156 お昼ご飯

 ピイのマッサージは、筋肉の凝りをほぐすだけではない。

 魔力の滞りのようなものまでほぐしてくれるのだ。


「鑑定すると、ものすごく頭が凝るからなぁ」

「ぴっぴぃ」


 何かを作るときは、鑑定スキルで素材の特性を把握し、製作スキルで実際に作る。

 その際、素材の鑑定結果は膨大な量の情報となって頭の中入ってくる、

 それを脳内で整理して分析して、製作に生かすのだ。

 鑑定スキルからの製作スキルの流れで、最も疲れるのが鑑定スキルである。

 意識的にやっているわけではないが、脳内整理にも魔力を使っているのだろうと思う。


「頭の凝りをピイがましにしてくれているから、鑑定スキルの疲れが溜まりにくいんだよな」

「ぴい」


 ピイは大人しくて目立ちにくいが、大活躍してくれているのだ。


 俺がピイにお礼を言って、撫でていると、

「きゃふ」

 足元にクロがやって来た。


「みんな起きたのか?」

『あそぼ』「ぁぅ」『だっこ』


 クロ、ロロ、ルルが俺の足元にまとわりついている。

 先ほどまで、シロに見守られながら中庭で眠っていた子魔狼たちだが、起きたらしい。

 シロは、そんな子魔狼たちを、後ろから優しく見守っている。


「よーしよしよし」

 作業も終わったので、俺は子魔狼たちを撫でまくった。


「わーふわふわふ」

 俺と一緒になって、フィオも子魔狼たちを撫でまくる。


「シロもおいで」

「がぅ」

 子守を頑張ってくれた、シロのことも撫でまくる。


「シロも本当にありがとうな」

「がぁう」


 子魔狼たちのお世話をしてくれているから、シロはしっかり者の成狼に見える。

 だが、まだまだ子狼なのだ。

 群れが健在なら、兄弟姉妹と遊びまわっている頃だろう。


「シロは本当に偉いなぁ」

「がぁふぅ」


 シロは仰向けになって、お腹を見せる。

 そのお腹をワシワシと撫でていると、子魔狼たちがシロにじゃれつきにいく。

 シロは嫌がることなく、じゃれつかれるままにされている。


 俺とフィオとシロと子魔狼たちがのんびりと遊んでいると、畑からみんなが帰って来た。


「きゅお!」

「ヒッポリアス、お疲れさま」


 大きな姿で戻って来たヒッポリアスは、仰向けでお腹を見せているシロをみて、すぐに小さくなった。

 そして、かけて来るとシロの横にお腹を見せて寝っ転がる。


『なでて』

「ヒッポリアスも頑張ったもんな」

「きゅおきゅうお」

「偉いぞー」


 ヒッポリアスは嬉しそうに尻尾を揺らしている。

 そんなヒッポリアスは泥だらけだ。

 畑仕事を手伝っていたのだから当然である。


「本当に頑張ったんだな」

『がんばった』


 ワシワシと撫でていると、ヴィクトルが近くにやってくる。


「もう廊下が完成しているんですね」

「予定より早く完成できたよ」

「各戸の屋根にも金属を?」

「雨漏り対策と、屋根の積雪対策に、ついでにな」

「なるほど。助かります」

「木製でも、雨漏りしにくいように、設計はしているが、どうしてもな」


 しっかりと隙間なく作っていたが、木は水を吸い込む。

 長雨になれば、滲んで雨漏りするのは避けがたい。


「見事なもんだなぁ」

「さすがテオさん、助かるよ」


 冒険者たちもお礼を言ってくれる。


 そんななか、戻って来たケリーは、シロとヒッポリアスのお腹を撫でる。


「シロ、少し太ったか?」

「わふ?」

「いいことだぞ。シロは痩せすぎだったからな」

『なになに』「ぁぅぁぅ」『だっこ』


 しゃがんだケリーの靴ひもをクロが噛んでいる。

 どこが、普通の靴ひもと違うのかわからないが、クロの好奇心を刺激したらしい。

 ロロもルルもケリーの足にじゃれついている。

 どうやら、子魔狼たちは、ケリーのことが好きらしい。


「相変わらず可愛いなぁ」

「ぴー」


 ケリーに撫でられて、子魔狼たちは甘えて鼻をならしていた。


 そこにイジェと、ボエボエを抱っこしたジゼラが戻ってくる。


「さすがテオさん、もう終わったんだ」

「ぶぶい」

「ああ、ピイのおかげでね」

「ピイの?」

「ピイのマッサージのおかげで疲れにくくてさ」

「へー。凄いねぇ。ピイ」

「ぴっぴぃ」


 ジゼラは俺の肩に乗るピイを撫でる。

 俺はイジェに尋ねる。


「畑の調子はどうだ?」

「ジュンチョウ。タネウエはオワッタ。ハタケもヒロクデキタ」

「おお、凄いな」

「ヒッポリアスもガンバッテクレタ」

「ヒッポリアス偉いぞー」

「きゅおきゅおー」


 その後、みんなで昼ご飯の準備をして、一緒に食べる。

 食事の途中、ヴィクトルが言う。


「テオさん。冬の準備は後何が必要だと思いますか?」

「そうだなぁ。食料や薪の備蓄以外でだろう?」

「そうですね。それ以外でお願いします」


 食料や薪の備蓄は言うまでもないことだ。


「建物に関することなら、暖房かな? 暖炉が欲しいよな」

「薪があっても、燃やす場所がなければ使えませんものね」

「暖炉は共用部に一つ作ればいいかな?」

「各部屋につけるのでは、効率が悪いですからね」

「他には防寒具も作りたいな」

「防寒具ですか? それは重要ですね」


 ヴィクトルは深く頷いた。

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