第32話

「やばい、バレたぞフィブ!」

「そんな事言っても、届かない……」

「は、早くしろよ! 俺が殺される」


 オカ達は人間タワーで写真を撮ろうとしたがギリギリの所で届かないらしい。


「ダルマ、背伸び……」

「む、無茶言うな」


 オカ達が必死になって少しでも高くと背中を伸ばすが、どうやら難しい様だ。


「お前達、その写真に少しでも触れたら殺してやるからな」

「ひぃぃ、フィブ早く壊せ」

「無理かも……」


 そして、三人はマサオさんプレッシャーに耐えきれなくなったのか、人間タワーが崩れてしまった。


「イテテ」

「ダルマ、大丈夫……?」


 オカとフィブの下敷きになったダルマを心配してフィブが声を掛けるが、どうやらそんな暇は無いらしい。


「フィブ、ダルマいいから逃げるぞ!」


 三人は慌てて起き上がり逃げようとするが、どうやら遅かったらしい。


「あはは、お前達良くも俺の一番大切な物を盗ろうとしたな」


 声の調子は変わらないが表情は鬼の形相をしており、マサオさんが怒っている事が一目で分かる。

 そして、オカ達の目の前で逃げ場を塞ぐ様に立ち塞ぐ。


「どいつから殺してやろうか」


 マサオさんは、品定めする様に三人を順番ずつ見る。


「ヒューズ君、オカ君達が……」

「どうすれば、助けられる……」


 ヒューズとプルは離れた場所でオカ達が殺される所を見るしか出来なかった……。


「よし、決めたお前から殺そう」


 マサオさんが、三人の内の一人に手を伸ばす。


「ぐ、ぐるしい……」

「ダ、ダルマ!」


 マサオさんは樽の様な体型であるダルマを片手で易々と持ち上げたのである。


「アハ、お前は姫にも嫌われて可愛そうだな」

「は、はなぜ……」


 ダルマは自身の巨体を震わせてマサオさんの手から逃れようと必死に動かすがビクともしないようだ。

 そして、近くに居るオカとフィブもダルマを助けようとマサオさんにタックルなどをするが全く気にしたそぶりを見せない。


「あはは、姫に嫌われていたお前にも仲間が出来たのか?」


 ニヤニヤ笑いながらダルマの為に攻撃しているオカとフィブを見ていたマサオさんはもう一つの手でフィブを持ち上げる。


「うぅ……」


 片手でダルマを持ち上げているのに、更にもう片方でフィブを軽々と持ち上げたマサオさんはオカの方を見て呟く。


「この二人を殺したらお前の番だから待っててくれ」


 そう言ってマサオさんは少しだけ力を入れて二人の首を閉める。

 そしてフィブを離し、空いた手で大きなハサミを取り出す。


「ダルマ、悪いがお前には死んでもらうぞ?」


 マサオがハサミをダルマに振り下ろそうとする……。


 誰もが殺される瞬間を見たく無い為目を瞑りダルマが殺される瞬間を見ないようにした。

 そしてダルマ自身も殺される事を覆す事が出来ないと思ったのか顔に涙を垂らしながら、目を瞑る……。


 マサオさん以外の全員が目を瞑った瞬間……誰かが走る音が聞こえた。


「ダルマを離せよ」


 どこからとも無く声が聞こえた。だが全員が目を瞑っている為誰かなのか分からない。


「アハハ……あ?」


 唯一目を開けていたマサオさんだけは声の方を見ると……。


「オラッ!」


 マサオさんに大きな衝撃が襲いダルマを取り落とす。


「な、なんだ?」


 オカ達は何が起きているか分からず、状況を確認する為に一斉に目を開ける。



「「「「「パーク!」」」」」


 そこには何処から持ってきたのかバットを持ったパークが居た。


「よ! 皆んな大丈夫か?」


 体育会系特有の大きな声で挨拶するパークに対して皆は開いた口が塞がらない様だ。


 それでもと、代表してヒューズが聴きだす。


「パーク……き、君は殺されたんじゃ……?」


 全員がヒューズに同意する様頷く。


「いやいや、勝手に殺すなよ!?」


 パークは慌てて否定する。


「だ、だってテントに戻って来なかったし」


 ダルマの疑問にパークはニカッと笑い皆んなに説明する。


「あぁ、そこにいるマサオさんに殺されそうになったけど、なんとか逃げ切れたんだよ」


 流石体育会系と言うべきか無限の体力を持つマサオさんに対して逃げ切るなんて通常では考えられない。


「あはは、お前もここに来たのか」

「おいおい……金属バットで全力で殴ったのに無傷かよ……」

「あはは、俺にそんなもん効くはず無いだろ?」


 パークが殴った箇所に傷など一切無かった……。


「皆んな悪い、かっこつけて登場したのに意味ないみたいだ!」

「い、いえダルマが助かったので」

「そ、そうです。パークさんありがとうございます!」


 ダルマの命が救われたが危険な事には変わらない。


「あの写真さえ盗れれば」

「何かあるのか?」


 オカは素早くパークに依り代の説明をする。


「なるほだな」

「時間さえ有れば……」


 オカの呟きにパークが反応する。


「オカ、どれくらい時間は必要なんだ?」

「え、恐らく五分くらいは必要かと」

「五分か……よし!」


 オカの発言した言葉を復唱したあとに気合を入れたパークが言い放つ。


「五分間俺がマサオさんを押さえ込むからオカ達は自分達のやる事をしてくれ!」


 そう言ってパークは金属バットを持ってマサオさんに向かって走り出す。







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