第13話 私に必要なうた

「何度も何度も、なぜ狙う!」

 ショッピングセンターから逃げ離れていくミオリとカエデ。避難が完了している街へと向かっていく後ろを追う姿が二つ

「あなた達には関係ないことですの」

 楽しそうにミオリを追うシンクと、カエデを睨み追いかけるシキの姿があった

「カエデとか言うやつ、私が倒す」


「二人とも、大丈夫かな?」

 一方、ショッピングセンターに残ったままのツミキ。出入り口に買い物客と紛れ、動けずにいた

「大丈夫ですか?ここは危険です。こちらより避難をお願いします!」

 現れたのは、ミオリ達がいる組織の人達。ぞろそろと、指示された場所へと歩いていく人々

「おや、君は……」

「あっ、あのカエデちゃんとミオリさんが……」

 ツミキが話しかけたのは、ちょうど指揮官として来ていたゼフド

「今は避難することだけを考えるんだ」

「でも……」

 二人を心配するツミキをなだめ、避難する人々ともにショッピングセンターから出ていった



「あの子はどこだ?」

 同じ頃、シキがカエデを追い込んでいた

「あの子って誰?」

 ミオリと二手に別れ、建物の奥へ奥へと逃げていく。カエデを追いかけるシキの声が少しずつ大きくなっていく

「前、助けていたアイツだ。今どこにいる?」

「それを聞いてどうするの?」

 カエデの声も大きくなって、逃げる速度も上がり、シキの攻撃も激しくなっていく

「シキ。何をしているの?そろそろ帰るよ」

 ミオリを見失ったシンクが二人のもとへと駆け寄ってきた

。だが、声に気づかないまま、カエデに攻撃をし続けていく



「私は、あの子のうたを聞きたい」

 建物の隅まで走り続け逃げ場をなくしたカエデ。シキからの攻撃を受け倒れてしまう。それにも構わず話しながら近寄っていく

「……ツミキの?なんで?」

 ゆっくり起きながら聞き返すカエデ。思っていたよりダメージを食らっていたのか、フラフラと壁伝いに起き上がる

「ツミキ?アイツはツミキというのか……」

 カエデの側に来て名前を聞き立ち止まる。睨みあう二人の側で、建物が崩れ落ちそうな音が響いている

「ツミキのうたは、私に必要なもの。どこにいる?」

「そんなの、教えるわけにはいかない……」

 カエデの言葉を聞いたシキ。ふぅ。と深呼吸をしたあと、カエデを睨んだ。そんなシキの姿を見たシンクが慌てて止めようとする。だが、間に合わず建物に大きく響くシキのうた。やっと駆けつけたミオリがカエデの側に行くと、抱き上げ、シキとシンクから急いで逃げていく。その姿をうたい続けながら追いかけるシキが、カエデに向かって叫んだ

「じゃあ、力ずくで聞いてやる!」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る