ばんはく♬〈春編〉

宗廟(チョンミョ)

 春学期が無事に終わり、お休みがやってきましたー♪

 勉強するために留学したくせに、休みはやっぱりうれしいものです♬


 夏学期が始まるまで二週間ほどお休みになります。

 ほとんどの留学生は里帰りします。

 私は普段は勉強で忙しくてあまり観光できなかったので、このさいいろいろな所に行こうと思い、帰国しませんでした。


 韓国のいいところは、ソウル市内に観光地がたくさんあることです。

 地下鉄が発達しているので、交通も便利だし、安いし、短時間でいろいろまわれます。

 欠点は坂道が多いことです。

 大学だけでなく、町中も急な坂が多いです。

 バス停から徒歩五分のホテルまで行くのに、ちょっとした登り坂をスーツケースを転がしていかなければならないなんてことは、日常茶飯事です。

 けっこう疲れます……

 ソウルを歩き回るときは、歩きやすい靴をはいたほうがいいと思います。

 そしてソウルは都会なので、道が複雑で、高い建物も多く、迷いやすいです。

 何人かで観光するならタクシーを貸し切ってもよいと思います。

 ただし渋滞しますが……

 少しお高めですが、外国人観光客用の模範タクシーなら、日本語が通じるそうです。

 模範タクシーは安全運転でぼったくられることもないとのことです。

 私は普通のタクシーしか利用したことがないのですが、日本と同じようにトラブルもなかったし、タクシーの運転手さん達はみんなおじさんばかりなのですが、安全運転で親切でした。

 残念ながら韓国は運転マナーが悪いという評判でしたが、交通事故が多いせいか、公共機関の運転手さん達はみんな安全運転を心がけているような気がしました。


 

 連休を利用して、まず最初に行ったのは宗廟チョンミョというところ。

 李氏朝鮮時代、歴代の王、王妃、功臣の位牌を祀った霊廟です。

 ユネスコの文化遺産に登録されているそうです。

 ここは景福宮キョンボックンなどの有名な宮殿とはちがい、あまり知られてないかもしれません。

 私は留学する前に、ちょうど日本で韓国の観光PR用のCMが流れていて、この宗廟の外回廊が映っているのを見て、初めてこういう観光地があるということを知りました。

 CMでは光に照らされた整然と並ぶ柱が印象的で、一度見てみたいと思いました。


 地下鉄三号線か五号線の駅、鐘路チョンロ3サンガを降り、宗廟の方へ歩いていくと石塀が現れます。

 石垣の部分は白っぽく、上には黒い瓦屋根がのっかっています。

 塀の上からは緑濃い木々がのぞいていて、敷地内が緑豊かなようすがうかがえました。

 

 ここは自由観覧制ではなく、日本語ガイド(無料)による時間制観覧で、毎週土曜日と最終水曜日だけ、自由に観覧できます。

 私は自由に観覧できる土曜日に行きました。

 ガイドさんに説明してもらえるのもいいのですが、自分のペースでゆっくり見てまわりたかったからです。

 

 石塀にそって歩いて行くと、立派な門が現れます。

 しかし景福宮に行ったことがある人から見れば、この門は立派には見えないかもしれません。

 色彩も大きさも控えめです。

 門のそばにチケット売り場があって、大人一人の入場料がなんと100円!

 安い!

 国立博物館もそうですが、観光業が主産業と言ってもいい国なのに、これで大丈夫なのかな?と、心配になるくらい安いです。

 

 門から緑豊かな宗廟へと入っていきます。

 道の真ん中に三道サンドという石畳がありますが、真ん中は神様が通る道で、両端は王様と皇太子さまが通る道だそうです。

 なので、一般人はその上を歩いてはいけないそうです。


 敷地内にはあちこちに小さな建物が点在していますが、まずは一番大きい正殿にむかいました。

 緑深い森を抜けると、さらに朱塗りの柱の門があり、門をくぐると視界がパッとひらけます。

 広々としたところに正殿が静かにたたずんでいました。

 正殿は横に細長い構造となっています。

 王様がお亡くなりになるたびに横に増築していったために、細長くなったそうなのですが、世界でも類を見ない構造だそうです。

 さっぱりとした前庭の真ん中に立つと、歴史の重みと荘厳さに胸がすがすがしくなります。


 CMで見た外回廊を、CMと同じ位置で見てみたくて、しかし中には入ることができないので、建物の脇からのぞくと、朱塗りの柱がどこまでも続く。

 ちょうど晴天に恵まれていて、朱塗りの柱がCMのように美しく見えました。

 王宮とはちがい簡素な造りなのですが、荘厳で美しい柱が整然と立ちならぶさまは圧巻です。

 残念ながら建物の中に入ることも、外回廊にあがることもできません。


 音楽が聞こえてきたので、さらに奥へと進むと、人が集まっていました。

 ここは永寧殿という別廟です。

 ここにも王と王妃の位牌が祀られていますが、別廟なので正殿より規模が小さいです。

 人々が見学していたのは、時代劇のような赤い衣装を着た人達による生演奏でした。

 毎年『宗廟大祭』という大きな祭礼が行われているようですが、それとは別物で、もっとこじんまりした演奏会でした。

 なぜそこで演奏会が行われていたのかはわかりませんが、思いがけなかったので得した気分でした。


 この後小さな建物も一つ一つ見てみました。

 一つ一つの建物に、それぞれの役割があったようですが、何も勉強せずに行ったので、ただ眺めるだけ。 

 やはり正殿が一番すばらしかったです。

 都会の中にあって、本当に緑豊かな宗廟。

 観光客も多くはなく、隠れ家を訪れたようなひっそりとした空間。

 ソウルの観光地はどこでも人が多くて活気があるので、こういう静かなところで歴史に思いを馳せながら、散策するのも楽しいものです。

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