224 ボアボアたちのお風呂を作ろう

 その穴はあまり深くなかった。

 だが面積が広かった。


『きゅお~、ひっぽりあすがんばった』

「おお、ヒッポリアス、頑張ったか。えらいな」

「きゅぅおー」

「それで、イジェ、この穴はもしかして」

「ソウ。おフロにスル」

「ぶぶぶい!」「がぁお」

 ボアボアと飛竜がお風呂に入りたかったようだ。

 だから、作業が終わったあと、穴を掘りに来たらしい。


「テオさん、オンセンできる?」

「ぶぅい~?」「がぁぁぉ?」

 ボアボアと飛竜は少し不安そうに首をかしげる。


「出来るぞ。前に地層を調べたとき、地下に暖かいお湯があったからな」

「ぶい!」「があお!」

「そっか、これから冬だもんな」

「ぶういー」

「だが、夏はともかく、冬はお湯が冷めるぞ?」

「ぶい……」「がぁぅ……」

「きゅお……」

「わふぅ……」


 ボアボア、飛竜、ヒッポリアスがしょんぼりする。

 フィオもしょんぼりして、尻尾が力なく垂れ下がった。


「まあ、何とかしよう」

「できるの?」

「うん。みんなが頑張って木を切ってくれたからね。木材に余裕があるから。建物を作ろう」

「ぶうい!」

「露天風呂じゃなくなるけど、いいかな?」

「ぶぶいぶいぶい!」


 ボアボアはとても嬉しそうだ。

 露天風呂じゃなくてもいいらしい。


「わかった。せっかくだからすぐに作ろう」

「ダイジョウブ? テオさん、ツカレてない?」

「うん、大丈夫だよ。ピイがずっとマッサージしてくれているし」

「ぴぃ~」


 俺はまず湯船から作り上げることにする。

 最初に、鑑定スキルと製作スキルを駆使して、穴の周囲の地面を石材で覆っていく。

 そして、次は湯船自体を石で覆う。


「水が染みないようにするのが大変なんだよ」

「きゅおー」

「でも、拠点の方で作ったのと同じだからね。そう難しくない」

『すごい! きゅおー』

「ここまでは簡単なんだが」


 俺は気合いを入れて、地中に鑑定スキルを掛けていく。

 深く深く鑑定スキルで探っていく。

 魔力が大量に失われ、膨大な量の情報が脳内に入ってくる。


「ふう」

 鑑定スキルで、水脈をとらえると、次は一気に管を伸ばす。

 金属で管を作って、地中の水脈を目がけて伸ばしていった。


「これも鑑定以外は難しくない」

『そなの?』

「ああ、拠点でやったのと同じだし、拠点より低い位置にあるから、より簡単とも言える」

『そっかー。きゅおー』

「ここにある地下水脈は、地熱で温まっているから温める必要ないんだが……」

「もんだいがあるの?」

 フィオが首をかしげる。その横ではヒッポリアスも首をかしげていた。


「ポンプでくみ上げるのが大変なんだ」

「いどとおなじ?」

「そう、拠点の井戸と同じだが……水量が多いからな。ポンプを工夫しないとな」

 それに、ボアボアたちでも動かせるようにしたい。


「そうだなぁ」

 俺はポンプに二つの大きなペダルをつけた。

 そしてペダル同士を歯車でつないで、片方が下がったとき、片方が上がる構造にする。


「呼び水をいれてっと……。ボアボア、この部分を踏んでくれ」

「ぶい?」

「そう、片方を踏んだとき、片方が上がるから。交互に踏んでくれ」

「ぶうぃ」


 しばらくボアボアはペダルを前足で踏んでくれる。


「ペダルはかなり重くしてあるが、大丈夫か?」

「ぶい!」

 一踏みでかなりの水をくみ上げられるようにしてあるのだ。

 俺たち人間ならば全体重を掛けて、ペダルに交互に乗る事になるだろう。


 数回ボアボアがペダルを踏むと、どばあっと大量のお湯が吹き出た。


「おお、成功だ」

「ぶぶい!」

「アツイ!」「きゅうおー」

「ほぼ熱湯だな。水を差さないと危ないかな」

「さめるよ?」

「そうだなぁ。これだけの量を溜める間に冷めそうだな」

「がぁお」

 冷めたら温めると飛竜が言ってくれた。


「おお、飛竜ありがとう。飛竜は火を吹けるものな」

 温めるのは飛竜に任せれば良いかもしれない。


「さて、大切な排水機構は……」

「ぴいぴい」


 そこに臣下スライムがやってくる。


「ピイが呼んでくれたのか?」

『よんだ!』

「ありがとう」

『よごれたら、じょうかする!』

「助かるよ」


 スライムが浄化してくれるなら、もはや排水は雨水と同じだ。

 いや、雨水より綺麗だろう。そのまま流しても何の問題も無い。


『すらいむ、あつくもつめたくもできるよ』

「おお? そんなことが?」

 熱くできることは、今朝おしえてもらった。

 だが、冷たくできるとはしらなかった。


『できる』

「王のピイが出来ても不思議ではないけど、臣下たちもできるのか?」

『できる、ぴい~。おんどちょうせつもまかせて』

「至れり尽くせりだな」

『みんな、ちからがあまっている。ごはんいっぱい』

「なるほど。加熱や冷却には力が必要なのか」


 ピイの言う「ちから」とは恐らく魔力のことだ。

 臣下スライムたちは下水の処理をするさいに栄養を吸収し、魔力に変換しているようだ。

 豊富な栄養を摂取できるおかげで、魔力が有り余っているから、お風呂の温度調節ぐらいたやすいとのことだった。


「ぶぶい」「があぁお!」


 スライムたちにボアボアと飛竜がお礼を言う。


『ぴい~。すらいむたちもかいてき! だいじょうぶ!』


 そういって、ピイは、臣下スライムたちと一緒にフルフルしていた。


「アノ、アマッタオミズをハタケにマケルヨウにシタイ」

「それもいいな」

「ハルごろまでにデキタラいい」

「ぶぶい!」

「そうだな、撒いても飲んでも良いな」


 自動で水を撒ける機構を考えたら、楽になるかもしれない。

 とりあえず、今はあふれた分を外に流す機構だけ作っておく。

 丁度良いので、近くにあるボアボアたちのぬた打ち場に流れるようにしておいた。

 いい具合にドロドロになるので、喜ぶに違いない。


 そんな会話をしながら、俺は木材と石材を使ってお風呂場を覆う建物を作っていく。

 建物も難しくはない。

 基本的には、拠点の風呂場と同じだからだ。

 ボアボアや飛竜が入れるぐらい入り口が大きい以外はほぼ同じだ。


「よし、これでよしっと」

 あっというまに、ボアボアたちのお風呂場が完成したのだった。


☆☆☆

新作はじめました。

「ちっちゃい使徒とでっかい犬はのんびり異世界を旅します」

幼い男の子が、愛犬(でかい子犬)と一緒にのんびり異世界で過ごす話です。

よろしくお願いいたします。

https://kakuyomu.jp/works/16817330664134993467

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