第12話 楽しいはずのお買い物

 夕暮れ前に、カエデ達と出会った街についたツミキとルモカ。そのまま公園に行くと、二人を待っている人影が二つ。ルモカがその人影に向かって話しかける

「二人とも、お待たせ」

 ルモカの声に気づいて、こちらを振り向く人影。それは、ツミキが会いたかった人

「カエデちゃんとミオリさん!」

 カエデに飛びつき抱きつくツミキ。そのまま勢い余って倒れた。楽しそうに二人を見るルモカと今日も機嫌の悪そうなミオリ

「そういえば、ルモカさん一体なにを……」

 再会の喜びが落ち着いてきて、やっと用件を聞き始めたツミキ。倒されたカエデも起きて、ルモカの話が始まる

「今からお買い物してきてね」

「お買い物?」

 予想外なルモカからの提案にキョトンとするツミキ

「そう、あなたがここに住むための必要なもの」

「私まだ住むって……」

「まあまあ、二人の気分転換も兼ねているから。三人楽しんでおいで」

 ツミキの返事も聞かずに、どこかへ行ってしまったルモカ。残された三人。急に気まずい雰囲気になっていく

「あの、カエデちゃん……」

 恐る恐る二人に声をかけると、カエデもルモカからの提案に困った表情

「ツミキ、ごめんね」

「ルモカさん、一体なにを……」

 まだ機嫌の悪いミオリを不安そうに見るツミキ。それに気にもせず歩き始めた

「それでは、二人とも行こうか」

「あの……どこに?」

「買い物だ。必要なんだろう?カエデ、道案内よろしくな」

「あ、はい。ツミキも行こう」

 先に歩くミオリを追いかけつつツミキも呼ぶカエデ。二人の後を不安そうにツミキも追いかけていく



「買わなくていいの?お金はゼフドさんが大丈夫って……」

 ショッピングセンターに着いた三人。数件お店を見て回っても結局何も買わずに買い物を終えてしまいそうな雰囲気

「うん、特に欲しいのもないし、住むって今日言われたし……」

 困り顔で話すツミキ。その話の内容にミオリが反応した

「ここに住むのは、私は賛成しない。何も知らず生きることが幸せだ」

 前を向いたままツミキに語気を強めに話していく。二人が心配そうにミオリを見た時、突然グラッと大きな揺れが起こった


「……なんだ?」

 ミオリが呟いた瞬間、突然崩れ落ちていく建物。逃げ惑う人々の悲鳴がショッピングセンターの中で響き渡っていく

「ツミキ、急いで逃げるんだ!」

 人の流れと逆らうように走り出したミオリ

「ツミキは早く逃げて!私はミオリさんと行くから!」

 その後をカエデも追おうとするが、ツミキがうろたえて動けずにいる

「でも……」

「早く!急いで!」

 ツミキを置いて、ミオリの元へと走り出してしまった。一人残ったツミキ。避難に走る人たちの後を追うように、外へとゆっくり歩いていく



「……いた。あの子もいる」

 人々が避難を開始した頃、遠くから呟き話す人影が二つ。無表情のシキと微笑むシンクがツミキ達がいる場所へと向かっていた

「そう、じゃあ会いに行きましょうか。ね、シキ」

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