227 フクロウ
その鳥は体高一メトルほどあるフクロウだった。
魔力を持っているので、魔フクロウだ。
魔獣としてはかなり強い部類だろう。
地上に降りた鳥はイジェの前に歩いて行く。
「ホッホウ」
フクロウが近づいていくと、イジェを囲んでいたヤギは道を開ける。
「ドシタの?」
「ホウ」
フクロウはイジェに甘えるように体をこすりつけた。
イジェは少し戸惑いながらも、フクロウを撫でる。
「イジェ。知り合いの鳥か?」
「ワカンナイ。ケド、オジサンとナカがヨカッタトリにニテイるかも」
「ホッホォ」
フクロウはおじさんはどこに居るのか聞いている。
「フクロウ。そのおじさんは、亡くなったんだ」
「ホホゥ?」
信じられない様子で、フクロウはイジェを見る。
「ホントウ。アクマにコロサレチャった……」
「…………ホ……ホゥぅ」
フクロウから悲しみが伝わってくる。
涙は流していないが、フクロウは泣いていた。
「オジサンのタメにカナシンでクレてアリガトウ」
そんなフクロウをイジェは優しく抱きしめる。
その様子を見ていたのか、続々とフクロウが地面に降りてきた。
フクロウは、最初に降りてきた者を入れて全部で五羽だ。
最初の一頭が一番大きい。
きっと群れのリーダーが安全を確かめるために一羽で降りてきたのだろう。
「ホウ?」「ホホッウ」「……ホウ」
降りてきたフクロウはリーダーから、オジサンが亡くなったことを聞いて悲しそうに泣いた。
五羽のフクロウは、しばらくの間イジェに体を寄せて泣いていた。
俺はフクロウが落ち着くのを静かに待った。
イジェに毛を梳いて欲しいはずのヤギたちも、大人しく待っている。
しばらく待っていると、フクロウのリーダーが俺の元に歩いてくる。
「ホホッホ」
「わかった、説明しよう」
俺がテイマーだと判断して。事情を聞きに来たのだ。
どうやら、フクロウは非常に賢いらしい。
俺はイジェの村に起こったことを、自分の知っている範囲で教える。
「ホホッホ」
「イジェ。そのときって……」
わからないことはイジェに尋ねる。
途中から、俺は通訳に徹した。
フクロウは尋ねたいことを尋ね終わると、俺に向かって頭を下げた。
「ホッホウ」
通訳したことに対して感謝された。
フクロウはテイムスキルについて理解しているようだ。
そして、人同士、お礼を言うときに頭を下げると言うことも知っているらしい。
「気にするな。ところでイジェのおじさんとは仲が良かったのか?」
「ホォゥホォウ」
どうやら、フクロウがヒナの頃からの友達だったらしい。
「そうか。辛いな」
「ホゥ」
しんみりした空気が流れる中、ケリーが静かに近づいてきた。
「テオさん、テオさん。触っていいか聞いてくれ」
「フクロウ、こいつはケリーと言って、魔物を研究している学者なんだ。触ることを許してあげてくれないか?」
「ホッホホゥ」
「いいらしいぞ、ケリーよかったな」
「ああ、感謝するよ」
ケリーはフクロウを優しく撫でながら、調べ始めた。
「ホホッホウ」
「ん、わかった。ストラスというのか、今後はそう呼ばせてもらおう」
「ホウ!」
どうやらフクロウのリーダーはストラスという名前を持っていたらしい。
イジェのおじさんが、つけた名前なのだろう。
「それでストラス。聞きたいことあるんだが……」
「ホッホウ」
「ありがとう。燕麦の畑を鳥から守っていたのはストラスたちなんだよな?」
「ホゥ」
「やはりそうか。それで、どういう条件で守っていたんだ?」
条件がわかれば、協定を再び結びなおすことも可能なのだ。
「ホホウ?」
ストラスは首をかしげる。
どうやら、ストラスは俺の話がよくわかっていないようだ。
賢いストラスにしては珍しい反応だ。
「ほら、燕麦の畑を守る代わりに、イジェのおじさんにもらっていたものだよ」
「ホウ」
「特になにももらっていないのか。じゃあ、何かしてもらったりとか?」
「ホホゥ」
「……撫でてもらっていたと」
「ホゥ!」
イジェのおじさんは、撫でるのがとてもうまくて、よく撫でてもらっていたらしい。
「それは、契約なのか?」
テイムスキルにおける第二段階。
つまり、対価を払って、協力してもらう対等な関係と言っていいのだろうか。
「ホウ?」
「なるほど。どうせ鳥は毎日食べるのだし、おじさんが助かるなら燕麦畑で食事するぐらいはすると」
「ホホウ」
「カヤネズミを食べなかったのは?」
「ホホッホウ?」
「カヤネズミはおじさんの友達だから、食べないと」
「ホウ!」
ストラスたち、フクロウの一族と、イジェのおじさんはテイムスキルで結びついていたわけではなかったらしい。
もちろん、最初に仲良くなる過程に、テイマーの能力で会話出来たことが大きく寄与したことは想像に難くない。
だが、ヤギやカヤネズミとは違い、フクロウは対価らしい対価はなく、友達として協力していたようだ。
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