第14話 知りたいこと、言えないこと
「カエデちゃん、お帰りなさい」
一人カエデの部屋で帰りを待っていたツミキ。部屋にいる事の驚きよりも、元気そうな様子に安堵した表情で入ってくる
「……ツミキ」
ホッとした返事に対し怪我だらけでやって来たカエデに、驚くツミキ
「どうしたの?医務室行かなきゃ」
「あとで行くよ……」
と、あたふたとするツミキを抱きしめるカエデ。そのまま動かずに、カエデの気持ちが落ち着くまで二人立ったまま時間が過ぎていった
「ゼフドさん。お話が……」
カエデと一緒に帰ってきたミオリ。こちらも、医務室に行く前に、指令室にいたゼフドに声をかける。傷だらけのミオリに驚く隊員達を横目に、ゼフドを睨みながら隣に着く
「ミオリ君、どうした?ここではなく医務室に……」
「それはあとで構いません。話が聞きたいのですが」
ゼフドが話しを遮り、苛立ちながら話す。だが、ゼフドは何も言わずただ、ミオリを見つめている
「なにか知っているのですか?」
「シキと言う少女が、ツミキを探していました。ゼフドさんはなにか知っているのですか?」
話を聞いたあと、しばらく無言になる二人。指令室に沈黙が流れ、隊員達も二人の様子を固唾を飲んで様子をうかがっている
「それはまだわからない。だからこそ、こちらに住んでもらおうと思っている」
「納得いきません」
やっとゼフドが話した事は、ミオリが求めていた答えとは違い、更に苛立っている
「納得いかないもなにも、決まってしまったことだ。仮に自宅へ返したあと、ツミキ君に何かあっても困る。だから……」
話している途中、ゼフドに背を向け指令室の扉へ向かうミオリ
「どこへ?」
「医務室です」
振り返ることなく出ていったミオリ。扉が閉まると緊張感が解けたのか、あちらこちらから、ふぅ。とため息が聞こえてくる。ゼフドも閉じた扉を見ながら、ため息をついて、一人呟く
「困ったものだな……」
「ねえ、ツミキ」
カエデが落ち着いてベットに背に、もたれて座る二人。傷の手当てを、ちょっと忘れてお喋りをしていた
「うたって、好き?」
「好きだけど、どうして?」
カエデからの意外な質問に疑問を返すと、隣にいるツミキの手を強く掴んだ。驚くツミキに真剣な表情で見つめているカエデ
「何があっても、うたっちゃダメ!」
と、大声で注意する。その勢いに思わず仰け反るツミキにあわせて、カエデも少しずつ顔を近づけてく
「え?なんで?」
「お願い!ダメだからね」
返事ができず黙るツミキ。静かになった部屋にカエデも我に返って座り直す。そのまま沈黙が流れて何となく話せずにいると、カエデが突然立ち上がり、部屋から出ていこうとする
「医務室行ってくる……ツミキは待ってて」
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