71 フィオのテイマー修行

 俺は思わずつぶやく。


「……それはすごいな」

「ふぃお、つおい?」

「ああ強い。フィオはすごいテイマーになるるぞ」

「わふぅ!」


 フィオは嬉しそうに尻尾を振っている。

 俺みたいに他のスキルも持っていれば、その分野でも活躍できるだろう。


「魔法を教わってみてもいいかもしれないな」

「まほ?」

「魔法を使えるかも素質次第だがな」

「わふ~ぅ?」


 フィオは魔法をよく知らないのだろう。

 俺が教えてあげられればいいのだが、俺は魔導師ではない。

 今度、魔法の使える冒険者に色々と聞いてみてもいいかもしれない。


 そんな会話をしている間も、子魔狼たちは俺にじゃれついていた。

 いま俺はフィオたちの毛布の上に胡坐をかいて座っている。

 そんな俺の足の上に、子魔狼たちは「ぁぅぁぅ」鳴きながら一生懸命登ってくるのだ。

 とてもかわいい。


「よしよし。魔力をあげようなー」

「わぅわふ」

「はい、クロ、ルル、ロロ。魔力だぞー」

「わふぅ!」


 子魔狼たちは喜んでくれた。


「ヒッポリアスとピイにもあげよう」

「きゅおー」「ぴぃ!」


 俺がそうやって、従魔たちに魔力を与えていると、

「てお!」

「どうした? フィオ」

「まりょくやりかた! どする?」

「従魔、というかシロに魔力を与える方法を知りたいんだな」

「そ」


 テイムスキルについてならば、俺でも教えられる。

 とはいえ、感覚的な要素が多く、言語化するのはとても難しい。


「慣れるまでは、少し難しいんだが」

「ふんふん」

「まず、シロとのつながりを感じるんだ」

「ふん? ふんふん」

「そのつながりに魔力を流す感じで」

「まりぉく」

「そうか、フィオは魔力を自由に動かすところから練習した方がいいか」


 そして、俺はフィオに自分なりの魔力の操り方を教える。

 あくまでも俺はテイム、鑑定、製作スキル持ちであって、魔導師ではない。

 だから正統派魔導師の魔力操作の方法は教えることは出来ない。

 だが、テイマーならば俺のやり方でもなんとかなるはずだ。


 俺は細かくやり方を教えていく。

 フィオは飲み込みが早いようだった。やはり天才かもしれない。


「……そうそれが魔力だ。それを意識して動かせるようになればいい」

「わふん? わふわふん!」


 フィオは真剣な表情で頑張っている。

 シロはそんなフィオを優しく見守っていた。


「慣れが必要なことだからな。ゆっくり練習すればいい」

「わふ! できた」

「ん?」

「まりぉく! あげた!」


 そう言って、フィオはふんふん鼻息を荒くしてドヤ顔している。

 だが、さすがに早すぎるのではなかろうか。教え始めてから三十分も経っていない。

 だから一応シロに尋ねる。


「シロどうだ?」

「わふう!」


 シロはぶんぶんと勢いよく尻尾を振っている。

 そして、シロが言うには、ちゃんと魔力をもらえたとのことだ。


「そうか。魔力もらえたのか。フィオは凄いな」

「すごい?」

「ああ。凄いぞ」


 本当に凄い。才能の塊だ。まさに天才である。

 俺はフィオを褒めまくって頭を撫でまくった。


 フィオは尻尾を振って喜んでくれる。

 フィオだけでなく、シロやクロたちも尻尾を振って嬉しそうにはしゃいでいた。


 それから俺は子供たちを寝かせることにした。

 クロたち赤ちゃん狼だけでなく、フィオもシロも、そしてヒッポリアスも子供。

 そして、子供にとって睡眠は大切なのだ。


「そろそろ寝るぞー」


 そして、俺は自分の毛布に横になる。

 すると、いつものようにヒッポリアスとピイがそばに寄り添ってくれた。

 クロたちも俺のそばに駆け寄って来て、俺の身体によじ登ろうとする。


「どうした、クロ、ルル、ロロ」

「ゎぅ!」


 クロたちは尻尾を振りまくっている。

 従魔になったから、俺と一緒に眠りたいということだろうか。


「クロ、ルル、ロロも早く寝なさい」

「くーん」


 とりあえず、俺はクロたちを寝かしつけるために優しく撫でる。


「わふうわふぅ!」


 すると、少し離れているフィオたちの毛布を、シロが口で咥えてこっちに運んできた。

 フィオもシロを手伝っている。


「フィオとシロもクロたちと一緒に寝たいのか?」

「そ」「わふ!」


 そう言いながら毛布を俺の毛布にくっつけると、フィオたちは横になる。

 フィオもクロたちを撫でて、シロは舐めていた。


 しばらく撫でていると、クロたちは眠りにつく。

 そして、その後、少し経つとフィオとシロ、ピイも眠った。


 一方、ヒッポリアスは

「ふんふん」

 床にあごを付けて、俺に寄ってくる。


「ヒッポリアスも甘えたいのかな?」

『あまえたい』


 思ったよりはっきりとヒッポリアスは言った。


「そうか。甘えてくれていいんだがな……」

『きゅお。ひっぽりあすもそいねしたい』

「うーん。ヒッポリアスは大きいからなぁ」

「きゅぉ……」


 ヒッポリアスは見るからにしょんぼりしていて、可哀そうになる。

 だから、俺は撫でまくった。


「ついでに魔力もあげよう」

「きゅお」


 ヒッポリアスにはさっき魔力をあげたばかりだ。

 だが、いつもヒッポリアスは頑張っているのでご褒美である。


 俺が魔力を与えると、ヒッポリアスは安らかに寝息を立て始めた。

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