第3話 空割現象


学園中に警報の鳴り響く音が鳴る。この警報は最初に学園で鳴り、次に都内全区に鳴る。これは、空割現象くうかつげんしょうが発生するということを意味している。


空割現象とはその名のとおり、空に割れたようにヒビが入ってそのヒビから魔物――。つまり、モンスターが出現する。その数は毎回現象が発生する度に一つの区に必ず50体は出現するという。


「今回は訓練とも言えよう。なぜなら、新入生が入ってきたばかりの時に空割現象が発生したからだ。今回の空割現象処理チームは、新入生の者たちにやらせる。作戦は以上だ」


「「「了解!!」」」


学園の先生たちは、絶賛会議中だ。今日は授業が無くなるみたいでめっちゃ嬉しいぜ。


そして、先生が教室に戻ってきた。あ、言い忘れていたけど先生の名前は斎藤智久さいとうともひさ。BL機関の上位に君臨する程の実力者らしい。


「新入生である君たちにとっては、これは初めてのことだろうから説明しよう。今まさに空割現象が起ころうとしている。さっき鳴り響いた警報は空割現象の発生を意味している。これより君たちには発生する現場へ行ってもらい、発生源の魔物を討伐してもらう。発生源の魔物を討伐さえすれば、この現象は収まる」


「なんで入ったばっかの未熟者である俺たちなんすか〜?先輩たちに任せればいいじゃないですかぁ〜」


「そういう訳にはいかないのだ。先輩たちは都内に住んでいる全市民の避難を実行している。ん?了解」


最後の了解という一言はまるで独り言のようだった。先生は耳に手を当てる動作をしていたので、おそらくイヤホン的な物で上司からの命令を受けているのだろう。


「今、渋谷区に約100体の魔物が出現した。今回の魔物はそんな強くないらしい。頼んだぞ。なぁに!?世田谷区にも空割現象がはっせぇい!?!?出現数は……およそ1000……体……だと!?わかった。1学年の中でも抜きんでている者が多いこのクラスに任せろ。はい」


「世田谷区に行くんですか?てか、こっから世田谷区って歩くには少し遠い気がしますけど」


女子生徒が一人、先生に質問する。


「まあ待て、そう焦るな。移動手段はある。テレポートルームという教室があるのはご存知かな?そこに今日は入って目的地へ瞬時に移動する。いいか、死者は絶対に出すな。これだけは絶対の約束だ。私はやる事があるので行けないのだ。申し訳ない」


「はい!」


威勢よく返事したのは関上だった。彼ならばやって退けるはずだ。


俺たちはテレポートルームへ走って行く。そして到着した。テレポートルームへ入り、個々の名前が記されている機械へと入る。その縦長の機械がテレポートシステムと言うらしい。


「1年B組総員、出撃!」


「やってやるぜ」


「……必ず、救う」


「俺たちならできる!!」


「魔物なんてへっちゃらさ」


「なんとかなるなんとかなるなんとかなるなんとかなる」


「気合い入れてけ、俺――」


みんなテレポートシステムが起動し、テレポートされるまでの間に意気込みを言っている。そして、最後に俺が――。


「誰も……死なせない」


無能の俺がなぜそんなことを言えるのかはわからんかったけど。


そして、隣りを見る。そこにはあの、クラスの中でもトップクラスに入る美少女が俺のとこを見て微笑んだ気がしたのだ。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る