第63話

 オカとパークが現場に向かった頃、ヒューズ達はパラノーマルの事務所に残っていた。


「ヒューズさん、俺達は何をすればいいでしょうか?」

「うーん、そうだね。現場調査はパーク達がやっているから、俺達は出会い系サイトを確認してみようか」


 ヒューズの発言にダルマが動揺する。


「そ、そんな。ヒュ、ヒューズさんなら、そういうのに頼らなくても直ぐに見つかると思います!」

「ヒューズのえっち……」 


(あはは、これは二人共何か勘違いしているのかな?)


「出会い系サイトとは、例のメールで出てくるエブリデイについてだよ?」

「そ、そういう事か。良かった……」

「つまらない……」


 どうやら、ダルマは憧れのヒューズが、そういう目的じゃ無くて安心した様だが、フィブはどこかつまらなそうだ。


「そもそも、エブリデイと言う出会い系サイトなんてあるんですか?」

「ちょっと、調べてみようか」


 三人は、ヒューズの机を囲み検索をかける。


「あ、ありましたね」

「えっちなやつ……?」

「いや、どうやら一応サイト上では純粋な出会い系サイトと記載があるね」

「つまらない……」


(フィブちゃんは、一体何を考えているだ?)


 フィブの言動に戸惑うヒューズであったが、ダルマは慣れているのか特に気にした風では無かった。


「そしたら、まずは登録してみようか」

「そうですね。アケミを探すんですよね?」

「そうだよ。本当に居るかは分からないけどね」

「そしたら、登録用の写真を撮らないと……」


 フィブの言葉に三人は立ち上がり、どこか見栄えが良くなる所が無いか事務所をぐるりと見回す。


「ヒューズさん、ここなんてどうですか?」

「確かに、背景が白くていいかも」

「なら早速撮ろう……」


 すると、フィブがスマホを取り出した。どうやら、サイト用の写真を撮ってあげようとしているらしい。


「ここら辺に立ってて……」


 手を引っ張り撮影位置まで連れて行きスマホを構える。


「いくよ……?」

「おう! って待て……何で俺なんだよ! ここはどう見てもヒューズさんだろ?!」


 フィブが写真を撮ろうとしたのは、どうやらダルマだったらしい。


「ヒューズはダメ……」

「なんでだよ?」

「イケメンだから、関係ない女が殺到する……」

「た、確かに」

「けど、ダルマなら安心……」

「クッ……た、確かに……」


 本当の事ではあるが、実際に言われるとショックなのか、ダルマは頭を下げる。


「あ、あはは。ダルマ君が嫌なら僕が撮るよ?」


 気を使う様にヒューズがダルマに話しかけると……


「い、いえ! どこの女かも分からない奴にヒューズさんを渡す訳には行きません!」

「ダルマ素敵……」


 やる気無さそうにフィブはパチパチと拍手をしている。


「さぁ、ファブ! 俺を撮れ」

「うん……無理だと思うけど、なるべくカッコ良く撮る……」

「お前は一言余計なんだよ!」


 それからは、何故かフィブは何枚何枚も写真を撮り、ダルマにポーズまで取らせていた。


「いいよいいよ……次は目線を向こうに向けてみようか……」


 それでも、律儀に言われた通りのポーズを取るダルマであった……


(フィブちゃん、完全に楽しんでいるな……)


「ふぅ……たのし……ちゃんと撮れた……」

「な、なぁ。今楽しかったって言おうとしなかったか?」


 ダルマの指摘に、フルフルと首を左右に振るフィブだが、どこか楽しそうである。


「ヒューズ、どれがいいかな……?」


 フィブはダルマから逃げる様にして、今撮った写真集をヒューズに見せてくる。


「た、沢山撮ったね……」


 そこには、軽く50枚程のダルマ写真がブィブのスマホに保存されていた。


「うん……沢山撮らないと、ダルマの場合はね……」

「おい、その後の言葉には何が続くんだ?」

「……」


(はは、そんな事言っているけど、どれも良く撮れているな)


「なら、コレとコレなんてどうだい?」

「いいかも……」

「本当に、俺なんかで大丈夫ですか?」

「もちろんだよ。どれも良く撮れているけど、この二つはダルマ君らしさが滲み出ているね」


 ヒューズに褒められて嬉しいのかダルマは照れている。


「それじゃ、早速登録してみようか」

「はい!」

「おー……」


 三人は手際よく登録を済ますと、アケミを探し始める。

 三人共出会い系サイトを使うのは初めてな為、登録から検索画面までいくのに結構な時間が経過していた。


「探すと言っても登録者数多過ぎて大変そうだな」

「メッセージが来ない分、ダルマにして正解……」


 ダルマはヒューズの見えない所でフィブを睨み付ける。


「トイレ……?」

「ちげーよ!」


 フィブには効果が無い様だ。


(この人数から探すのは骨が折れそうだな)


「フィルターを掛けたほうが良さそうですね」

「そうだね。全国で検索だと人数が多過ぎるしね」


 あまりにも、多い為とりあえず住処を首都圏近郊でフィルターを掛けて調べる様だ。


「うーん、見当たりませんね」

「なんか、全員同じ顔に見えてくる……」


 それから、ヒューズ達はオカやパークが帰って来るまで、アケミを探し続けたが、見つける事は出来なかった。





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