第3話
朝起きると台所で料理をするクラウディがいた。
「おはようございます、サニー様。……サニー様、アンドロイドに食事や睡眠は必要ありません。充電で全て事足ります。ですのに、なぜ朝食の用意をさせるのでしょうか」
鍋をかき混ぜる手を止めぬまま彼女は私に疑問を呈した。
「んー、なぜかと言われるとこれと言って理由があるわけではないけど、強いて言うならば人類の模倣をしてるからかな」
「しかし、アンドロイドに味覚は無いのではないでしょうか。それとも14世代には装備されているのですか?」
クラウディはスープを椀に分けている。
「元からあったわけではないよ。人類が消えてからしばらくした頃に、アンドロイドの味覚に対するハードウェアとソフトウェアが完成したんだよ。アンドロイドが作ったんだ。すごいでしょ。それは私達にとっては憧れのものだったから。私達が作った料理を食べた人達は幸せそうに美味しいと言ったり、笑顔を見せたんだ。多くのアンドロイドがそれを見てきたから」
「私には感情がありませんので理解しかねます」
またこれか。相変わらずというかなんというか。
食卓には食パンとスープ、それからサラダが並んでいる。これが家事用アンドロイドというだけあってクラウディの料理はとても美味しいのだ。
クラウディはじっとこちらを見つめていた。指示を待っているのだろうか。
「ところでさ、クラウディってバッテリーでの最大駆動時間ってどれくらいなの?」
「マニュアルに拠りますと、約8時間となっておりますが私は中古であるためパーツ交換がされておりません。ですのでおおよそ6時間と推定されます」
トーストにははちみつと決まっている。とても甘くて美味しい。最高だ。
「それくらいなら大丈夫かな」
「と言いますと?」
クラウディは少し首を傾げた。これはちょっと可愛いな。
「いやさ、散歩しようと思って。どうせだから一緒に行こうよ。君は起動してからずっと家の中でしょ」
「承知しました。ご同行致します」
堅いなあ。
「ごちそうさま。これ片付け終わったら教えて」
「はい」
クラウディはペコリと一礼して片付けを始めた。
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