153 屋根と壁を作ろう

 俺は製作スキルを使って、下から順に壁を作り上げていく。

 途中に窓のためのスペースを用意するのも忘れてはいけない。

 あけた場所には後でガラスを使った開閉できる窓を取り付ければいいだろう。

 雨戸もそのときに取り付ける予定だ。


「…………」


 俺は無言で壁を製作していく。

 壁が完成したら、次は屋根である。

 壁と屋根は休まずに連続で作っていく。


 屋根を作る際に大事なのは傾斜である。

 この辺りは特に雪が沢山降ると聞く。

 傾斜を付けなければ、屋根の上に雪が積もり続けて重さでつぶれる可能性がある。

 傾斜の方向も大切だ。

 中庭側に落とせば、恐らく許容量を簡単に超えてしまうだろう。


 中庭にも雪が積もるのだ。

 そこに屋根からも雪が落ちるとなると、簡単に屋根の高さまで積みあがることになる。

 そうなれば、もう屋根から雪は落ちない。

 外に落としても、屋根の高さまで積みあがるのは変わらない。

 だが、雪を移動させることを考えると、環状に囲まれた中庭より外の方がずっと楽なのだ。


「よし、ひとまずはこれでよしっと」


 廊下の五分の一の範囲だけだが、壁と屋根が一応できた。


「できた?」

「ひとまずはね。でも窓を付けないといけないし、屋根も金属を使いたいかな」


 木だけでは、雨漏りを防ぐのが難しい。

 さびにくい金属を薄い板状に加工して、屋根を覆った方がいいだろう。

 そのほうが、雪も落ちやすいはずだ。


「そっかー」

「フィオもシロも、子供たちのお世話してくれてありがとうな」

「えへへー」「わふう」


 フィオとシロの頭を撫でたあと、子魔狼たちの頭も撫でる。

 子魔狼たちはおやつを食べて、泥だらけになって遊んだからか、眠そうだ。


「……」「ぴぃ」「ゎぅ」


 クロはもう半分寝ていた。

 子魔狼たちは赤ちゃんなので、沢山食べて沢山寝るのが仕事のようなものだ。

 子魔狼たちが寝ているのを見ると、ほっとする。

 俺はかわいい子魔狼たちを撫でて、気合を入れなおすと、残りの作業に取り掛かった。


 作る物は同じだ。だからすることも同じである。

 材料を鑑定してから、製作スキルで壁と屋根を作っていく。

 それを三回繰り返し、全体の五分の四の範囲が完成する。


「ボアボアが通れるようにしないとな」


 屋根を高くして、大きな扉を取り付けるのだ。

 そうすれば、飛べないボアボアも中庭に入れるだろう。

 中庭に物を運び込んだり、中庭から物を運び出したりするときにも便利だ。


「できた?」

「いや、まだ――」


 フィオに尋ねられて、ふと思った。


「……それもありかもな」

「ありなの?」

「うん。一か所、壁と屋根のない場所があってもいいかなって」


 大きな上物を作らないと、廊下は環状にはならない。

 廊下はコの字型になる。

 雨や雪が降っているとき、そこを通るのは面倒だろう。


「だが、短いし走ればなんとかなりそうだしな……」


 それに遠回りだが、ぐるっと回れば、廊下を通って向こう側にも行ける。


「壁をふさいで、扉をつけて終わりにする方がいいかもな」


 木材の節約にもなる。

 もし必要と言うことになったら、改めてつければいい。


「じゃあ、できた?」

「いや、まだだよ。フィオ、シロ、もう少し待ってな」

「わかた」「わふ」


 フィオとシロは中庭の乾いた土の上に座っている。

 その近くには子魔狼たちが固まって眠っていた。

 お腹を見せて寝転んでいるクロと、その横にうつ伏せで寝ているルル。

 そのルルの背中に頭を乗せているロロと言った感じで、とても和む。


 子魔狼たちをみて、元気になったので俺は作業を再開した。


「環状にしないことにしたんだから、ふさがないとな」


 今はコの字型の終端が、開いた状態だ。

 だから、木でふさぐことにする。扉も取り付けておこう。

 扉は少し大きめにした方が便利かもしれない。

 すでに敷いてある石の床はそのままでいいだろう。


「床を木じゃなくて、石にしておいてよかったな」


 俺は材木を鑑定し、製作スキルで壁を作って、廊下をふさぐ。

 扉もきちんと取り付けておいた。


「これでよしっと」

「おわた?」

「まだだよ、屋根の上に金属を張り付けたり、窓に板ガラスを嵌めこみたいからね」

「そかー」


 フィオは作ったばかりの壁に取り付けた扉を開閉する。

 各建物の間の廊下には中庭側と外側に、それぞれ扉を設置してある。

 どこからでも入れるし、どこからでも出れるようにだ。


「ふむー。いちばんおおきいのはここ?」

「うん。一番大きい扉はそこだね」

「ここかー」


 フィオは出たり入ったりする。

 そしてそのままヒッポリアスの家まで走ったりしていた。

 廊下の使い勝手を調べてくれているのだろう。


 一方、シロは寝ている子魔狼たちの隣に横たわったままだ。

 眠っているわけではない。たまに子魔狼たちの匂いを嗅いだり舐めたりしている。

 賢いシロは、しっかり子守をしてくれているのだった。

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