
冬の間、イジェの村で赤い石で暖をとっていたとすると、気になることがある。
「大事なことを聞いてなかった」
「ナニ?」
「赤い石はいくつぐらいあるんだ?」
「ンーット。イジェのイエにはゴコアッタ」
「五個か。結構あるんだな」
五個もあれば、絶やさずに暖め続けることができるだろう。
朝と夕方に一個ずつ魔力を籠めれば、ほとんどの時間で二個の赤い石が稼働している状態にすることもできる。
「ムラゼンタイでは……タブン、ゴジッコグライ」
「五十個か。ちなみに……こちらに持ってくることってできるか?」
「デキルよ。もうジュッコぐらいモッテキテイルし」
「あ、服と一緒に?」
「ウン。アッタラベンリだとオモッテ」
「助かるよ。ありがとう」
「ウン」
五十個あるならば各戸に設置できるだろう。
赤い石が期待通りの働きをしてくれるなら、非常に助かることこの上ない。
暖炉を作った後、かなりの木を伐採しないといけないと思っていたが、その作業がなくなる。
伐採の必要がないと言うことは、各戸ごとに建てる予定だった薪小屋も建てなくて良くなる
とはいえ、イジェたちの村の家と俺の建てた宿舎は違う。
赤い石だけに頼っていいのかどうかはわからない。
とりあえず、本領を発揮した赤い石の状態を見てから考える必要があるだろう。
「じゃあ、一時間後にまた集まるか」
一時間ぼーっとしてもいいのだが、やることは他にもある。
「ておさん! いまのうちにだんろづくる?」
「いや、赤い石の性能次第で暖炉の構造自体かわるからな。いまから作るのは難しい」
「じゃあ、さとうつくる?」
「砂糖は人手が足りていそうだし……」
俺はイジェを見た。
「タリてる! ヤスミのミンナもテツダッテくれているし」
今日が休暇の冒険者たちもキッチンにいるらしい。
「本当は休みの日は休んだ方が良いんだがな」
「おサケがタノシミなんだって」
「そっか、すぐにできるわけじゃないんだがな」
酒は今日仕込んで、今日できるようなものではない。
だが、楽しみすぎるのだろう。本当に仕方が無いことだ。
「なら。今のうちにヤギの小屋を建築しようかな」
「やぎ!」
昨日、ヤギたちに明日にでも小屋を建てると言ったのだ。
ヤギの小屋自体はヒッポリアスの家やボアボアの家と構造的に大差は無い。
だからすぐに作れるだろう。
「じゃあ、俺はヤギの小屋を建築しに行ってくる。また後で」
「ああ、テオさん、がんばれよ」
「こっちは任せろ!」
「ガンバッテ!」
そして、俺たちはボアボアの家へと歩いて行った。
俺に付いてくるのは、フィオとヒッポリアス、ピイとシロと子魔狼たちだ。
ピイはいつものように俺の肩に乗っている。
「ピイ、ありがとう」
「ぴい~」
今日は随分大人しいが、たまに無言で肩を揉んでくれたりするのだ。
ピイはあまり重くないし、暖かいのでとても助かる。
ちなみに夏は冷たくて気持ちがいい。
「わふわふ」「……きゃふ」「わぁう!」
子魔狼たちは、じゃれあいながら転がるように走ってついてくる。
自分で走るのが楽しいらしい。
子魔狼たちの後ろをシロがついていく。
はぐれないように監督してくれているのだ。
『おおきくなる? きゅおー』
「大丈夫だよ、ありがとう」
ヒッポリアスは俺たちの前を歩きながら、こちらをなんども振り返っている。
「そだ! かやねずみのこやもつくる?」
「カヤネズミはヤギの背中で暮らしているらしいから、ヤギの小屋で済むんじゃないかな」
「そかー。ふくろうは?」
「フクロウはどうだろうな。別に小屋を作った方が良いかもしれない」
「そかー」
フクロウだって、冬には雪風を防げる場所が欲しいはずだ。
だが、ヤギたちとは欲しがる機能が異なるかもしれない。
「止まり木とか、多分いるよな」
「うーん。いえのなかに、きをはやす?」
「それは木が家の屋根を突き破ってしまうからな」
「そかー」
しばらく歩くと、ボアボアの家の前にいる飛竜が見えた。
飛竜は体が大きいので、遠くからでも目立つのだ。
「があう!」
小さく吠えると、飛竜は歩いてこちらに来てくれる。
「飛竜、調子はどうだ?」
「がう~」
飛竜は撫でやすいように頭を下げてくれるので、わしわしと撫でた。
フィオも飛竜を撫でる。
「ひりゅ! ごはんたべた?」
「がう!」
どうやらちゃんと食べたらしい。
「べむ~」
「ぶぶい」
ベムベムとボエボエが走ってくる。
ベムベムは右手で俺の作ったスコップを握り、左手で草を掴んでいる。
ボエボエはさっきまでぬた打っていたのだろう。
全身にまだ新しい泥が付いていた。
「ふたりともいい子にしていたかー」
ベムベムとボエボエを撫でる。
「べむう~」
いい子にしてたと言いながら、ベムベムは左手に掴んだ草をむしゃむしゃする。
「ぶうい!」
どうやら、ボエボエもいい子にしていたらしい。
「があう」
「そうか、ヤギとカヤネズミたちはジゼラとケリーと一緒に周囲の散策中か」
「がう」
そして、大人の陸ザメたちとボアボアはそれに付いていったようだ。
飛竜は、ベムベムとボエボエの子守のために残ったらしい。
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