第99話
「グッフ……」
「ヒューズさん!!」
何故かヒューズが血を吐いて倒れる。
「アハハ、惜しかったね!」
そこには、ヒューズの心臓に扇子を深々と差し込んでいるアケミの姿が居た……
「な、なんで……お前はアソコに……」
ヒューズの疑問に応える様に、視線の先のアケミは煙の様に消えた……
「ク、クソ……」
「アハハ、ぬか喜びさせて悪かったね!」
そして、ヒューズは最後にオカを見て微笑み地面に倒れ込んだ……
「「ヒューズさん!!」」
オカとダルマが叫ぶ。
「おや? まだ少し動いているね……」
ニヤっと笑いアケミは倒れているヒューズに扇子で滅多刺しする。
アケミの手が振り下ろされる度に赤いしぶきが当たりに舞ってた……
すると、ダルマがいきなり叫びながらアケミに向かって走り寄る。
その叫びには色々な思いがあるのだろう……
「ダ、ダルマよせ!」
オカは止め様と必死に足を動かす。だが、どこにそんな力が残っていたのかダルマは見た事ない様な速さで走り寄りアケミにタックルをかます。
「なぁ!?」
アケミ自身、まさかここまで力が強いと思っていなかったのか後ろに吹き飛ばされる。
「オカ!」
ダルマはハサミと依代をオカに向かって投げる。
「ソラタ!」
「ママ、マカセテ」
やっとの思いで地面着地したソラタオカに向かって走る。
「オラっ!」
カンジはソラタが走り出す瞬間にスライディングをしてソラタの片足を蹴り上げる。
「オ?」
上手く決まった様で、ソラタは地面に転がる。
「これで、終わりだ!!」
そして、オカは淡く光る着物と人間の指の剥製に向かって大きなハサミを力一杯振り下げた。
ハサミは依代に吸い込まれる様に深々と刺さる。
そして、オカは何度も依代にハサミを振り下ろす。それはまるで皆んな仇を討つ様に何度もだ。
アケミとソラタを見ると前回のマサオさんの様に足元の方から消え掛かっていた……
「ソ、ソラタ!」
「ママ、キエタクナイ!」
親子二人は地面を這い蹲りながら近付く。
だか、二人は触れ合う前に消滅した。
「終わったのか……?」
ここに来てからというもの色々な事が起きてオカはアケミとソラタを倒した実感が湧かない様だ。
「オカさん! やりましたね!」
メグが近づいて来てオカと喜び合う。
「あぁ! これでやっと終わりだ……」
二人が消えた後を見る。
「そうだ、ダルマは?」
二人は、ダルマとカンジを探す。
そして、オカはダルマの姿を視認した瞬間走りだす。
「ダルマ!?」
オカは倒れているダルマの側に近付く。
「はは……これで直ぐにヒューズさん達に会えるな……」
「バカ! 死ぬなよ!」
どうやら、アケミにタックルした際攻撃されたらしく血がドロドロと複数箇所から流れ出ており、助かる見込みは無さそうである……
「オカ、泣くなよ」
「お、お前が死んだらパラノーマルは俺だけになっちまうだろ!」
「はは、良かったじゃ無いか……いきなり社長だな」
ダルマは笑顔でオカに話し掛ける。
「オカ……」
「な、なんだ!?」
オカ自身もダルマが助からない事を理解しているのか、気丈に振る舞い顔は笑顔だが、手が震えていた。
「出来たらでいいんだが、ヒューズさんの横まで運んでくれないか?」
「あ、あぁ……」
オカは慌ててダルマを持ち上げる。
「はは、重いだろ?」
「ああ、ダイエットしないとだな!」
血が相当漏れ出ているのか、それともこの不思議な空間のせいなのか丘はダルマを持ち上げる事が出来ている。
「降ろすぞ?」
「あぁ」
ゆっくりと、ダルマをヒューズの死体の側に降ろす。
「はは、やっぱりヒューズさんはカッケェーや!」
「だな……」
ダルマがオカの顔を見て話始める。
「オカ、お前には本当に感謝しているんだよ」
「な、なんだよ」
「はは、マサオさんの件が終わってから俺と友達になってくれた事とか、パクトの時に身体を貼って助けてくれた事や、俺に楽しい日々を与えてくれた事とかな……」
「……」
オカは、何も言えないで泣くのを必死に堪える事しか出来なかった……
「はは、まぁ感謝しているって言ったけど、所詮はヒューズさんの次だけどな」
ダルマは揶揄う様に笑う。
「うるせぇーよ……」
オカも微笑む。
「オカ……ありがとうな……」
そして最後にオカにお礼を言いダルマが目を閉じる。
その光景をメグが後ろから見ていた。
「オ、オカさん……」
少しの間静寂さが訪れた。そしてオカは立ち上がる。
「メグちゃん
「は、はい!」
「カンジさんは?」
オカの言葉にメグは首を左右に振り、ある方向を見る。
「そうか……」
その視線の方向にはソラタにやられたと思われるカンジの死体が転がっていた。
「俺とメグちゃんだけになっちゃったな……」
「はい……」
ここに来る前は、あんなに人数が居た筈なのに今では二人……
「皆んなを、ちゃんとした所に埋葬してあげたいです……」
「そうだな……」
そう言いながらも二人はその場から動く事が出来ずに、ただただ景色を眺めていた……
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