76 おいしい山菜を採りに行こう
俺はヒッポリアスをワシワシと撫でる。
「すごいぞ、ヒッポリアス。とても助かる」
「きゅっきゅお~」
ヒッポリアスは嬉しそうに尻尾を振って、俺に身体を押し付けてくる。
小さいヒッポリアスも可愛いが、巨大なヒッポリアスも可愛らしい。
身体が大きい分、撫でがいもある。
冒険者たちも資材置き場に並べられた木をみて感心している。
「ヒッポリアスは相変わらず凄げーな」
「この立派な木を十本なんて、俺たちだけなら数日かかるぞ」
「切り倒すだけならともかく、運ぶのが大変だからな」
そういって、冒険者たちもヒッポリアスに感謝している。
「きゅおきゅお!」
ヒッポリアスも嬉しそうで何よりである。
「枝打ちとか、あとの処理ははこっちでやっておくよ!」
「ありがとうな!」
ということだったので、俺は作業を冒険者に任せて山菜採集へと向かうことにした。
「ヒッポリアスとフィオ、シロにはついてきてもらうが……ピイはどうする?」
『ついてく! ぴぃ~』
ピイは俺の肩の上に乗ったままぶるぶるした。
もう俺の肩の上はピイの指定制のようになっている。
ピイは重たくないし、適度に肩をもんでくれるので、俺としても非常に助かっている。
「クロ、ロロ、ルルはどうする?」
『いく! いく!』「ゎぅ」『いっしょ』
クロはいつも元気だ。
言葉だけでなく、後ろ足で立って両前足を俺の足に乗せて尻尾を振りまくる。
ロロは言語ではなく、吠えてついていくと伝えて来た。
子魔狼たちのなかでは一番大人しい。
ルルは俺を見上げて、尻尾をビュンビュン振っている。
「じゃあ、みんなも一緒に行こうか」
「わふ!」
「とはいえ、クロたちはついてこれないよな」
「わぅわぅ!」「ゎぅ」「わふぅわふぅ」
本人(狼)たちは「ついていける!」と主張しているが、絶対無理だ。
とはいえ、中型犬ぐらいある三頭のクロたちを抱えて走るのは少し大変だ。
「……ふむ、そうだな」
俺は魔法の鞄から布や木を取り出す。
そして製作スキルを使って、身体の前でぶら下げられる籠を作った。
それから俺はクロたちを抱っこして、籠の中に入れた。
中型犬三頭分だ。それなりに重い。
『ておどーる、ひっぽりあすのせなかにのる?』
「うーん。……運動不足になるから、走ろうかな」
『わかった!』
「帰りは多分乗せてもらうかも」
『きゅお! つかれたらいって!』
「ありがとうな。……フィオとシロもヒッポリアスに乗せてもらうか?」
「ふぃお、はしる!」「わふうぅ!」
フィオとシロは自分の足で走りたいらしい。
狼にとって日々の散歩はとても重要である。だから走りたいのだろう。
「ヒッポリアス、フィオたちに合わせてくれ」
『わかった!』
「フィオも、シロも、疲れたらヒッポリアスに乗せてもらおうな」
「わかた!」「わふ!」
フィオとシロの返事は元気だ。
だが、シロはともかく、フィオはまだまだ子供。絶対体力は足りないはずだ。
きちんと様子を見てあげないといけないだろう。
準備が終わると、フィオとシロが走り出す。
それを追って俺が走ると、ヒッポリアスが俺に並走し始めた。
フィオもシロもなかなかの速さだ。
「フィオもシロも子供なのに結構速いんだな」
「わふぅ!」「わふ!」
フィオとシロは元気に尻尾を振って楽しそうに走っている。
「もちろん、ヒッポリアスが一番速いことは知っているよ」
俺は並走しているヒッポリアスのお腹の横を軽くパシパシと叩いた。
「きゅおぉ~」
ヒッポリアスは嬉しそうに鳴く。
ヒッポリアスも楽しそうに走っているようでよかった。
シロやフィオだけでなく、ヒッポリアスも走るのは好きなのだ。
「ヒッポリアスは、さっき木を沢山集めてくれたからな。疲れたら言ってくれ」
『だいじょうぶ! ておどーるは? つかれてない?』
「俺は全然大丈夫だよ」
『そっかー』
俺が食堂を作っていたから、ヒッポリアスは心配してくれたのだろう。
ヒッポリアスは、とても優しい竜だ。
「フィオもシロも休憩しながらでいいからな」
「わかた」「わふ!」
それからは、たまに足を止めて臭いを嗅いだりしながら進んでいく。
シロは縄張りの主張もしっかりやっているようだ。
籠の中のクロたちも景色を楽しんでいた。
楽しい散歩と言った感じで、みんなで走る。
籠の中の中型犬三頭分のクロたちに加えて、俺の肩の上にピイも乗っている。
さすがに少し疲れてしまう。運動不足気味だったのでちょうどいい。
フィオもシロも、そして俺も息が少し上がり始めたころ、天然温泉に到着した。
「フィオ、シロ、おいしい山菜が生えているのはどのあたりだ?」
「あち!」「わふ!」
温泉のさらに向こうをフィオたちは指さした。
ヴィクトルたちに使った薬草を採取したのとはまた別の方向だ。
「一応、気を付けて行こうか」
「わかた」「わふ」「きゅお!」
一応、この辺りは魔熊モドキと遭遇した場所だ。
魔熊モドキがいればシロがすぐに気が付くから、さほど危なくはない。
とはいえ、警戒して進むに越したことは無い。
俺もしっかりと気配を探りつつ、歩いて行った。
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