園児編 第9話 あの子を落とせ〜いじめっ子少女編⑥〜

 俺、佐藤篤樹さとう あつきは今、小柄でとても可愛らしい春先生とよもぎ保育園の中庭で楽しくキャッチボールをしています。

 

 今日の太陽はなぜかいつもよりかなり輝いているように見えます。

 風もそよそよと吹いていて、とても心地がいいです。

 

 今、俺は本当に清々しい気分です。

 攻略作戦の方は、順調に進んでいて、それでいてその間には大好きな春先生と戯れることができる。


 あぁ、なんて幸せなことだろうか……

 よぉし! いじめっ子のナツを攻略したら、次は春先生を攻略するぞー!

 

 俺は全てが上手くいっていると思い込み、春先生の攻略という夢物語へと想いを馳せるのであった。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



 少女幽閉作戦を遂行して30分後。

 俺は再びその場所へと戻ってきていた。


 その場所とは、外庭とは正反対の方向で、さらに立ち入り禁止の場所である。


 なぜここに来たか、って?

 それは、俺が彼女の王子様になるためだよ。

 彼女の名前は蒼井夏(アオイ ナツ)

 いつもはいじめっ子なあの子。

 でも、実はかなりの寂しがり屋さん。

 そんな彼女の弱い部分につけ込んで、彼女を一人ぼっちの空間に追い込め、そんな彼女に俺は優しく手を差し伸べる。

 彼女は俺のそんな勇姿に胸をときめかせ、俺に強い恋心を抱く。

 そんな彼女を優しく抱きとめ、そっと唇にキスをする。

 これでミッションはコンプリート。

 完璧な作戦だ! 我ながら天晴れだ!


 なぜ、俺がこんなことをしてるかって?

 それは彼女を俺のものにするため。

 彼女の成長した大人の姿は美しかった。

 結婚式の披露宴で、また同じ色の真紅のドレスに身を包んだ彼女の姿を見た際に、その結婚式の主役であるはずの俺は彼女に見惚れてしまった。

 

 隣には純白のウェディングドレスを見に纏った、見目麗しき妻の姿があった。それなのに……だ。

 妻もかなりの美女だ。妻に比べたらナツかなり劣ってしまうかもしれない。

 妻と比べてしまうのが間違っている……


 彼女は将来必ず、誰もが羨む美女へと成長する。

 だから、初々しい今こそ彼女を狩るにはいい期間なのである。

 

 そのために、俺は着々と作戦を進めてきた。

 “一人でいること"が嫌いな彼女を閉塞的空間に追い込むことに成功した。

 これによって今彼女は1人でいることに寂しさあまり恐怖を抱いていることだろう。

 だからあとは、俺が恐怖に陥った彼女にそっと手を差し伸べるだけ。


 そう思って再び、木々が鬱蒼と茂る場所へと戻ってきたのだが……


 

 どうやら何かがおかしい…………


 何がおかしいのか。


 違和感の正体は、この場所があまりにも静かすぎることにあった。


 あれ!? ここにきたらナツが必死に泣き喚いている声が聞こえると思ったんだが……

 

 まぁ。大丈夫だよな……相手は6歳児の子供だしな。きっと、出ることを諦めたのか中でしくしくと泣いているんだろう。


 

 俺は楽観的な思考のまま、閉ざされた物置の倉庫の扉を勢いよく開いた。


 そこにいたのは、隅でひっそりと座っている黒髪ツインテールの少女だった。



 その少女はこう口にした。


「あら。遅かったわね。あつきくん」


 彼女の真紅の瞳が俺の眼を鋭く貫いた。


 そんな彼女はただ笑みを浮かべていた。



 あれ!? おかしいぞ……

 本来だったら、ここは

「あつきくーん!助けに来てくれたの!? 私、一人でずっと寂しかった……あつきくんが来てくれなかったら、わたし……うぇーーーーん」

 と、そんな彼女を俺がヨシヨシするはずだった…………

 それなのに、なんで彼女は俺を睨んでいるんだ!?

 よし……こうなったら【鑑定】


一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一

【名前】蒼井 夏(アオイ ナツ)

【年齢】6

【親愛度】20

【状態】憤怒

一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一

【称号】【鬼姫】

一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一

 

 えっ!? 

 なんで親愛度こんな下がってんの? 

 しかもなんだよ。状態が憤怒って。

 それになんなんだこの称号!?

一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一

【称号:鬼姫】

取得条件

 特定の異性に対して、憤怒し痛めつけてやりたい激しく思うと得られることがある。取得にはある程度適性が必要。

効果

 メリット

相手への痛みを増大させられる

 デメリット 

特定の異性をいたぶる事によって自分の親愛度が上昇

一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一

 

 俺はいったいどこで間違えってしまったんだ……

 彼女の募った憤怒の解放はこれより始まる事になる。



 


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