第27話
「親に習わなかったのか、人様の家に勝手に入っては行けませんってな」
マサオさんはハサミをチョキチョキとしながら、オカ達の方に歩いて来る。
「に、逃げるぞ!!」
オカの叫びの様な掛け声に五人は逃げ出した。
必死に腕を振り走った。
だが、一つ問題が発生してしまう……。
「あ、あれ? プルさんとヒューズさんは?」
オカは後ろを振り向くと、フィブとダルマの二人しか居なかった。
「二人はどうしたんだ!?」
「し、知らないぞ?」
「もう一つのドアに行ったのかも……」
オカ達は慌てて逃げ出していたので、どうらや気付かなかった様だ。
そして後ろにはマサオさんの姿も無い。
「マサオさんも居ないって事は、プルさん達を追い掛けたのか?」
「恐らくそうだと思う……」
「な、なら早くヒューズさんを助けにいかないと」
「でも、流石に今来た道を戻るのは危ないと思うぞ?」
先程同様、オカ達は扉を入ってから全力で走り続けていた筈だが前を向けば永遠に続いているのでは無いかと思われる程長い廊下が続いていた……。
「ひとまず、進もう」
「ふ、二人はどうするんだよ?」
「今更私達が行って追いつける訳無い……」
フィブは淡々と言い放つと歩きながらも周囲を確認している。
(フィブの言っている事は最もなんだけど、言い方がドライだな……)
三人は、ひたすら歩き続けるが扉などを見つける事が出来ないでいた。
「な、なんなんだよこの家」
「これは流石におかしい……」
(こんな家で依り代なんか見つけられるのか……?)
「あ、あれ扉じゃないか?!」
ダルマが扉に向かって駆け出す。その後を二人が追い掛ける。
「ほ、ほら見ろ。俺の言った通りだ扉だ」
「開けてみよう……」
ゆっくり、静かに扉を開けるとそこには和室があった。
「部屋か……?」
「オ、オカ。早く中入れよ」
「お、押すなって」
男二人が部屋の雰囲気に怖気ついていると、フィブが二人の横を通り過ぎて部屋の中をスタスタと歩きまわっていた。
二人もフィブの後ろを歩き部屋内に入り中を見渡す。
部屋の中は決して広くは無いが落ち着いた和室であった。家具なども年季の入った物ばかりであり、一目見て古いと分かるほどである。だが、その古さが部屋の和室と合っている為、総合的に見て落ち着ける部屋となっていた。
「依り代あるかな?」
「わ、ワカらねぇーけど。依り代は見て判断出来るのか?」
「それも分からない……」
三人が部屋を探し回る度に畳の軋む音が鳴り、周囲の静けさと相まって少し悲しい気持ちにさせられる。
(この部屋は誰の部屋なんだろ?)
オカは一度部屋内をグルッと周り何かが無いか確認する。廃村の中にある一軒家とは考えられない程家の状態も良いし、全体的に古くはあるが、埃なども被っていないようだ。
畳の上をミシミシ音を立てながら歩き、オカは机の前で足を止めた。その机は小さく、そこまで荷物などを置けるスペースは無いが、そんな机の上に一つだけ写真立てがあり、オカは手に持ち確認してみた。
(古くて誰が写っているか判断出来ないな)
机の上に立て掛けられていた写真立てを見ると、成人女性が何やら抱いてカメラに向かって笑っている姿が映し出されていた。
恐らく撮影者は状況から見てマサオさんだと思われる。
(この人ってもしかして……)
オカが写真を見ている間にフィブは部屋にあるタンスを確認していた。タンスはこの部屋の中で一番大きい家具であり、一番年季も入っていた為、最初に探すべき所としては良い判断なのかもしれない。
「ここ、怪しい……」
フィブの言葉は予想以上に響き他の二人も、自分の作業を中断してフィブの方を見た。
一番下を確認したが、衣類などが入っているだけで、特に変わった物は無かった。
そして二段目のタンスを開けた時であった。何やら光を発光させている、着物があった。
「これ、もしかして依り代か?」
「で、でもマサオさんのなのか?」
「恐らく、マサオさんでは無くアケミの依り代だと思う……」
タンスから取り出して見ると、部屋内は暗い為光を放っている着物はより一層綺麗に見えていた。
(この依り代がアケミのだとすると、写真に写っているのはアケミとソラタか?)
古過ぎて写真がボヤけているのでアケミが抱いている人物が、ソラタなのかハルカなのか判断出来ない。
(都市伝説の話を聞く限り、恐らくソラタだな……)
オカが考えていると、ダルマが着物を見ながら呟く。
「な、ならこの部屋にマサオさんの依り代は無さそうだな」
アケミの部屋であるので、マサオさんの依り代は別にあるという判断らしい。
「この着物の依り代はどうするるんだ?」
「今は燃やしたりする時間も惜しい……元あった場所に置いとこう……」
念の為部屋を一通り確認した三人はアケミの依り代だけ見つけて、マサオさんの依り代を見つける事が出来ずに他の場所を探す事にした。
だが、ここでアケミの依り代を壊さなかった事を三人は後になって後悔する事になるなど、この時は思っていなかったようだ……。
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