Part6:勇者ちゃん、ついに辿り着く
本来であれば、魔王に辿り着くまでに魔王城内をうろつく強力な魔物を倒し、各階層を守護する魔王配下の四天王を倒し、そして魔王との対決となる予定だったんですが、いかんせん勇者ちゃんは1人です!
1人でそんなに何でも出来るなんて思うなよ! 勇者って言ってもただの人間だからな!! これ以上苦しめられる勇者ちゃん、辛くて見れないでしょう!!?
って事でね、ちゃちゃちゃっとこの世界の運命に手を加えまして、四天王には有給消化でバカンスへ行ってもらってます。働き方改革の波は魔王城にも及んでいました。魔王城内の魔物達にも各部署の担当四天王に着いて行ってもらいました。社員旅行って強制参加させたらパワハラになんのかな? まぁここはみんな喜んで自主的に参加したって事で。
いや、手を加え過ぎだろって言われるのは分かるよ? 分かるけどさ、勇者ちゃんは幼馴染の女魔法使いを寝取られてんのよ? 4人で攻め込むはずだった魔王城にたった1人で挑もうとしてんのよ? これくらいしてあげなきゃバランス取れないじゃん?
あとね、魔王をね、木の化け物から見た目幼女に変更しといた。
「やけに静かだ。魔王城に近付くにつれて魔物が少なくなっている気がする……」
お、勇者ちゃんも私が使ったゴッドモードの影響に気付いた感じですよ。不信感を漂わせた表情で魔王城を見上げてますねぇ。
勇者ちゃんやっぱり綺麗な顔してます。どうして女魔法使いは戦士の方へ靡いちゃったんでしょうかね、勿体ないなぁ。実に勿体ないですよっ。
「くそっ、探しても魔物が見つからなくなってしまった。これでは今夜食べる分の食糧が確保出来ないじゃないな……」
あっ……。そこまで考えてなかったわ。ごめんよ。えーっとどうしようか。地面に食糧をポンと置いておくのは違う気がするしなぁ。
「仕方ない、ちょっと戻るか」
勇者ちゃんが魔王城に背を向けて走り出しました。え、めっちゃ早い。私は神様ですから自動的に彼を追尾出来ますけど、これこの世界の人間じゃあ目で追えないくらいの速度が出てますよ? これがレベル98の実力か。勇者ちゃん、強くなったね……(涙)
「ハッ! セイッ! トウッ!」
少し戻った森の中、遭遇した魔物を通り魔のように切り付けて行く勇者ちゃん。逞しいですがこれではどっちがダークサイドか分からないですよ。あくまで勇者ちゃんはライトサイドですからね! 勘違いしないでよねっ!!
はい、無事に今夜の食糧(魔物だったもの)を確保した勇者ちゃんなんですが、ここからはちょっと配信的に厳しいシーンになってしまうのでカットさせて頂きますよ。もうね、血とね、骨とね、肉がね、すごいからね。また機会があれば別でね、まとめて「見てはいけない勇者ちゃんの秘密」的な動画として配信するかも知れませんけどね。
とりあえず朝になるまでは勇者ちゃんもここから移動しないと思いますので、いったん撮影を止めますね。それでは勇者ちゃん、バイバ~イ♪
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
はい、すみません。はい、ごめんなさい。はい、申し訳ない。とりあえず撮影を再開するんですが、すっかり夜が明けてしまいました。そして勇者ちゃんの姿がございません。
やってしまいました!!
撮影をね、止めるからね、神ちゃんったらね、目を離したのね。そしたらやっぱりその分時間が経過しちゃってね、朝になっちゃったのね。
それだけじゃなくって、魔王城の近くに魔物がいないもんだからさ、勇者ちゃんったら夜明けを待たずに出発しちゃってたみたいなのね。もうマジでゴメン。
って事で、今現在勇者ちゃんは魔王城中枢、魔王の間の前に辿り着いてしまいました!
まぁね、言ってもね、魔王城の中に魔物も四天王もいないのでね、これと言って見せ場はなかったかも知れないんですけどね。結果オーライ♪
「不気味だ、魔物が全くいない。気配すら感じない。すんなりとここまで来てしまった。
これは罠なんだろうか、それとも時期が良かったのか? いや、これは神のお導きなのでは……」
おうっと勇者ちゃん正解! そうです、私がやりました。ってかむしろ私が黒幕です。テヘペロ♪
「何にしても、ここまで来たからにはこの扉を開けるしかないんだ。俺は、魔王を倒す為にここまで来たのだから。
長く辛い旅、仲間達の離脱、さらなる武者修行。そして、おばあさん……」
うわぁ、勇者ちゃんが老婦人の事を思い出して身体をぶるぶると震わせていますね。そこまで貞操の危機を感じていたんですね。
いやね、老婦人とかおばあさんとか言ってますけどね、見た目は30代前半って感じのお色気ムンムンな美魔女なんですよ? 勇者ちゃんが狩って来た新鮮な魔物肉のお蔭でね。そんなに怖がったら老婦人も可哀想な気がするんですよねぇ。
まぁ実年齢が66歳である事に変わりはないんですがwww
「くっ、もう後戻りは出来ないんだ! やるしかないんだ!!
剣よ、伝説の剣よ! 俺にさらなる力を与えてくれたまえ!!」
勇者ちゃんが伝説の剣を掲げます。しかし、何も起こりません。だってぇ、その剣に特別な力がある訳ではありませんからぁ! 残念っ!!
「……力が
人はこれを
っと、さてさて撮影時間的にちょうど良い時間になりましたので一回ここらで分割させてもらいますね。大丈夫! 目は離しませんから。私的には引き続き実況をして行きますのでご安心下さい。
それでは次回も、お見逃しなく!!
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