135 ボアボアの家を建てよう

 拠点へと歩いて行く途中、俺は尋ねる。


「イジェ。畑の種植え中か?」

「チョウド、オワッタ」

「おお、手際がいいな」

「ミンナ、テツダッテクレタから」


 そういって、イジェは嬉しそうに微笑む。


「俺たちもひさしぶりに畑仕事が出来て懐かしいよ」

「ああ。斬った張ったばかりやっていると、土いじりも楽しくなるな」


 冒険者たちも、畑仕事を楽しんでいたようだ。

 冒険者たちには、俺を含めて農村出身者が多いのだ。


 それから、ボアボア親子と飛竜も連れて拠点に戻る。

 仲間たちに紹介すると、ボアボアたちが一緒に住むことも皆が歓迎してくれた。


 焼いた肉を食べる昼ご飯を終えると、俺はボアボアの家の建築することにした。

 実際の作業に入る前に皆に家を建てる場所を相談する。


「ぬた場が近くに欲しいとなりますと、森の近くがいいかもしれませんね」

「ヴィクトルもそうおもうか」

「ええ」

「イジェ、畑はどちらに拡張する予定なんだ?」

「エット……。ゲンチでセツメイする?」

「頼む」


 そして、俺はボアボア親子と飛竜と一緒に拠点の外に向かう。

 イジェ、フィオ、ケリーとジゼラ、ヴィクトルも付いてくる。

 ヒッポリアスやピイ、シロと子魔狼たちも一緒である。

 加えて、手空きの冒険者たちも付いてきた。


 畑に到着すると、イジェが説明してくれる。


「コッチにハタケはヒロゲタイ」

「こちらは?」

「ソッチは、イシがオオくて、ジャリバッカリ。ツチのエイヨウがスクナイ」


 イジェがそういったのは、いまある畑に隣接した森だった。


「そうなのか。それなら、この辺りに家を作るか。ボアボアいいか?」

「ぶぼお」


 ボアボアもどうやら気に入ってくれたようだ。


「ヒッポリアス。木を伐採するのを手伝ってくれ」

『まかせて!』


 ヒッポリアスはするするっと大きくなると、木の伐採を開始してくれる。


「きゅううーおおお」


 気合いの咆哮を上げながら、魔法を駆使して、ヒッポリアスは根ごと木を引っこ抜いてくれる。


「相変わらず、ヒッポリアスは凄いなぁ」

「がう?」

「飛竜も手伝ってくれるのか」

「ががう」

「じゃあ、頼む」


 飛竜もヒッポリアスのまねをして、木を引っこ抜いていく。

 大きくて強い竜二頭のおかげで、あっというまに広い空き地が出来たのだった。


「ありがとう、ヒッポリアス、飛竜」

「きゅおきゅお!」「があう」

「これで家を建てるための資材と土地の準備ができたよ」

『ほかに、てつだうことある?』

「大丈夫だよ。あとはまかせてくれ」

「きゅうお!」

「ヒッポリアス、ありがとうな。近くで遊んでいてくれ」

「きゅうお!」



 俺は皆に見守られながら、建築作業に入る。

 ヒッポリアスと飛竜が集めてくれた木材を並べ、魔法の鞄から追加の材料を出していく。

 追加の材料は石材と金属インゴットである。


 ボアボアの家の構造は、ヒッポリアスの家と基本的に同じである。

 ただし、飛竜も一緒に寝泊まりできるように、ヒッポリアスの家よりも二回りほど大きくする予定だ。


 まず、俺が家を建築するときの基本手順通り、鑑定スキルを土地にかける。

 拠点の土地よりも、土中に含まれる石が少なかった。

 そして、地中の深い所には水脈があった。

 しかも冷たい水ではなく温泉の水脈だ

 今度、温泉を掘ってもいいかもしれない。


 土地に鑑定スキルをかけ終わると、次は木材と石材に鑑定スキルをかけていく。

 かなり集中を要する作業だ。

 木材と石材の性質把握は家のクオリティに大きな影響を与えるのである。


 鑑定スキルで手に入れた情報は膨大だ。

 時間が経てば経つほど、その大量の情報は忘れていってしまう。


 だから鑑定スキルをかけ終わると、時間をおかずに一気に製作スキルで建築に入る。

 集中し、魔力を消費しつつ、出来るだけ早く建築していく。


 ボアボアの家の構造自体は単純だ。

 ヒッポリアスの家と同じく、部屋は一つだけである。

 だが、ヒッポリアスの家よりも二周り大きいため天井をささえる構造が必要になる。

 鉄のインゴットを使って、天井に梁を一本通しておいた。


 床はヒッポリアスの家と同じく木で造る。

 そして、ボアボアの重い体重で床が抜けないように、木の下には石を敷き詰めた。

 それもヒッポリアスの家と同じである。


 ボアボアの家の扉も、構造はヒッポリアスの家と同じ。

 ただ、一回り大きくしてある。

 そして、ボアボアの子供が出入りできるよう、別の小さな扉もつけておいた。


「これでよしっと。ボアボア。どうかな?」

「ぶぶい!」

「があ!」


 ボアボアの子供と飛竜が喜んでくれている。

 二頭ともとても気に入ってくれたようだ。


「相変わらず、テオさんの製作スキルはすごいね」

「すごい!」

「わふわふ」

『あそぼ!』「わふ」『すごい』


 ジゼラ、フィオにシロも褒めてくれる。

 そして、クロとロロは終わったなら遊べと言ってくる。

 だが、ルルは褒めてくれた。


「ぶぶぶい?」

「があがあ?」


 ボアボアの子供と飛竜が中に入っていいか興奮気味に尋ねてくる。


「もちろん。入っていいよ」

「ぶいぶい!」

「ががあ!」


 ボアボアの子供と飛竜、それにフィオ、シロ、子魔狼たちがボアボアの家に入っていった。

 遊べと言っていたクロもロロもフィオたちと一緒にはしゃぎながら家の中に入っていく。

 とにかく楽しそうなことが好きなのだろう。


「ところで、ボアボアはどうしたんだ?」


 俺が疑問に思って周囲を見回すと、少し離れた場所にボアボアがいた。

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