第9話 イレギュラー

 そして……


 室内には警告音が鳴り響く――


 パソコンの前に立ったままの逢坂は、生野の方を向いて、驚愕の表情で「どうして」と力なく呟いて、そのまま生野に寄りかかった。

 生野は逢坂の体を支えて、そのままその場に寝かせた。


 残り時間42分、最後の1人になった生野の表情に焦りの色は一切なく、余裕の表情だった。


 生野はパソコンの前を離れ入り口の傍で腰を下ろした。


 画面に映るタイマーが終わりに向けて刻一刻とその数字を減らしていく。


 …………


 残り時間7分――


 その時になってようやく生野が動き出す。


 パソコンに向かってからすぐにチープなファンファーレが流れた。その音が終わると同時に鉄扉の方から重い開錠音が聞こえる。


 生野が扉に向かって歩いて行く。彼女が去った後のモニターには『Clear』と表示されていた。


 生野が扉のノブに手を掛け、部屋を出て行く際に一瞬だけこちらを見遣った。


 モニター越しに視線が交錯する。


 生野が去った部屋には横たわって眠る6人が残された……


 こうして――


 “イミテイションゲーム”は終りを迎えた。


 …………


 緊張の糸が切れた俺は大きく深呼吸してイスに体を預けた。

 しばらくこうしていたかったが、すぐに次の行動に移らなければならない。


「さて……」


 俺たちは急いでこの場所を去る必要があった。


 イスから立ち上がって部屋の扉を開けると――


「……へぁ?」


 思わず間抜けな声が漏れた。


 なぜなら、扉を開けるとそこには白い仮面をつけて、黒いコートに身を包んだ、見るからに怪しい奴が立っていたからだ。


「あ、あんただ――ッ」


 何者かと尋ねようとした瞬間、仮面の人物は俺の首に何かを押し当てた。


 全身の力が抜けていき……そのまま意識を失った……


 …………


 目が覚めると、俺は手足を縛られ口にガムテープを貼られた状態で、先程までイミテイションゲームが行われていた部屋に転がされていた……

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る