220 お昼ご飯

 俺はピイを肩に乗せて、ヒッポリアスと一緒に倉庫の外に出る。

 ボアボアとボエボエは、まだ楽しそうにぬた打っていた。


「きゅうお~」

「ヒッポリアスもぬた打ちたいか?」

『きゅお! ごはん!』

「そうだな、お腹空いたものな」

 ヒッポリアスもボアボアたちと遊びたいようだ。

 だが、遊びたい欲を食欲が上回っているらしい。


「俺たちは拠点に戻るが、ボアボアとボエボエはどうする?」

「ぶぶぅい?」

「そう、ご飯を食べに戻るんだよ」

「ぶい!」

「お腹いっぱいか。飛竜が獲ってきた肉でも食べたのか?」

「ぶうい!」

「そうか。それならよかった。何か困ったことがあったらいうんだよ」

「ぶい!」「ぶっぶい」


 ボアボアはなにも困ってないと言うが、ボエボエが風呂に入りたいと言った。


「お風呂か。ボエボエなら一緒には入れるが……」

「ぶうい」

「なるほど、ボアボアと飛竜とも一緒に入りたいと」

「ぶい!」

「わかった、昼ご飯を食べた後、お風呂についても考えよう」

「ぶい~~」


 俺はボアボアとボエボエと別れて、キッチン兼食堂へと向かう。


『おふろー』

「ヒッポリアスも入りたいの?」

「きゅおー」

「ボアボア用のお風呂なら、ヒッポリアスも大きいままで入れるな」

『きゅうお~。みんなではいる!』


 ヒッポリアスとしては大きいまま入れることより皆で入れることが楽しみらしい。

 以前、ボアボアたちと皆で露天風呂に入ったことがあった。

 あれが楽しかったのだろう。


 キッチン兼食堂に入ると、

『あそぼ!』「ゎぅ」『だっこ』

 子魔狼たちがじゃれつきに来る。


「クロもロロもルルも、もうご飯食べたのか?」

『たべる!』「ぁぅ」『だっこ』

 どうやら、食べてはいないらしい。

 俺は子魔狼たち三頭を抱き上げる。


「もう準備全部終わっているのか」

 テーブルには続々とご飯が運ばれてきている最中だった。


「運ぶのを手伝おう」

「モウ、オワッタ! コレがサイゴ! テオさん! ゴハン、タベヨウ!」

「おお、準備おわっていたのか。手伝えなくてすまない」

「イジェがヤッテキタトキには、ホトンドオワッてた」


 どうやら、村に残った者たちが昼食を準備してくれていたらしい。

 俺はフィオの近くに座る。

 床に座っていたシロの隣に子魔狼たちとヒッポリアスを降ろした。

 フィオの隣にはケリーとジゼラ、アーリャも座っている。


「ケリー、クロ、ロロ、ルルのこと、ありがとうな」

「気にするな。白銀狼王種を観察できる良い機会だったよ」

「そうか、ロロのお腹の調子はどうだった?」

「何事もなく、元気そうだったよ」

『げんき』

 ロロはそういって、椅子に座る俺の足に前足をかけて尻尾を振った。


「そうか、それならよかった。ロロも、クロもルルも、調子が悪かったらすぐにいいなさい」

『ごはん!』「ゎぅ」『いう!』


 それから、俺は子魔狼やヒッポリアスのご飯を皿に入れて並べていった。

 フィオもシロのご飯をお皿に入れて、シロの前に置く。


 その準備が終わったあと、皆で昼ご飯を食べ始める。

「ところで、飛竜はどうした?」

「訓練が終わったあと、どこかに飛んでいったよ」

 ケリーの言葉を補足するように、

「さんぽ、いてた!」

 テイマーのフィオが教えてくれる。


「そうか、散歩か」

 犬も狼も毎日散歩が必須だ。飛竜もきっとそうなのだろう。


「ところで、シロ。身体強化の調子はどうだ?」

「わふぅ!」

 シロはご飯を食べるのを一度中断して顔をあげた。

 その表情には自信があふれていたし、尻尾も元気に揺れている。


「おお、訓練は順調なようだな」

「それがねー」

「どうした、ジゼラ。何かあったのか?」

「アーリャが魔力について説明したあと、飛竜が実際にやって見せたらすぐにできるようになったんだ」

「ほほう。シロ凄いな」

「わふわふぅ」

「アーリャ。シロがアーリャの説明がわかりやすかった、ありがとうだって」

「うん。お礼はもう何度も言ってもらった。でも、私は本当に基本的なことしか話していない。シロが凄い」

「俺はシロもアーリャも凄いと思うよ。いくらシロが優秀でも、説明がわかりにくかったら時間が掛かるだろうし―-」

「アーリャの説明が凄くても、シロじゃなかったら、もっと時間がかかった。そうテオさんは言いたいわけだね」

「――まあ、ジゼラの言うとおりだ」


 アーリャは少し照れながら言う。

「私の説明より、飛竜の見本が良かったんだと思う」

「もちろん飛竜の見本も良かったんだろうな」

 飛竜は子供を何頭も育て上げている。教えることに関してはベテランだ。


「ひりゅも、どのこよりはやい、いてた!」

「飛竜の子より早かったか。それは凄い」


 だからといって、飛竜の子よりシロが優れていると言うことではない。

 教育を始めたときの成長度合いが違うだろうからだ。

 小さい頃から少しずつ教えるのと、シロみたいに成長してから教えるのでは身につく速さは変わるものだ。


「シロ、よく頑張ったな」

「わふう」

 俺たちより先にご飯を食べ終わったシロは、きちんとお座りして、尻尾を元気に揺らした。

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