140 廊下建築準備

 俺は廊下に必要な機能をまず考える。

 防風、防雪、防雨は必須だ。そのために作ると言っていい。

 それに廊下内は、宿舎の外。

 基本的に靴で歩くので掃除のしやすさと耐久性もあったほうがいいだろう。


「床を石にして……壁と屋根は木にするか」


 石も木も、貯蔵分があるので、新たに集めなくても大丈夫だろう。


「中庭にボアボアが入れるようにした方がいいかな」


 今、俺が立っている拠点の中心はそれなりに広い空き地になっている。

 空き地に入り口を向ける形で各建物は立っているのだ。

 その空き地で、酒を呑んでわいわい騒いだりしたこともあった。

 その他、洗濯物を干したり、薪を積み上げたり色々している。

 簡単な作業もできるのだ。


「……うーん」


 だが、ボアボアが入れるようにするとなると、廊下を環状につなげることができなくなる。

 無理につなげるなら、地下で廊下をつなげるか、空中に橋を架けるしかない。

 それは可能だが、材料が余計にかかるし、移動も不便だ。


「いや、大きく開くことのできる場所を一か所作ることができれば……」


 一か所だけ廊下の屋根を高くして両側に大きく開く引き戸をつければ、ボアボアも中庭に入れるだろう。


「それはそれとして、みんなでワイワイ騒ぐ場所を、中庭以外にも作ったほうがいいな」


 暖かい季節は、昨日みたいにボアボアの家の前で騒ぐのが一番いいかもしれない。

 だが、冬は中々大変だ。

 冬の間は毛皮が合って、寒さに強いボアボアにこちらに来てもらったほうがよさそうだ。


「廊下の接続する形で、薪を入れる倉庫も作るか」


 冬になれば、外まで薪を取りに行くのは大変だ。

 廊下を通っていける範囲に薪小屋があると楽だろう。


「小屋は畑の近くにも欲しいな」


 農具などを入れる小屋もきちんと用意するべきだろう。

 むしろ廊下より小屋を用意するべきだったかもしれない。


「まあ、廊下を作ってから考えよう」


 俺がボソボソ独り言をつぶやきながら、廊下の設計案を固めていく。

 その間、楽しそうに子魔狼たちが俺の足元にじゃれついていた。

 そして、ピイは俺の肩にのって、小刻みに振動していた。


「クロ、ロロ、ルル。遊んであげられなくてすまないな」

『あそぼあそぼ!』「ぁぅ」『おわった?』


 クロは遊んであげられないと言ったのにお構いなしである。

 ロロとルルはそんなクロに甘噛みして遊んでいる。


「クロ、ロロ、ルル。こちきて」

「がぅ」


 フィオとシロが子魔狼たちを抱っこして、咥えて少し離れてくれた。

 邪魔しないようにしてくれているのだ。


「ありがとう、フィオ。シロ」

「クロ、ロロ、ルル。あそぶ」

「がぅ」


 フィオとシロは、子魔狼たちをうまくあやしてくれている。

 その間に俺は作業を進める。


「床は難しいところはないな。水はけについて少し考えればいいか」


 石を地面に敷き詰めて、完全にふさいでしまうと、中庭に振った雨が溜まってしまう。

 軽い雨ならば、石に隙間を開けて水が流れるようにすれば足りるはずだ。

 もし、そうするならば、つまらないよう、掃除をしなければならない。

 それは少し面倒だ。だが、そのぐらいなら何とかなる。


「豪雨になったらまずいな。隙間程度ではどうにもならないだろうし」


 中庭に水があふれてることになる。


「非常用の排水溝も作っておくか」


 水はけについて考えるなら、傾斜を考えなければなるまい。

 基本的に内から外側に傾いていないと、外に水が流れない。


 俺は鑑定スキルを使って、正確に地面の傾斜を把握する。


「ふむふむ。ここが一番低いか」


 低いところに大きめの排水溝を用意すればいいだろう。

 小さくなったヒッポリアスや子魔狼たちなら入れるぐらいの大きさになりそうだ。


「折角だし、隙間じゃなくて、全部太めの排水溝にするか」


 太い方が掃除も楽だ。

 ネズミが入るかもしれないが、それはシロが何とかしてくれるだろう。

 狼はネズミの天敵なのだ。


「床はこれでいいとして、壁と屋根は……。他の建物と同じでいいか」


 同じならば、改めて考えなくてもいい。

 材料の鑑定を念入りにすれば、製作スキルですぐに完成させられるだろう。


「よし。考えることは大体おわった。作業に入ろう」


 俺は魔法の鞄マジックバックから石を取り出す。

 これまで作業の合間に集めた石である。

 石の採集にはヒッポリアスが大活躍してくれた。

 金属の採掘の際に出た副産物としての石も取り合えず鞄に入れてある。

 だから量も充分なのだ。


 魔法の鞄から取り出した石を積み上げて、鑑定スキルをかけていく。

 地面に敷くだけなので、精度はさほど重要ではない。

 大まかに素材の特性を把握すると、製作スキルを使っていく。

 やることは様々な大きさの石を板状にするだけだ。

 難しくはない。

 どんどん、石を板状にして、廊下を作る予定の場所に敷いていく。


『いしいし!』「ぁぅぁぅ」『つめたい』


 なぜか子魔狼たちは石の床が気に入ったようだ。

 大喜びの子魔狼たちは、敷いた石の上にごろごろ転がって遊んでいる。

 石が好きというより、新しいものが好きなのだろう。

 もしかしたら、ひんやりした感じが気に入ったのかもしれない。


「気に入ってくれてよかったよ」


 俺は石を敷きながら拠点を一周したのだった。

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