Part3:可哀想な勇者ちゃん、奮起するっ!!

 はいっ、前回はですね、可哀想な勇者ちゃんが仲間に捨てられて一人ぼっちになった訳なんですが。

 でね、しばらくそのまま動画撮影してたんですけど、勇者ちゃんったら最後の村の門で膝をついたまま、動かなくなってしまいまして。

 たまたま通りかかった老婦人に家に連れて行かれて、お世話されてたんですね。まるで廃人のようでした。ちょっとこれはさすがに配信出来ないなって思ってね、撮影を止めてしまったんです。あっ、廃人と配信をかけたダジャレではないですよ!!


 で、ちょっと目を離していたんですが、その間に何とまぁ立ち直ってたんですよ。

ちょっと待ってよ勇者ちゃん、と。そこを見たいんだよ! と思った訳なんですが、まぁ立ち直ったんなら良いかなって思って、今撮影を再開したという感じですね、はい。


 ちなみに戦士と女魔法使いと女僧侶がこの村を立ち去ってから、現地時間で1ヶ月ほど経過しております。

 えっ? ちょっと目を離したって言う割に結構時間が経ってないかって? ご説明致しましょう。


 私ね、ご存じの通り神様でして、基本的に神界にいます。神界から下界を見下ろして実況してる訳なんですが、そもそも神界と下界の時間の流れが違うのでね、私にしたらちょっとした時間であっても、現地にいる勇者ちゃんにとっては結構な時間が流れるって話なんですよ。見ている間は神様パワーで時間の流れを同一にしているんですよ、すごいでしょ?

 ならそもそも目を離すなって? いやいや、私こう見えても神様でして。私が管轄する世界は2つや3つじゃないんですよ。たまには様子を見て回らないとダメなもんで、こればっかりは仕方がないの。


 ま、そんな事はどうでもいいとして、勇者ちゃんが今何をしているかなんですが、鬼気迫る表情で最後の村周辺の魔物を切っては捨て切っては捨てを繰り返す日々を過ごしております。

 もう身体中返り血やら肉片やらで酷い状態ですね。臭い立つ死の香りを感じます。何が彼をここまで駆り立てているのでしょうか(棒読み)


「まだだ、まだ足りない……」


 こっわ~~~! 何かブツブツ言ってんスけど!! 剣に血を吸わせて戦士君達を呪い殺す準備でもしてるんでしょうか……。


「1人で倒さないとダメなんだ……。もっともっと強くならないと……」


 おろっ? 強くなる、と来ましたか。なるほどなるほど。

 え~、前回の動画でこの世界の生物にはレベルの概念はないとみなさんにお伝えしたと思いますが、勇者ちゃんはどうやらその概念がないながらもレベル上げに相当する事をしているようですね。いわゆる修行ってヤツでしょうか。


 ちなみに、私の目から見た勇者ちゃんを分かりやすく数値ステータス化してみると、前回の勇者ちゃんがレベル56だったのに対し、今現在の勇者ちゃんはレベル89! すごいでしょっ!! これ、うちの世界の勇者なんですよね(謎の自慢)


 頑張ったんだねぇ、勇者ちゃん(涙) 私はてっきり自暴自棄になって世界を呪っているのかと思っていましたが、4人で挑む予定だった魔王を1人で倒さなければならないと、ちゃんと分かっていたんですよ勇者ちゃんは!

 だからこうして1人黙々と修行に勤しんでいるんですね。すごいねぇー。やっぱり勇者となると違うわ。


 そうそう、何をもって勇者なのかというお話、しておりませんでしたね。えー、彼はこの世界の教会にその力を見出みいだされた者です。直接私がお告げや神託で選んだ訳ではありません。

 そもそもね、この世界の教会はね、私をまつっている訳ではないんですよね。それこそ目を離したら教会が出来てまして、彼らは存在しない何かを信仰していたんです。いや、今もそうですが。

 教祖とされている人物も、後世で自分が宗教を興した人物であると言われるとは思ってもみなかったでしょうね。彼はただ手の届く範囲の人達と共に幸せになろうと努力していたに過ぎないんですから。

 ただね、決して神の名を騙って人々を苦しめるような事はしていないので、私としては見守っていた訳なんですね。

 とはいえ、そういう団体に何の根拠もなく選ばれてしまったのがこの勇者ちゃんでして。彼の不幸はそこから始まったと言えるでしょう。勇者にさえ選ばれなければ、私の目に留まる事もなかったでしょうにw



 はい、ちょっといい時間になりましたのでいったん区切りますね。次のパードでお待ちしてますからね。絶対見てくれよな!

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