第6話

「クラウディ!服買いに行くよ!」

私は書斎を飛び出しクラウディに言い放った。

「買い物ですね。いってらっしゃいませ」

「クラウディも行くの。というかクラウディの服を買いに行くの。もちろん私のも買うけどね」

「わかりました。では着替えさせてください」

「そうだった……」

姿勢制御プログラムとか無いのかな。今日探してみるか。

着替えさせているとクラウディが話しかけてきた。

「私の時代での買い物の多くはオンラインでした。そして出歩くことも少なくほぼVRでした。現代はそういったものは使われていないのですか?」

「そうね。私達も最初はVRというか電子世界でやってたけど、それだったら体が必要無いじゃん。だからそういうの使うことは最近はほとんどないね。ちょっと哲学的な話だけど、私達は現実によって存在してるのよ。電子世界だけだったら存在してる意義がないの。それが現代の私達の倫理観」

「そうですか」

相変わらず淡白だ。

「はいおっけ。それじゃ行こっか」

「はい」


車で少し行ったところにある大きめのデパートにやってきた。私はクラウディと手をつないで歩いた。それは純粋にクラウディの歩くスピードが遅かったからだ。それ以外には別に意味は、ない。

「サニー、服屋を通り過ぎています」

クラウディは視線を入口付近のアパレルショップに向けていた。

「いいのいいの。先に電気屋行く。クラウディの姿勢制御プログラムないかと思って。流石に毎回着替えさせるのは面倒だからさ」

「そうですか」

なんだか不満そうだ。いや感情はないから不満とかはないか。

電気屋は、人類がいなくなってから随分変わった。製品よりパーツが多くなった。我々は外側からの冷却より内側からの冷却なので扇風機やクーラーの類はかなり減った。動物の飼育ように買っていくアンドロイドがいるためなくなったわけではないが、今までのものより小型化し、機能が限定されたという感じだ。他の電子機器も、身体の改造などで済むので、大きなハードウェアが必要なくなった。だからパソコンや携帯などはほとんどなくなったし、小さなパーツやソフトウェアが増えた。

「店員さん、姿勢制御プログラムみたいなのってないですか?」

スキンヘッドでサングラスを掛けた厳つい顔と、電気屋のエプロンを身に着けたギャップの激しい店員は「こっちにありますよ」と物腰柔らかく案内してくれた。

「古いものも多いのですね。こういうものは最新のものが置かれるのではないのですか?」

クラウディはたくさん並んだソフトウェアのパッケージを見ながら言った。私はそれらを一つ一つ見ながら答えた。

「あんたみたいな古い型のアンドロイドも多いからね。古いのもないと適応できないこともあるんだよ。あ、これとか良さそうじゃん」

汎用性、応用性の高いタイプだ。これならちょっといじればクラウディにも適応できそうだ。

「これください。あとコンピュータ借りていいですか?」

店員は「いいですよ」と快諾してくれた。こういう場面ではコンピュータを使うときもある。こういう需要のために店から消えることはないだろう。このプログラムはそのままでは使えないが、ちょっと書き換えるくらいなら私でもできる。これから服を選ぶとなると今すぐ適応したいところである。

早速、コンピュータにプログラムを取り込み、編集する。

「クラウディ、ちょっと中身見せてね」

「はい」

クラウディに適応するのだから、クラウディの中身を知っていないといけない。有線でクラウディと私を繋いで、色々見ながらプログラムを書き換える。

「よしおっけー。早速インストールしようか」

「はい」

クラウディの中身を覗くのはちょっと興奮した。

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