第5話【モレテフキデテ】

 地下室奥のベッドの上、上半身裸のボクは身体をベットに縛られ、さらに両手両足を綱で縛られ、口には布を詰めた状態。


「……じゃあ、始メルからな。後悔しちゃ、怒ル……」


 ナネさんの細い手に、銀色のナイフが光る。彼女が医術も学んでいたからか、その持ち方のどこかに、美しさが佇んでいる。


 見惚れていると、右胸に冷たいモノが押し当たり、身が震える。むにゅうと音がし、メスが皮に触れただけで揺れ震えるやわらかさに、少し戸惑いを覚えた。


「……、……こいツぁ……」


 ナイフがボクのに届く胸まであと1ミリと言ったところで、ナネさんは手を止める。躊躇している気配は感じないのにと、彼女の目を見て反応を伺おうとするも、自分の胸で視界が隠れて、ここからナネさんは見えない。


「待っタ。ツクヨ、悪い。少し試させて欲しいコトができた。そこからダト見えないかも。……ソーダ、調度いい。この間、勇者が押し付けてキタ例のアレ、使ってミル!」


 彼女はナイフを鞄に入れると、同じ手で何やら妙な形のものを取り出した。


「こうして、こうだナ、これでイーのか」


 彼女がその、縦長、長方形をした四角い物体を掲げると、「カシャシャシャシャシャシャシャ」という音が、その物体から鳴った。


「オー、これはすごい。右上に3%って出てるケド、まー気にしなくてイーか。ほら、見て」


 その四角いモノを彼女はボクの目の前に持ってきて見せつける。それの中に、縛られたボクの身体があった。


「ー! ー!」

「ア、口に咥えさせてたネ。はずすから見テ見テ」


 ボクの口にその細い手を乱暴に突っ込むと、布を取り出した。はしゃぐと乱暴になる癖は相変わらずのようだ。


「ナネさん、なんですか、これ……」

「勇者がここに来たときにナ。まったく珍しい道具持ってるナと思ったケド、まぁ、かわりにあたしの最高傑作のひとつである【全語翻訳の髪飾り】をくれてやったからナ。すごくなくちゃ困る」

「……あ、あれあげちゃったんですか!? 多種族だけでなく、動物やモンスターとも会話できるあの髪飾りを……ナネさん……。けど、まぁこれだけの事ができる物なら、よかったですね……って! どうしてそんな貴重なものでボクにボクの身体を見せつけるの!? しかも、胸の突起の部分を強調させてまで……」

「あんたとあたしの間柄だろ? 恥ずかしがることもナイぜ? ま、これを見てもらいたくってな」


 ボクの胸の突起に指を向ける。ソコに、白い液体のようなモノが垂れている様を目にした。


「コレ、ホントーニ、、ボクの、身体、デスヨネ?」

「カタコトで話す奴はあたしだけでジューブンだヨ。その通りだ。ツクヨは飲み込みが早くて助かるヨ」

「おぉ……う」

「ソコに見えるのは、まさしく母乳だヨ。あんた、いつ男とヤってきたのカナ? フフ」

「しゃ、しゃれになりませんよ!? ボク、この姿になったのに気付いてまだ数時間ですよ!?」

「…………」


 押し黙る。そして、何事もなかったかのように言葉を紡ぐ。


「どうして出るのかはサテオキ、ツクヨ、あんたなら、この母乳に含まれる魔力量の多さ、わかるデショ?」

「はい……これだけ少ない量にも関わらず、普通の宝石10個を越えるかと……」

「決まりダ。乳を切る前に、出せる分ゼンブ出して、売り物にするンダヨ! 高値で売れる、ツクヨ、あんたも、本当にダンジョン行くナラ、金は居るカラ、ちょっとだけ待ちナ」

「え、あの、冒険に出るの、今日です」

「ソレくらい少し遅れてもいいいんだヨ! どうせ性転換沙汰なんざ会議にかカって数日遅れることになるンダ。この壺を満タンにさえしてくれれば、あんたとあたし合わせて一生遊べる程の金が手に入るンダヨ。ほら、ヤルヨ!」


 会話の最中、四角いモノにあったボクの姿がなくなり、表面が真っ黒くなったことにナネさんは気づいていないようだ。


 勢いのまま、搾乳することになってしまったが、身長の縮んだ今、ダンジョン用の装備を新調するお金も欲しい。


 それに、新しいおもちゃを買った子供のような、無邪気にはしゃぐナネさんの期待を裏切るわけにもいかなかったから、ボクは両手両足の拘束をはずし、ベッドから立ち上がり、自分の胸をおもむろに揉み始めた。


 胸のやわらかさからか、たゆんと弾けるように、ボクの揉みに合わせて形を変形する両胸から、今まで感じたようなことのない熱さを覚える。


 そういえば、ようやく思いきり自分の胸を揉めるんだなと思う。全身が熱くなる感覚と共にむにゅむにゅと触り心地を堪能していると、ボクの胸から、白い液体が大量に吹き出してきた。




――――――――




 搾るように、根本の方から中真にある突起まで手を使って揉みしだく。すると、白くて甘い香りの液がボクの突起から勢いよく吹き出し、胸元の受け皿に流れ行く。


「もっとだ! もっと出しナ!」


 受け皿に液が溜まると、彼女は大きな壺に移し、またボクの胸元に受け皿を置く。先程から、その作業ばかり続けている。


「いいペースだヨ! これなら、すぐに満タンになりそうダネ!」


 ナネさんが目を輝かせてボクを見るものだから、やめようにもやめられない。けどさ、上半身をおおっぴらしにたまま、ナネさんに自分の胸を揉み続ける姿を見せ続けることには恥じらいを隠せないまま、時間は過ぎていく。


 狭いも木の香り漂う地下室で、白い母乳が吹き出し続けているボクと、年のわりに子供みたいに目を輝かせふすふすとしているナネさんだけの朝。


 ボクは、またとんでもない事件に巻き込まれてしまったことを、ようやく自覚できたみたいだった。

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