223 はさ掛けしよう
俺たちがボアボアの家に到着すると、ボアボアとボエボエはひなたぼっこしていた。
ぬた打ったことで体についた泥を乾かしているのかもしれない。
ボアボアたちの近くには飛竜もひなたぼっこしていた。
「ボアボア、燕麦を干す台を並べさせてくれ」
「ぶい~」
「結構な量があるからな。木を切って、切り開くか」
ボアボアの家の周りは開拓が進みつつある。
木を切った場所は、今は将来畑にする予定のぬた打ち場と、大豆を植えた畑になっている。
あとは先ほど建てた農具倉庫だ。
「陸ザメたちの食事場所はこの辺りだから……」
どこで燕麦をどこで干すかイジェと話していると、
『ねむい』「……ぁぅ」『ねる』
子魔狼たちが睡魔に襲われたようだ。
お腹いっぱい食べたあと、走ったので、眠くなったのだろう。
「ぼあぼあのいえいこー」
「わふぅ」
フィオがクロとロロを抱っこして、シロがルルを口に咥えてボアボアの家に入っていった。
そして、フィオだけ戻ってくる。
「くろ、ろろ、るるは、べむべむたちとおひるね!」
「シロは?」
「しろも!」
シロは保護者として、子魔狼たちの面倒を見てくれるつもりなのだろう。
「そうか、それなら安心だな。」
今、ボアボアの家には陸ザメたちがお昼寝中だ。
子魔狼たちも陸ザメのお昼寝に混ぜてもらえば、寂しくなかろう。
「さて、俺たちは作業を進めよう。イジェ、ボアボア、干す場所はこの方向でいいかな?」
「イイよ」「ぶぅい~」
イジェとボアボアの許可が出ると、ジゼラが腰の剣をすらりと抜く。
「任せて! 木を切っていくよー」
「きゅうおーー」
ジゼラとヒッポリアスが張り切っている。
ヒッポリアスは一瞬で巨大化して、魔法の角を生やすと、早速、木の根っこに角を差し込んで引き抜き始めた。
「ぶぶうい」「があお」
ボアボアと飛竜も手伝うと言ってくれる。
「そうか、ありがとう。じゃあ、ジゼラが残した切り株の根を堀りおこして、埋めていってくれ」
「ぶい!」「があう」
干す場所を作るだけなら、切り株はあっていい。
だが、将来的には畑にしたいという思いもある。
畑にせず、広場として使うのだとしても、切り株はない方が便利なのだ。
「イジェ、フィオ。ジゼラとヒッポリアス、ボアボアと飛竜への指示は任せた」
「ワカッタ」
「まかせろ!」
イジェは司令塔。テイマーのフィオは通訳だ。
「俺は燕麦を干す台を作っていく」
俺は魔法の鞄を地面においた。
魔法の鞄には、たっぷりの燕麦が入っているのだ。
「じゃあ、私たちは燕麦を結んでいきましょう」
「わかった。任せて」「おう」
ヴィクトル、アーリャと冒険者たちとケリーは燕麦を根元で結んで麦束にしてくれるようだ。
俺は魔法の鞄から木材を取りだして、台の作成に取りかかる。
麦を干すための台は、はさと呼ばれる、簡単なものだ。
麦束を掛ける地面の平行の細い棒と、その棒を支える台があれば、充分にことが足りる。
「倒れなければ、棒が折れなければ、問題ないな」
使い終わったあと、倉庫にしまえるように折りたためるようにもしたい。
場所をとらないように、なるべく細い棒を組み合わせて作り上げたい。
「強度が問題か。ふむ」
俺は木材に鑑定スキルをかけていく。
そして素材特性を把握したら、あとは製作スキルではさを作っていく。
最初のはさが出来たとき、既にそれなりの広さの空き地が拡がっていた。
「ジゼラもヒッポリアスも仕事が早いな」
「鋼より木の方が斬りやすいからね」
「きゅうお~」
「そうか、その調子で頼む」
俺は完成した「はさ」をできたばかりの空き地に並べて、地面に固定する。
それをみて、冒険者たちがすぐに動く。
ヴィクトル、ケリーとフィオ、アーリャと冒険者たちは手分けして燕麦の束をつくり、できた束からはさに掛けていく。
「俺も負けられないな」
はさ掛けが終わるまでに、次のはさを完成させたいものだ。
俺はどんどんはさの製作を進めていった。
途中で、充分な範囲の伐採を終えたジゼラも束作りに従事する。
そして、ヒッポリアスはジゼラの残した切り株を、ボアボアと飛竜と一緒に順番に掘り起こす作業にはいった。
ちなみにボエボエは麦束を作る冒険者に甘えていた。
ボエボエは子供なので、働かなくて良いのだ。
俺はどんどんはさを作り、冒険者たちは麦束を作って掛けていく。
作業開始から、二時間ほど経ち全ての麦束のはさがけが終わった。
作業が終わったとき、ヒッポリアスとボアボア、飛竜がみえなかった。
イジェとフィオも視界の中にはいない。
「あれ、イジェたちは?」
「イジェたちなら、切り株を掘り起こして埋め終わったあと、ボアボアの家の裏に向かったよ」
ケリーが教えてくれる。
鑑定、製作スキルに集中していたので、気付かなかった。
「イジェは何をしているんだろうか?」
気になったので、俺もボアボアの家の裏に向かう。
「イジェ?」
「ア、テオサン。ミテミテ」
ボアボアの家の裏にはかなり大きな穴が開いていた。
☆☆☆
新作はじめました。
「ちっちゃい使徒とでっかい犬はのんびり異世界を旅します」
幼い男の子が、愛犬(でかい子犬)と一緒にのんびり異世界で過ごす話です。
よろしくお願いいたします。
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