第66話

「それじゃ、担当をそれぞれ振り分けようと思うわ」


 朝のテレビで事件が発覚し、その殺され方が例のメールに記載されていた内容と同じの為、どうやらヒューズ班とパーク班で、それそれを担当する様にするらしい。


「まず、最初の事件をヒューズ班に担当してもらおうと思うわ」

「分かりました」

「次に、今朝の事件をパーク班にお願いするわ」

「おう! 任せてくださいよ」


 パークが拳を握り締めて力強く返事をする。


(俺達が今朝の事件を担当か……)


 どちらも殺され方的には通常では無い。


「この先、何が起きるか分からないから十分気をつけて行動して欲しいわ」

「「「「「はい!」」」」」


 朝のミーティングが終わり、二つの班は動き出す。


「オカ、何も無いかもしれないがもう一度現場に行くぞ」

「は、はい!」


 パーク班としては、昨日に引き続き再度現場調査を行うようだ。


(今回は何か見つかれば良いけど) 


 二人は、黙って電車に乗り込みは駅に着くまでは特に会話がない様だ。


(パークさん、物凄い考え事をしているな)


 結局一度と話さずに駅に到着し、オカ達は二日連続で改札口を出た。


「よし、とりあえず昨日と同じく道すがら何か無いか探しながら現場に向かおう」

「はい!」


 二人は視線を地面に落とし、何か無いか確認しながら見て回る。

 しかし、結局何も見つけられないまま殺人現場に到着した。


「すげぇー人がいるな……」

「えぇ。これじゃ現場付近の手掛かり既に見つけられていますね」


 事件も無く普段の日であったらここは昼間でも静かな場所で人通りも殆ど無い所の筈が事件の影響で今では人で溢れ返っている。


「なんか、昨日より人が多いですね」

「あぁ。二日連続だからな……無理もねぇ」


 どうやら、ニュースでは、この警官達が居た場所で更に殺人が行われた為に一体警察はどの様な管理をしていたんだと、叩かれている様だ。


(それにしても、昨日の夜でも警察官が何十人と居たにも関わらずもう一体の死体が出たと言う事か……)


「警察が居るにも関わらず同じ場所で人を殺すって、普通ならしないですよね?」

「あぁ……犯人が同じでも、別であっても同じ場所を選ぶ時点で少しおかしいな」

「それだけ、捕まらない自信があるって事でしょうか?」

「うーん……今は分からねぇ」


 犯人が何を考えて行動しているかを推察しているパークは犯人の意図が何なのか悩んでいる様だ。


 そして、例の女の子の声がまたオカに耳に届く……


(オカ……犯人は……人間じゃ無いから……いくら探しても無駄だよ……)


「!?」


 またしても辺りをキョロキョロ見回すと、今回は沢山の人が周りに居て判断がつかない。そして、急に顔を上げて周囲を見回すオカだが、それを怪訝な目で見ている人達が居たので恥ずかしくなり直ぐに頭を下げる。


(クソ、またかよ……)


 視線だけで周りを確認しても、やはり分からない。


「ん? どうかしたか?」

「い、いえ。何でもありません」

「とりあえず、周囲を探して何も無ければ一度戻るか」


 人混みの中犯行現場付近を見て回ったが、特に何も見つけられなかったのでオカ達は昨日と同じく駅までの道のりを歩いていく。


(なんだか、女の子の声が段々と大きくなって聞こえてくる感じがするな)


 どうやら、最初は掠れた声で声量も小さかったので言葉の内容を聞き取れなかった様だが、段々と声が鮮明に聞こえ始めた様だ。


(さっきの声はハッキリと聞こえた……犯人は人間じゃ無いと)


 今のパーク班は、どっちかと言うと犯人が人間説の可能性で色々調べている。


(犯人が人間じゃ無いと言う事は、やはり都市伝説って事か……?)


 都市伝説が犯人だった場合は、確かに同じ場所で人を殺す事も可能なのかもしれない。


(そもそも声の正体は誰なんだ? なんで俺の名前を知っている? そして何で俺しか声が聞こえないんだ?)


 オカの中では沢山の疑問が沸き起こるが、この不思議現象の正体は何一切分からない。


「オカ、さっきからどうした?」

「い、いえ。この後は何を調べるつもりですか?」


 例の女の子の声が聞こえる件に関してはどう言っていいのか分からないのでパークには内緒にする様だ。


「うーん、やっぱり探したけど何も無かったしな……」


 結局二人は帰り道も何か無いか確認したが結局何も見つからずに駅に到着してしまう。


「オカは何かこれからした方が良いとか意見あるか?」


 パークが今後の方針についてオカの意見を聞く。


(犯人が人間では無いなら、やはり例のメールに書いてある都市伝説について調べるべきだよな)


 オカは鞄から一枚の紙を取り出しパークに見せる。


「ん? これはこの前オカが印刷してくれた紙か?」

「はい。戻ったら都市伝説に付いて調べてみたらどうでしょう?」

「都市伝説と言うと、動画に映り込む謎の男か?」


 例のメールに書いていた都市伝説には、それぞれ名前があった。


 パーク班が追っている都市伝説の名前が【動画に映り込む謎の男】

 ヒューズ班が追っている都市伝説の名前が【出会い系に現れる女】である。


「えぇ。帰ったら動画サイトを調べてみませんか?」


 オカの提案に一度考え込むパーク。


「そうだな。疑わしい事は調べるべきだな」


 パークはオカの案に賛同する。するとまたもや女の子の声が聞こえて来た。


(オカ……それでいい……)


 声の正体は一向に分からないが、何故か調査に関しては一歩前進した気持ちになるオカであった……


 

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