第12話
正男を先頭に12人の男女は山を登っている。駅を降りた時点で周りは自然豊かであったが、今では自然しか無く道も舗装されていない。
女性達の中にはスカートやショートパンツなどを履いて来た者もいる為、とても歩き辛そうである。
「カリンちゃん、大丈夫かい?」
歩き辛そうにしているカリンを見て、すかさずヒューズが気を使うように言葉を投げかける。
「は、はい。ちょっと険しくなって来たので歩き辛いですが平気です」
「僕の通った道を進むと良いいよ」
「ありがとうございます」
カリンとヒューズのやり取りを見ていた姫が慌ててヒューズに向かって話し出す。
「あーん、ヒューズさーん。私も歩き辛いでーす」
甘える様な声で姫はヒューズを見る。筋肉パークみたいな男には刺さらないらしいが、オカやダルマは何か手伝える事が無いか姫の方を見る。
しかし、三騎士が常に姫の周りを守る様に囲んでいる為手伝う隙が無い為姫にアピールが出来ない状態だ。それは姫も同様で何か困っても直ぐに三騎士が手助けする為、ヒューズに近寄れない状態である。
「なんだか青春ね……」
今のやり取りを見ていたプルがシミジミと言う。
「プルさんだってまだまだ若い。いくらだって青春出来ますよ」
管理人である、正男がプルに対して助言をするが、まさか誰かに聞かれていたとは思わなかったのか、顔を赤らめているプルであった。
そして、今の会話に一切参加せず黙々と歩き続けている謎めいた女のフィブ。
「……」
話ながらも進み続ける事数時間……ようやく拓けた場所に到着した。
そこには、古い家が建ち並び周りは木が囲んでいる。
「皆さんお疲れ様でした。どうやらここが都市伝説マサオさんの住んでいた村になるらしいです」
管理人の正男の掛け声と共に皆が広がる様に村を見て回る。
「それでは、一度寝床などを準備したいと思います。テントは全部で三つ用意しました」
どうやら男性用のテント二つと女性用一つとして張っていくらしい。
「テントを張る組と料理組に分けたいと思います」
正男の指示の元、姫と三騎士が料理を担当し、他がテント設営をする事になった。
「ッチ、なんで姫と一緒じゃねぇーんだよ!」
ダルマは次こそ誰も聞いてない事を確認し悪態を吐く。
そして、正男とパークの指示の元テントはどんどん組み立てられていく。
「パークさん慣れていますね」
パークの見事な手際にオカは感心している様だ。
「昔からキャンプは好きでな。オカは……不器用だな」
「いやー、どうも運動系とか身体を動かすのは苦手で」
「運動はいいぞ! 今度一緒にするか?」
「き、機会があれば……」
「分かった今度誘うぜ。ダルマもどうだ?」
「お、俺も機会があれば……」
傍らでテントを抑えていたダルマは汗をダラダラ垂らしながらパークの言葉に応える。
「誰が運動なんかするか、運動するなら死んだ方がマシだ……」
テントが張り終えた頃に丁度料理も完成し皆んなでご飯にする事にした。
「オカー、カレーだよ!」
「美味そうだなー」
キャンプと言ったらカレーと相場が決まっているのか、誰一人残さず綺麗に平らげた。
「正男さん、これからどうされる予定です?」
ヒューズが食後のお茶を飲みながら正男に声を掛ける。
「そこまで大きくない村だからね、皆んなで見て回ろうと思うよ」
「確かに、ここからでも全て見渡せてしまう程小さい村ですもんね」
ヒューズの言う通り、とても小さい村である。
「マサオさんの話でも30人程が住む村ってありましたもんね」
「ほぉ、オカくんは良く読み込んでいますね」
「いえいえ、正男さんの記事の書き方が面白くて何度も読んでしまっただけですよ」
褒められた事により、オカは少し照れ臭そうに返す。
「ではしっかりと休めましたし探索に行くとしますか」
一同一斉に村を歩き見て回るが30分もすると全部見て回ってしまった。
そして今は各自自由行動をしている。
「オカー、なんか少し拍子抜けだね」
「そうだなー。やっぱり都市伝説だし期待はしてなかったけど、ここまで何も無いと流石にね……」
二人は、実際に現地に行ったはいいものの、何も無い事に少し不満がある様だ。
すると、プルが近付いて来て会話に参加した。
「ふふ、私は色々と不思議な現象が本当か現場によく行くけど大体はこんなものよ?」
「それだと記事にする事が無くてお仕事にならないのでは?」
「それはプロの腕の見せ所ね。何も無いけど、あたかもあったように見せる」
プルは二人を見て少しドヤ顔をするが、目付きが怖い為他人が見たら睨みつけている様に見えるだろう。
そして三人は他にも何か無いか色々見て回るが特に何も無かった。
「はぁ……。何も無い……この井戸は何かあるかと期待したけど、結局枯れている井戸だっただけだし」
カリンは知らず知らず愚痴がごぼれてしまっている様だ。
「オカ君は、さっきから何をしているのかしら?」
「何かマサオさんが居たと言う証拠とか無いかなーって思って」
オカはカリンと違ってまだまだ、この場所に興味があるらしい。それを見たプルはおかしそうに笑う。
「ふふ、オカ君は私みたいにジャーナリスト合うかもしれないわね」
「本当ですか?」
「えぇ。その何も無い所から何かを探し出そうとするのは大事よ」
プルに太鼓判を押してもらった影響かオカはより一層何か手掛かりになる事が無いか辺りの確認を再開するのであった。
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