155 屋根を葺こう

 新しく作った扉を開閉していたフィオが言う。


「おわり?」

「あとは、窓ガラスと屋根だけかな」

「そかー」

「そっちも、一気に仕上げてしまうか」

「わっふう」


 お昼ご飯まではまだ時間がある。

 どうせなら、お昼ご飯までに終わらせたいところだ。


 俺は魔法の鞄から砂を取り出す。

 砂に含まれるケイ素を使ってガラスを製作するためだ。

 拠点の建物を建てるときにも、砂から窓ガラスを使った。

 それと同じである。


 窓ガラスの素材である砂と、窓枠の素材である木材にに慎重に鑑定スキルをかけていく。

 素材の把握がおわったら、製作スキルを一気に発動させて、窓を作り出す。

 完成した窓を壁に取り付けて、完成だ。


「すごい!」

「ありがとう。廊下に窓が沢山あるから、どんどんいくよ」


 日の光が入るように、多めに窓を設置してあるのだ。

 窓を設置する予定の場所は、あらかじめ開けて壁を作ってある。

 窓を製作した後、嵌めこむだけで完成だ。


「わふわふ」


 興味があるらしく、窓を作っている間、フィオが楽しそうに尻尾を振りながら後ろをついて来る。

 俺はフィオに見守られながら、鑑定スキルをかけてから、製作スキルで窓をどんどん作ってはめ込んでいった。

 そして、窓を全てはめ込み終わる。


「わっふう! おわた?」

「窓はね。後は屋根かな」

「やねかー」


 屋根には、さびにくい薄い金属の板を張り付けていけばいいだろう。

 金属の形状を工夫すれば、木で造った屋根に釘を使わずに、固定できるはずだ。


「梯子を作って……」


 俺は木を使って、屋根に上るための梯子を作る。


「はしご!」

「フィオ。梯子は勝手に使ったらだめだからね」

「どして?」

「危ないからね」

「わかた!」


 俺は梯子を使って屋根の上に登る。


 そして、魔法の鞄から金属を取り出していく。

 さびにくい金属のインゴットは、洗面台を作ったときに多めに作ってあるのだ。

 それを使えばいいだろう。


 金属インゴットに鑑定スキルをかけてから、製作スキルで薄い板にしていく。

 板にするとき、下側に木の屋根に固定するための返しのついた突起がある形状で製作していくのだ。

 そして、製作する場所も肝心だ。

 製作を終えてから固定するのではなく、固定すべき場所に製作する。

 それがコツだ。


 木の屋根に、金属の板を密着させ、返しのついた突起を食い込ませる形で製作していった。

 そうすれば、金属の板の製作完了と同時に固定も終わるという寸法だ。

 製作する前に、木の屋根にも鑑定スキルをかけるのも大切だ。


「ふむ。……そうだな」


 廊下の上を金属で全て覆った後、俺は少し考えた。

 これまで作った建物の屋根は木で造ってある。

 今は雨の少ない季節だから何の問題も起きていない。

 だが、雨がいつ降るかわからない。

 冬になれば、雪も降る。


「折角だし、この機会にやっておくか」


 どうせなら、この際、すべての建物の屋根も金属で覆うべきではないだろうか。

 その方が、雨漏り防止になるし、雪も落ちやすくなるだろう。


 俺は廊下を覆うのと全く同じ手法で各建物の屋根を金属で覆っていった。

 すべての建物の屋根を金属で覆った後、俺ははしごを通って、下に降りる。


「わふう! すごい!」

「ありがとう」

「おわた?」

「うん。終わったよ!」

「わふう!」


 嬉しそうにフィオが尻尾を振っている。


「思っていたより、早く終わったな」


 元々今日の午後も廊下建築を行う予定だったのだ。

 廊下建築だけでなく、各戸に屋根を作るところまで終わらせてしまった。

 そのうえ、まだお昼ご飯まで時間がある。


「金属のインゴットを用意していたし、窓ガラス用の砂もあらかじめ用意があったとはいえ……」

「こまた?」

「困ってないよ。うまくいきすぎて戸惑っているんだ」

「そかー。うまくいて、わるいことない」

「そうだな。うまくいくに越したことないよな」

「うん!」


 もしかしたら、俺の鑑定スキルと製作スキルの腕前が上がっているのかもしれない。

 よく考えたら、建物を製作スキルで作ると言うことは、これまであまりやっていなかった。

 勇者パーティーでは、ジゼラたちの武器を製作したり修理したり、ポーションを作ったりというのがメインの仕事だった。

 どうしても同じような作業になる。

 新大陸に来てから、製作スキルで新しい物を沢山作っている。

 それで、腕前が上がったのかもしれない。


「ぴいぃ」

「ピイもありがとう」


 俺の頭の上にのったピイが鳴く。

 俺が作業している間、ピイは肩と頭の上を行き来しながら、ずっとマッサージをしてくれていた。


「作業効率が上がったのは、ピイのおかげも大きいかもな」

「ぴ?」 

「マッサージしてくれるから、疲労による作業効率の低下を防げている気がするよ」

「ぴぃ~」


 ピイは嬉しそうにフルフルしていた。

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