第65話

「眠い……」


 オカはアラーム音で目を覚ます。社会人として働き始めて最近は眠いながらもアラーム音で起きれる様になったオカ。

 以前は完全に自堕落な生活をしていて夜型人間だった為、良くここまで朝型に戻せたものである。


「顔でも洗うか」


 部屋を出て洗面所に、ノロノロと移動する。


(パークさんは、今日何するつもりだろう?)


 昨日は一日掛けて現場調査を行ったが、特に何も無かった。


(今日も現場周辺を探し回るのか?)


 今日の予定を頭の中で考えながら、オカはリビングに向かい、母親の作った朝ごはんを食べながらニュースを見る為にテレビを付けた。





「皆さん、おはようございます。朝から悲惨な事件のニュースになります」


(また、例のニュースかな?)


「昨夜未明、変死体が発見されました。死体は手の指を全て切り取られており、死亡していたとの事です。被害者は若い女性と言う事で現在身元の確認をおこなっております」


(ん!? 例のニュースじゃない。それにこの殺され方って!?)


 テレビで流されたニュースは昨日、オカが調べたニュースとは別の事件であった。


(おいおい……立て続けに二つの死体が発見されているのかよ?)


 事件が二日連続で発生した事にニュースでも話題になっている様だ。


「警察は、一昨日発生した事件と今回の事件現場が、同じ場所付近の為、関連性があるのでは無いかと見て事件の捜査をおこなっている模様です」


(や、やばい頭が付いてこない。一旦整理が必要だ……)


 通常では考え辛い殺され方をされた死体が二日連続で見つかった。それも、二つの死体とも、この前パラノーマルに送られて来た例のメールと内容が同じなのである。


(例のメールでは、まず二つの都市伝説が書かれていたよな……。1個目の都市伝説と言い2個目と言い今回発生した事件の殺され方と同じだぞ……?)


 オカは慌てて会社に通勤する為に使用している鞄から例のメールを印刷した紙を取り出した。


「えっと、これだな」


 紙を開きニュースで流れた内容とメールの内容を比較している。


「やっぱり、事件発生までの過程はどうあれ、殺され方は同じだ……」


 オカは背筋が冷える感覚に陥った。


「と、とりあえず早めに出社するか」


 オカは急いで準備をする為に席を立ち上がると、また例の女の子の声が聞こえて来る。


(オカ……早く……二人を止めて……)


「誰!?」


(これから……どんどん……酷くなる……)


「誰なんだよ!?」


 誰も居ないはずの周囲に話し掛けるが返答は無く、声は聞こえなくなる。


「もう……なんなんだよ……」


 色々と一人では抱えきれない問題だと判断したのか、オカは着替えを済ませて直ぐに家を出た。



「皆さん、おはようございます! ニュース見ましたか!?」


 いつもより早く家を出たオカであったが、パラノーマルに着くと既に全員が揃って居た。


「オカ君、おはよう。ええ見たわ」


 社長であるプルを含めて全員が事務所内にある小さなテレビから視線を外せないで居た。


(結構早く家を出たのに、全員居るなんて、もっと早く出れば良かったな)


「どうやら、例のメールに書かれた通りの殺され方になったね……」

「は、はい。オカの見つけた依頼のメールと同じ殺され方を今回されましたが、これは犯行予告なんですかね?」


 ダルマはヒューズに聞く。


「うん。考えられるのは三つだよね」

「三つ? どういう意味だ?」

「一つ目はただの偶然だけど、これは少し考え辛いよね」


(こんな奇抜な殺され方が偶然一緒だと言うのは考え辛いよな……)


「二つ目は……?」

「二つ目は、元々今回みたいな殺し方を考えた者が事前に犯行予告的な感じでパラノーマルに送った事」


(二つ目はあり得る話だな)


「で、でも何でパラノーマルにそんな犯行予告を送る必要が?」

「ダルマ君、私達の会社は最近一気に有名になったからだと思うわ」

「ど、どういう事でしょうか……?」

「多分だけど、こういう犯行予告を送る人達は何かを伝えたいと思う人か単純に目立ちたいと思う人で、今話題になった私達を使って全国に広めようとしたんじゃ無いかしら?」


 プルの回答に納得したのかダルマは黙り込む。


「もし、これが犯行予告の可能性があるとしたら、警察に届けないと不味いか?」

「私達捕まっちゃう……?」

「捕まる事は無いと思うけど、警察には伝えといた方が良いかもしれないわね。後で私が伝えとくわ」


 プルは溜息を吐きながら頭を左右に振る。恐らく、警察に連絡などすれば、理由など色々聞かれる為面倒なのだろう。


「ヒュ、ヒューズさん三つ目は何ですか?」

「うん。三つ目は例のメールにも書いてある通り本当に都市伝説だった場合だね」


 どうやら、ヒューズもオカと同じ事を考えていた様だ。


(ヒューズさん、俺と全く同じ事を考えていたのか……)


 ヒューズが自分と同じ考え方をしていたのが嬉しかったようでオカは少し自信が付いたようだ。


「ヒューズ君、本当の都市伝説と言うとマサオさん的な事かしら?」

「えぇ。以前までなら、そんな選択肢すら思い付きもしませんでしたが、今は選択肢の中に入れるべきだと思います」


 ヒューズの考え方にこの場に居る誰もが頷くのであった……

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