189 子魔狼たちの朝
扉を開けると同時に、子魔狼たちの鳴き声が聞こえて来た。
「きゅうんきゅうん」「ぴぃー」「ぁぅぁぅ、ピぃー」
「あさごはんたべいくよ!」
「わふ」
鳴いている子魔狼たちを、フィオとシロがなだめているようだ。
「どうした? クロ、ロロ、ルル」
「きゅふきゅふ」「ぴぃ」「きゃふ」
クロ、ロロ、ルルが一斉に駆けて来る。
そして足元にまとわりついた。
子魔狼たちは「きゃふきゃふ」鳴きながら、自分たちをおいてどこに行っていたんだと責めてくる。
「ベムベムをお父さんのところに連れて行ったり、ピイの臣下の様子を見たり、朝ご飯の準備を手伝ったり色々していたんだよ」
「わふぅぅ」「……」『だっこ』
子魔狼たちは納得したようだ。
どうやら、目が覚めて俺がいなかったから混乱したらしい。
「眠っているクロ、ロロ、ルルを置いて出かけたことはあるはずだが……」
「うーん。しらなかたから?」
「事前に出かけるって言ってなかったから混乱したのか?」
「かも?」
「そうか」
念のために、俺は床に座ってヒッポリアスを降ろすと、一頭ずつ抱き上げると子魔狼たちのことを調べていく。
特に異常はなさそうだ。
「体調は……別に悪くなさそうだな」
子魔狼たちは、ヒッポリアスと一緒に、床に座った俺のひざの上に乗ってくる。
『うんこ』「ぁぅ」『だっこ』
「クロはうんこか。トイレに行こうか」
「わふ」
俺はクロを抱き上げると、トイレまで運んで俺たちも使う便座の上に乗せる。
クロはふんばって、器用に用を足して見せた。
「クロ、上手だな」
『なでて』
クロはどや顔で尻尾を振って撫でることを要求してくる。
「えらいな。自分でトイレに行きたいと言えたのも偉い」
『なでて』
「えらいぞー」
クロを撫でていると、
『うんこ』『うんこ』
トイレの入り口まで来たロロとルルが、用を足したいと伝えてくる。
『うんこ』
いつもは勝手に用を足しているヒッポリアスまでそんなことを言う。
ヒッポリアスも甘えたい気分なのかもしれない。
「そうか、順番だぞ」
俺はクロを便座から降ろして、ロロを便座に乗せた。
「はい、ロロ。好きなだけ用を足しなさい」
ロロは踏ん張っているが、少し時間がかかりそうだ。
本当は大して便意はなかったが、褒められたクロを見て、用を足したくなっただけなのかもしれない。
ロロのことをゆっくり待っていると、
『ルルも』
ルルが俺の足に前足をかける。
「うん、少し待ってな。いまロロがトイレしている最中だからね」
『うんこでる』
「我慢できないのか?」
『だす』
出るから出すに変わった。どうやら猶予がないらしい。
ルルは踏ん張る体勢に入っている。
いつ出してもおかしくない。
「ちょ、ちょっとまて」
踏ん張る体勢に入ったルルを抱えて便座に乗せる。
子魔狼たちはまだ小さいとはいえ、同時に乗せるには便座は狭い。
「ロロとルル、狭いだろうが、我慢してくれ」
「きゃふ」『でる』
ルルの方が先に用を足しそうな勢いだ。
ロロと違って、ルルは本当に便意を感じていたらしい。
『うんこ。ひっぽりあすもうんこ』
「ヒッポリアス、もう少しだけ待ってくれないか?」
『まつ』
「すまないな」
「きゅお」
堂々とヒッポリアスは立っている。
自分は少しぐらい待てるとアピールしているのだろう。
そんなヒッポリアスに、すっきりしたクロがじゃれついていた。
『なんとかする』
「どうした? ピイ」
俺の頭の上に乗っているピイの決意のこもった様子で言う。
『もらしても、ぴいがなんとかする』
「そうか、心強いよ」
「ぴぃ~」
そうこうしている間にルルは用を足し終わったようだ。
「ルル、トイレでできてえらいぞー」
そう言いながら、ルルを便座からおろし、替わりにヒッポリアスを乗せる。
「ヒッポリアス待たせたな」
「きゅおぅ」
ヒッポリアスが踏ん張り始めるのと同時に、床に降ろしたばかりのルルが
『なでて』
「少し待っ――」
『なでてなでて』
ルルが撫でて抱っこしろと強く要求してくる。
クロに比べて褒め方が甘いと怒っているのだ。
「ルル、えらいぞー」
「ぁぅ」
俺はルルを撫でまくる。
「トイレしたいと言えたのもえらいし、ちゃんとトイレでできたのもえらいぞ」
「ぁぅ」
『くろもした』
「そうだな。クロもしてたな。えらいぞー」
クロとルルを褒めて撫でまくる。
『でた!』
「ヒッポリアスもえらいぞー」
ヒッポリアスも用を済ませたらしい。
『だっこ』
「ほいほい。ヒッポリアスはいつもえらいなー」
ヒッポリアスを褒めながら撫でまくる。
クロ、ルル、ヒッポリアスを交互に褒めて撫でまくった。
ひとしきり撫でると、満足したのか、クロとルルはフィオとシロの方へと歩いていく。
『うんこした』『した』
フィオとシロにも褒められに行ったらしい。
一方、そのころロロはまだ踏ん張っていた。
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