第3話 Scream
「...ウト?...ユウト?」
「な、なに...?」
考え事をしてぼーっとしていた。
彼女は本上アカリ。僕の幼なじみで親友だ。
「どうしたの?授業とっくに終わっちゃったよ?」
そうか、もう授業が終わってしまったのか。全く気がつかなかった。僕は昨日のドール、テレシアについてずっと考えていた。
昨日テレシアは僕の困惑する様子と少し感じる恐怖を感じ取ったのか、僕から距離を置くように少し悲しそうな顔をしながらドールポットへ戻って行き、
「何かあれば、お呼びください。」
と最後に言ってポットの中へ入っていった。
僕にどうしろっていうんだよ...。
「やっぱり具合悪い?昨日のニュース見たよ...。大丈夫?ユウト...」
アカリは父さんの死を心配してくれているのか。
「大丈夫大丈夫。僕元々一人暮らしだし、心配ないよ!」
「そっか...」
するともう一人こちらへやってきた。
「ユウトが大丈夫って、言ってるんだから俺らはいつも通りやればいい。だろ?」
「ああ、そうしてくれ。」
彼は山崎カイト。彼も僕の幼なじみで親友だ。
「よし、じゃあ学校終わったし帰ろうぜ!」
「え?今日午後ないの?」
「時間割見とけよ...。今日は職員会議があるから早く終わるんだよ。」
アカリめっちゃ知らなかったって顔してる...。まあ昔から天然なやつだから仕方ないか。
「そうなんだ...。じゃあ帰ろー!」
アカリのこの元気な性格からはいつも元気づけられる。
そして帰宅途中僕は生活費をおろさないといけないことを思い出した。
「ごめん!銀行寄ってっていい?...」
「いいけど、そっか。お前一人暮らしだもんな。」
「うん。ありがとう!」
銀行につくと結構人がいた。そういえば、他のところは今日休業のとこが多かったな。なんでだろ?
少しかかりそうだ。
「俺らそのへん座っとくわ。」
そう言うとカイトとアカリは銀行内にあるソファーに座った。
「ごめん、私トイレ行ってくるね。」
「おう、了解」
僕は少し長い列に並んだ。
「早くしないと2人に迷惑だよな...」
そんなことを考えていると、ふと視界に挙動のおかしな男がいることに気づいた。
あいつアカリを追ってないか?僕は生まれつき視力だけはいいから分かる。あいつの手を突っ込むポケットから少しだけだが黒光りするものが見えた。知っている。あれは昨日みた銃に似てる!
そう気づいた時には遅かった。
パンっ!一発の威嚇射撃ともにアカリは男の人質とされていた。
「ユ...ユウトぉ...」
「動くな!動いたら殺す!」
施設内に一気に混乱が拡大する。
まずい!まずいまずいまずい!早く気がつくべきだった!相手は銃だ!抵抗する術がない!...
男はアカリに銃をつきつける。
「お前さっきユウトとか言ってたな、おい!でてこい!」
アカリは涙を流しながらも
「そんなこと...言ってない!!」
「ほほう、言うねぇ嬢ちゃん。だったらー」
「待て!僕がユウトだ...。アカリを解放しろ」
アカリは涙を流しながら「どうして?」という顔をしている。
男はニヤついて銃をアカリに突き付けたまま言った。
「こいつ殺されたくなかったら、金をこのバックにありったけ詰めろ」
そう言うと男は右手に持っていたスポーツバックをこっちに投げてきた。
くそっ!アカリを助ける方法はないのか...。何か何か何か...。
すると昨日テレシアに言われた言葉を思い出した。「何かあれば、お呼びください。マスター」と。
来るという保障はない。だが、アカリを助けるにはこれしかない!一か八か!
僕は覚悟を決め、空気をめいいっぱいに吸い込み叫んだ。
『テレシアーーー!!!』
辺りは静まりかえり、男は笑った。
「ぶっ、アハハハ!!何言ってんだ!お前!」
きっと来る!そう信じて僕は男に指を突きつけ言った。
「覚悟しとけよ?コソ泥」
「あ?」
すると突然ガラス状の屋根を突き破り何かが降ってきた。
「お呼びですか?マスター。」
そう言うとテレシアはニコッと笑った。昨日の悲しそうな顔とは裏腹に。
まったく派手な登場だよ。
「ああ、命令だ。アカリを助けてくれ。」
テレシアは辺りを見渡してから、男を見た。
「把握。了解しました、マスター。」
アカリは呆気にとられながらも思った。舞い散るガラスがキラキラと光り、そこに立つ白髪の少女を見てただただ綺麗だと。
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