132 風呂上がりの新発見

 充分に身体を温めてから、俺たちは温泉から上がる。

 自分の身体を拭いて、ヒッポリアスの身体を拭いた。

 その間に、飛竜はブルブルと身体を震わせて、水を切っている。


 そして、ピイは濡れたボアボアたちの水を取ってあげていた。


 ヒッポリアスを拭いた後、ボアボア親子の毛をチェックする。

 すでにほとんど乾いていた。


「ピイは凄いな」

「ぶぼい」「ぶい」


 ボアボア親子も感謝の意を表明している。


「ピイは本当に器用だな」

「ぴい!」


 ピイは嬉しそうに俺の胸元に跳びこんできてプルプルとする。

 ピイは浴槽の水を高速で吸い込んで浄化できるのだ。

 そんなピイならば、身体の大きなボアボアの毛皮から水をとるのも簡単なのだろう。


 俺が着替え終わったころ、

「ぼあぼあ!」


 フィオとシロが仕切りの向こうから顔を出す。


「ぶぼ?」

「かわいい」

「ぶーい」


 フィオはボアボア親子を撫でまくる。

 そして、シロはそんなフィオの隣でボアボア親子の匂いを嗅いでいた。


 当然だが、フィオはきちんと服を着ている。

 だが、まだ髪が少し湿っている気がした。


 だから、俺はピイを抱っこして、フィオの頭の上に乗せる。


「ぴい? どしたの?」

『かみかわかしてあげる!』

「ぴい、ありがと!」


 フィオは優秀なテイマーなので、ピイの言いたいことがわかるのだ。

 従魔ではないので言葉として理解できるわけではないが、意志として理解できる。

 それは、ちょうど俺とボアボアたちや飛竜と同じだ。


 そんなことをしていると、仕切りの向こうからケリーとジゼラもやってくる。


「フィオ、ちゃんと髪を乾かさないとだめじゃないか」


 ケリーとジゼラは子魔狼たちを抱っこしていた。

 子魔狼たちを拭いてあげているうちに、フィオがこっちに走ってきてしまったのだろう。


「ごめん!」

「怒っているわけじゃない。夏はともかく冬になったら風邪をひくぞ」

「わかた!」

「テオ、クロを持っていてくれ」

「ああ、わかった」

「えっと、綺麗なタオルはっと……」


 ケリーはフィオの頭を拭いてあげるらしい。

 子魔狼たちを拭いたタオルではなく、新しいタオルでだ。


 そして、俺はクロを抱きとめる。

 ケリーから手渡されたクロはフワフワしていた。

 しっかり、毛が乾いている。


「クロはいい匂いがするな。ケリーありがとう」

「気にするな。私もクロの世話は楽しい」

「きゅーんきゅーん」


 いつも甘えん坊のクロだが、今日は特に甘えたい気分のようだ。

 一生懸命、俺の顔を舐めて、甘えた声を出している。


「ぁぅぁぅ」『だっこ』

 ジゼラに抱っこされた、ロロとルルも俺に抱っこしてくれとアピールしていた。


「ロロもルルもこっちに来なさい」

「やっぱり、テオさんがいいのかー。お姉ちゃん悲しいよー」


 そんなことをいいながら、楽しそうにジゼラはロロとルルを俺に預けて来る。

 三頭を同時に抱っこするのは大変なので、俺は地面に腰おろした。


 そしてひざの上にクロ、ロロ、ルルを乗せて、撫でまくる。

 一晩、会わなかったからか、クロたちはいつも以上に甘えてきた。


「きゅぅぉー」


 ヒッポリアスも触発されたのか、ひざの上に乗ってきて、甘え始めた。

 俺は子魔狼三頭とヒッポリアスを撫でまくる。


「クロ、ロロ、ルル、昨日は元気にしてたか?」

『してた!』「ぁぅ」『るるいいこ』

「そうかそうか。ヒッポリアスもいい子にしてたよな」

『ひっぽりすは、いいこ!』


 俺がヒッポリアスと子魔狼と戯れていると、


「あったあった。鞄の奥に入っていたぞ」


 ケリーがやっと綺麗なタオルを見つけたようだ。

 それでフィオの頭を拭きにいく。


「おや? 乾いているな?」

「ぴいがふいてくれた!」

「ぴい!」

「ピイは何でもできるな……ん?」

「ぴい?」


 フィオの髪の毛を調べていたケリーが首をかしげる。


「フィオの髪の艶が増している。まるで貴族の令嬢の髪のようだ」

「きぞく?」


 フィオが首をかしげる。


「説明が難しいが、偉い人のことだよ」

「そかー」

「フィオの髪の毛が、風呂に入る前より凄くきれいになっているね」

「えへへ」

「これは、ピイが乾かした効果なのか? ピイ、なにか特別なことをしたのかい?」

『してない!』

「してないらしいぞ」

「ふーむ。謎だな。あとでしっかり調べてたい。ピイ協力してくれないかい?」

『いいよ!』

「いいらしいぞ」

「ありがとう。ピイ」


 ピイに乾かしてもらった髪の毛は状態がよくなるかもしれないらしい。


「そういえば、シロとかもモフモフになった気がするし」


 ダニ取りなどを兼ねてピイはシロやクロ、ロロ、ルルの毛のケアをしてくれていた。

 そして、出会った時より、シロたちの毛は段違いにモフモフしている。


「もしかしたら、俺の髪の毛も……」


 俺も良く肩を揉んでもらったり、頭を揉んでもらったりしている。

 それに、風呂場では常にピイは俺の周りにいていろいろしてくれているのだ。


 俺は気になって自分の髪の毛に触れてみた。

 よくわからなかった。

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