57 子魔狼の夜ご飯とトイレ
「きゅーんきゅーん」「きゅーん」
子魔狼たちはもぞもぞと起きると、トテトテとこっちに歩いて来た。
とてもかわいらしい。
鳴き声をテイムスキルで解読すると、「お腹すいた」と言っている。
フィオとシロは起きると、その場で伸びをする。
その後、子魔狼たちの後ろから優しい目をして静か見守っていた。
「子魔狼たち、お腹が空いてたんだな。待たせてすまない」
「きゅーん」
保護したときに比べて、だいぶ俺に懐いてくれている。
俺の足元までやってきて、甘えるように鳴いた。
「子魔狼たち、ちょっと待ってなさい」
「きゅきゅーきゅーん」「くーん」
子魔狼たちは「はやくはやく」と鳴いている。
余程、お腹が空いているようだ。尻尾を元気に振っている。
子魔狼たちの食事は軟らかく煮て、細かくすりつぶして冷ましたお肉だ。
それを平皿に入れた物を、子魔狼たちの前に置く。
「はい、食べなさい」
一斉に子魔狼たちはご飯を食べ始める。
子魔狼たちは「うまいうまい」と鳴きながら食べていく。
「うーん、しばらくは食事の回数を増やした方がいいかもしれないな」
子魔狼たちのがっつきぶりを見ると、そんなことを思う。
「フィオ、シロ、それにヒッポリアスもご飯を食べよう」
「わふぅ!」
フィオたちの分の食事もとりだして、手渡した。
「ヒッポリアスは……」
「きゅ~~お~~」
ヒッポリアスは相変わらず、仰向けのまま眠っている。
「むむ。まだ眠っているのか……。魔法を使ったせいで疲れたのかも知れないな」
「きゅ~」
ヒッポリアスを寝かしたままにして、俺たちだけご飯を食べるのはかわいそうだ。
きっと真夜中にお腹を空かせて目を覚ますに違いない。
「ヒッポリアス、ご飯だよ」
そういって、お腹の横辺りを撫でる。
「……きゅお?」
「やっと起きたか。ご飯を食べよう。お腹空いてないか?」
『すいた!』
俺は起きたヒッポリアスの前にご飯を置く。
ヒッポリアスのご飯は大きな肉の塊だ。
準備が終わったので、俺もご飯を食べ始める。
すると、ヒッポリアスやフィオ、シロもご飯を食べ始めた。
「別に待たなくていいのに」
「わふ」
フィオたちにはフィオたちのこだわりがあるのだろう。
「ヒッポリアス。よく眠っていたけど、やっぱり疲れたみたいだな」
『だいじょうぶ!』
「無理はしなくていいよ。休むときは休んだ方がいい」
『つかれてない!』
ヒッポリアスはゆっくりと肉を食べている。
ヒッポリアスのご飯の肉は大きな塊ではあるが、身体に比べたら小さいかもしれない。
食べる気になれば、一口で食べられるだろう。
だが、ヒッポリアスは大事そうに味わいながら食べていた。
「ヒッポリアス、量は足りるか?」
『だいじょうぶ! まりょくたべた!』
「そういえば、寝る前に魔力分け与えたな」
「きゅお」
ヒッポリアスの食事は味を楽しむための物なのかもしれない。
「フィオたちも大丈夫か? 量は足りているか?」
「だいじょぶ!」「わふ」
フィオたちは美味しそうにがふがふと食べている。
みんなで和やかに夜ご飯を食べていると、子魔狼たちが先に食べ終わった。
子魔狼たちの前に水を置いた皿を置く。
すると、子魔狼たちは水も飲みまくる。
水を飲み終えると、食事中の俺にじゃれつきに来た。
俺は子魔狼たちを撫でながら尋ねる。
「子魔狼たち、お腹空いているのか?」
「くーん」
どうやら、ご飯というより遊んでほしいようだ。
俺は急いで右手でご飯を食べながら左手で子魔狼たちを撫で繰り回す。
「子魔狼たち、人慣れするの早いな」
「きゅーんきゅーん」
「そうか。子魔狼たちは人のフィオと、生まれてからずっと一緒にいたんだもんな」
人に慣れるのが早いのも納得である。
急いで食事を終えた俺は子魔狼たちの相手に専念する。
シロやフィオも食事を終えて、子魔狼たちを構いに来る。
ヒッポリアスは下顎を床にぴったりつけて、子魔狼たちの匂いを嗅いでいた。
シロが親替わりに、子魔狼たちのお尻などをなめているとトイレをし始める。
「うん。ちゃんと出せて偉いな」
「きゅーん」
俺は雑巾を出して、きちんと床を綺麗にした。フィオも手伝ってくれる。
「子魔狼たちのトイレも作ったほうがいいかもな」
「といれ!」
「木の板に雑巾でも敷いておけばいいか」
それぐらいならすぐに作れる。
魔法の鞄に入れておいた材料を出して、製作スキルを使って子魔狼用のトイレを作った。
大きさは一メトル四方にした。
子魔狼たちでも簡単に乗り越えられるぐらい、少しだけふちを盛り上げておく。
その中に複数枚の雑巾を製作スキルで一枚にまとめたものを敷いた。
「子魔狼たち。トイレはこの中でするといいぞ」
「きゅーん? きゅーん?」
子魔狼たちはトイレに興味を持ったようだ。
だが「なに? これなに?」と言った感じで用途はわかっていない。
「わふぅ」
「きゅーん」
シロが子魔狼たちに教えてくれている。
だが、果たしてわかっているのかわかっていないのか。
子魔狼たちは賢いので、気長に教えて行けばいいだろう。
それから子魔狼たちとしばらく遊んだあと、俺たちは眠りについたのだった。
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