第4話 ボス


「ぐっ……なんだよこの数」


俺たち1年B組は世田谷区の魔物が他と比べてそんなにいないとこへ飛ばされた。しかし、世田谷区内に約1000体だ。そんなにいないといっても、かなりの数いる。


「おい、みんな。ここは手分けして魔物共を駆逐しよう。俺と赤城であのでっけぇボスらしいやつをぶった斬る」


「了解」


「お互い頑張ろうな」


みんな声の掛け合いをする。ここは戦場だ。しかも、ゲームとは違うリアル。死んだら生き返ることもない。


「死者を出さない……か」


まだ、実戦経験の無い俺たちにできるのか?そう思った。


「安藤君。必ず、生き残ってよね」


「ああ」


やっぱりこの子は、俺のことが好きなのだろうか……。この戦いが終わったら告白しよう。そう心に誓った。


俺はみんなと離れ離れになってしまっては、確実に死ぬのは明白だったのに、なぜか1人行動をしていた。みんなにやはりステを見られたくないからというのも無論、ある。


「さぁて、どこから攻めていこうか」


直後、左からウルフらしき魔物が襲ってきた。俺はそれを全力回避するも、また別の四足歩行の普通の狼だが青い色をしている魔物が回避したところにいて危うく噛みつかれそうになったが、瞬時に状況を判断してかわす。


「こ、この数尋常じゃねぇ……。しかも、魔物たちを見据えても名前もステも『???』になっている。まだ俺のレベルが不十分すぎて魔物の相手にもならんということなのか……。ちきしょおおお!」


俺はとにかく、一体でも倒そうと、見た目が黄色ゴブリンに拳で襲いかかる。しかし、ゴブリンにすぐに気づかれてゴブリンの拳と俺の拳が激突する。途端、ものすごい骨がピキピキと鳴る音が聞こえた。他でもない、俺の力0の右腕だ。


俺の右腕は骨折以上の痛さを思い知った。痛い、余りに痛すぎる。死ぬんじゃないかってぐらいの痛さだ。そこへ、ゴブリンの次なる一撃が俺の腹部へとストレートに撃たれようとしていた。


その時――。誰かが、俺を攻撃しようとした黄色ゴブリンに剣を刺した。途端、黄色ゴブリンから激しく血が飛び散った。グロすぎて俺は顔を下に向けて目をつむり、耳を塞いだ。


「ふう〜、危ないとこだったな、直樹」


この声は……。


「お前は、時雨真也ときさめしんや……」


「いかにも。てか、喋れんのかよ。お前が喋ったところ見たことねぇぜ?」


「ま、まあな。へへ」


俺の彼女が話してたところは見られていなかったのか。ほっとするようなしないような……。


「ありがとう、助けてくれて」

「礼には及ばねぇ。それより、右腕抑えているようだが、なにかあったんか?ちょっと見せてくれよ」


そういやこいつの家は医者だったなぁ。


「わ、わかった。ほらよ」


「おい。こんなひでぇってレベルじゃない、ケガのレベルでもないぐらい傷ついておいてよく怖がったりしなかったな。立派だよあんた」


「褒めてるのかそうじゃないのかわかんねぇよ」


さすがはベテラン級の医者を父親に持つ息子だな。瞬時に見破るなんて。彼は周りをキョロキョロして見たあと俺を見てこう告げた。


「いいか?俺はこの傷をある程度までなら癒せる。だが、ここは余りにも魔物が多すぎる。俺が道を切り開くからお前は着いてきてくれ」


「わかった」


俺は指示通りに行動する。彼は言った通りに次々と行く手を阻む魔物たちを切り刻んで行く。道中で魔物と戦っている同じクラスの者を見かけるも、声掛けせずに彼は自分たちが助かるようにとひたすらに進んでいく。


「よし、この辺りなら魔物もいないし大丈夫だろ。いくぜ、ヒール!!」


すると、俺の体を緑色の暖かいオーラが包み込む。ああ、どんどん傷が癒されていく……。


「こんなもんか。俺のMP的にも、この傷は腕を少し動かせるぐらいまでしか回復させられない。完治させられないのは申し訳ないな。さ、復活したんだし頑張れよ。俺は他のやつらの助けに行くから」


「わかった、気をつけて」


俺はこういうやつほど、世界を救えるんだろうなと思った。しかし、関上、赤城。あいつら二人の実力なら今回のボスなら余裕で倒せるんじゃないのか。俺はやけに時間がかかっているあいつらのことを心配していた。


*****************


「やっと着いたな、赤城」


「ああ、あれが今回のボスだ」


俺は関上智晴。レベル32の駆け出しだ。今、俺と赤城がいる場所は世田谷区内の、空割現象のボスである魔物を目の前にしているところだ。


「ぐるああああああああぁぁぁ」


魔物の雄叫びがこだまする。あいつのHPバーを見たところ、さすがはボスといったところか、10本あった。しかも、周りには大量の雑魚が囲んでいる。これでは異様に近づけない。だが、俺には遠距離攻撃がある。


「関上流……ヤマタノオロチ!!」


途端、俺の振りかぶった剣からヤマタノオロチの顔と首が具現化した。つまり、8つの頭がある龍がボス目掛けて攻撃したのだ。しかし、その攻撃は通らなかった。なぜなら、そのボスを我先にと守らんばかりに周りを囲んでいた一部の魔物共が重なってボスの壁になったからだ。


「クソ、このままじゃらちがあかない」


いくらヤマタノオロチを撃ってもやつは雑魚を犠牲にしていく。


「このままじゃMPが尽きるのが先だな……」


「おい、関上。遠距離攻撃をホイホイ撃ってるだけじゃボスには当たらないぜ?俺がやつへ攻撃できるように雑魚どもを殲滅してやるからよ」


炎龍砲撃ドライブ・カノン……!!」


赤城の剣から凄まじい炎が暴れ出てきて、剣を振ったとおりに炎が敵を攻撃し、投げ払っていく。


「ざっと、こんなもんさ」


「サンキュー。うおおおお!!ヤマタノオロチ!」


ヤマタノオロチはついにボスを捉えた。ボスのHPを削るのか。と、思いきや傷一つできるどころかHPが全く減っていない。


「あいつ、硬すぎ」


「ぐるあああああああああああ!!!!」


ボスは雄叫びをあげて凄く鋭そうなとんがっていて長い爪のある腕を野球ボールを投げるかのようにする。


すると、氷の粒が一気に俺たち二人目掛けて降り注いできた――。

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