白い少女とふたり、果てない霧の中を進む〝僕〟の冒険譚。
自分や少女が何者であるのか、それすら判然としないままの道行。様々な苦難や、また明確な〝敵〟を打ち倒しながら、少しずつ進んでいくふたりの物語。
浮かぶ風景はどこか幻想的な、絵画の世界のようでありながら、でもある種のディストピアを思わせる、退廃的で重苦しい雰囲気が魅力的です。
逃げ道のない大きな運命を前に、それでも道を切り拓くべく抗うような。あるいは、嵐の只中に立つかのような。立ち向かっていくものの覚悟、悲壮さと背中合わせの力強さがありました。
詩や歌を思わせる節回しが美しく、なんだか声に出して読みたくなるような作品でした。