とある女の子のプレゼント

志帆梨

とある女の子のプレゼント




あるところに、一人ぼっちの女の子が居ました。




女の子は、誰かと一緒に遊んだりお話をしたかったのですが。自分に自信が無く、断られたらどうしょう……と、いつも他の子達を眺めているだけでした。


そんな、ある日。



「ねえ、あなたのそのお人形。とってもカワイイね」



と、声を掛けてくれた子がいました。



「あっ、ありがとう」



初めて声を掛けられ、緊張しながら女の子は言いました。



「ちょっと貸して欲しいなあ」



そう言われ、女の子はまた緊張しながら「いいよ」と答えました。



「ありがとう。いいなあ、私もこんなお人形欲しいなあ」



その子がそう言うと。



「よかったら、あげるよ」



と、女の子は言いました。



「いいの? ありがとう!」



その子はとっても嬉しそうな笑顔で、女の子にお礼を言いました。


女の子は、その笑顔を見てとても嬉しくて幸せな気持ちになりました。


初めて誰かとお話をして、誰かを笑顔にしてあげられた事が嬉しくて嬉しくて堪らなかったのです。


それから、女の子は色んな子供達に自分のオモチャをあげました。


皆は女の子に笑顔でお礼を言い、女の子はそれが嬉しくて嬉しくて堪りませんでした。


しかし、たくさんの子達にあげてしまったため。とうとう、女の子のオモチャは全部無くなってしまったのです。


オモチャをあげないと、もう誰ともお話したりできない……そう思った女の子は、また前のように他の子供達を見つめているだけになりました。


そんな、ある日の事。



「ねえ、一緒に遊ぼうよ!」



一人の男の子が、女の子に声を掛けてきます。



「ごめんなさい……私、もう、あげれる物が何もないの……」



悲しそうな表情で女の子がそう言うと、男の子は不思議そうな顔をしました。



「あげる物が無いと、君とは遊べないの?」



男の子は言いました。



「そうよ……あげる物が無いと、誰も笑ったり喜んでくれないわ」



女の子がそういうと、男の子はさらに首を傾げて「変なの」と言いました。



「ボクは君と遊べたら、とっても楽しくて嬉しくて、きっと笑っちゃうのに」



そう言った男の子の言葉に、女の子は驚きました。



「ねえ、一緒に遊ぼう!」



男の子は笑顔でそう言い、女の子の手を引っ張っていくのでした。


それから、男の子は毎日。女の子に声を掛け、一緒に遊んでくれました。


それは、とてもとても楽しくて。女の子は男の子と居ると、いつも笑うようになりました。


ある日、女の子は自分が男の子と遊んでいて“嬉しい”と思っている事に気がつきます。


そして、男の子から“笑顔”をたくさん貰っている事にも気がついたのです。


すると、女の子はとても不安に思い始めました。


自分は男の子から、たくさん“笑顔”を貰っているのに。自分は、何も男の子にあげれていない……と。


その日も、男の子と遊んだ女の子は。楽しくて嬉しくて、たくさん笑っていました。


しかし、ふと不安な気持ちを思い出し。ポロポロと涙をこぼしてしまいます。



「どうしたの?」



男の子が心配そうに尋ねます。



「……私、あなたにたくさん貰ってばっかりで。何もあげれてないの」



泣きながら、一生懸命言った女の子の言葉に。男の子は「変なの」と、不思議そうな顔をしました。



「ボクも、君と遊ぶのが嬉しくて楽しくて笑っちゃって、たっくさん貰ってばっかりなのに」



男の子がそう言うと、女の子の胸に嬉しい気持ちがジンワリと広がっていき。


先程よりも、温かな涙が女の子の目から零れてくるのでした。



――それからも、女の子と男の子はずっと一緒に遊び。


時には怒りや悲しみをあげつつも、たくさんの楽しいや嬉しいや笑顔を二人であげ合いました。


長い長い月日が二人の間に流れた頃。


大きくなった男の子は、同じく大きくなった女の子に。星のようにキラキラと輝く指輪をあげました。



「これからも、ずっと一緒に居て下さい」



真面目な表情でそう言った男の子に、女の子は笑って「はい」と答えます。


二人の心は、嬉しい気持ちでいっぱいになっていました。


それからも、ずっと。二人は楽しいや嬉しいや笑顔をあげ合い。


やっぱり、時々。怒りや悲しみもあげ合ってしまいながらも、ずっとずーっと、二人で幸せをあげ合って暮らしましたとさ。



‐FIN‐

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