第2話 α-0001
郵送用ドールポット。それは言葉の通りドールを目的の場所まで郵送するドールポットだ。10年くらい前までは使われていたが、今では廃止されている。しかし、郵送用ドールポットは空を移動するため危険性を考慮して廃止された。
そのドールポットが今僕の目の前にある。郵送用ということは差出人がいるはずだ。
ユウトはドールポットに近づき、ドールポットを操作するタッチパネルに差出人の名前があることに気づいた。
「"白井コウタ"、やっぱり父さん...。」
予想はしていたけど、本当に父さんだとは思わなかった。だって父さんは死んだはず...。死ぬ間際に送ったってことなのか?
「でも、どうして...。」
すると突然プシュッと音がした。ドールポットが開いたのだ。何も触ってはいなかったが、きっと時間経過で開く仕組みになっているのだろう。僕は警戒し、後ずさった。
中から女の子、ドールが出てきた。見た目は、髪は白髪で、華奢な身体、年齢は14〜15くらいにみえる。
彼女は辺りを見渡して、最後に僕を見た。
月明かりに照らされるその子の眼はすごく美しくみえた。
「把握。目的地へ到着を確認。および"マスター"の発見。これより登録を行います。」
そう言うと彼女は手を出した。
「握手?」
「はい、握手により指紋認証を行います。」
「なるほど...。」
納得したユウトは彼女の言う通りに手を出した。
女の子の手なんか繋いだことないから、緊張するけど、この子はドールだ。ドール。そう言い聞かせてユウトはぎこちなく握手をした。
しばらくして
「登録完了。あなたをα型0001のマスターとして登録しました。私のことはテレシアとお呼びください。」
そう言うと彼女はニコッと笑った。
まるで人間みたいだ。本当に心がないとは思えないほどに...。
そしてユウトはふと疑問に思った。彼女が言ったα型とは一体なんなんだ。僕が知る限りドールにはβ型とγ型の2種類しか存在しないはずだ。
「なあ、テレシア。」
「はい?なんじょうか、マスター。」
テレシアは首をかしげる。
「α型って何?」
「それはー」
答えようとしたテレシアの顔が急に曇った。
「どうかした?」
「何者かが家の中に侵入しました。」
「えっ...」
まさか次は本当にテロリストが...。
「排除しますか?」
排除って、ドールにそんなことできるはずがない。だってドールは人間をサポートするためにつくられたもののはず。
「時間がありません。マスターの命を最優先とします。」
そう言うとテレシアは廊下から迫ってくる複数の足音のするほうへ戦闘態勢に入った。
ドアが静かに開いた。間を置いて黒幕目の銃をもった連中が一斉に入ってきた。それに対してテレシアの行動は早かった。入ってきた敵に一瞬で近づき構える銃を拳で粉砕した。
なんて速さとパワーだ。本当にこれは僕の知っているドールなのか...?
「なっ!?」
彼女以外のその場の全員が状況を理解できていなかった。それも当然だ。突然女の子に拳ひとつで銃を破壊されるなんて普通に考えてありえない。
すると彼女は右足を軸に身体をひねり左足で相手の顔面に回し蹴りをくらわせた。相手は後頭部から派手に倒れ、気絶した。それを見た相手のうちのひとりが銃ではダメだと判断したのかナイフでテレシアに斬りかかった。
「このクソ女がっ!調子に乗るな!!」
「調子には乗っておりません。ご安心を。」
くるりとそれを軽くかわすと拳を引き、相手の腹へ本気のパンチをくらわせ、後ろの壁まで吹き飛ばしてしまった。
「ぐはっ...」
もう戦える状態ではなくなっていた。
「クソッ、仕方ない撤退だ!」
そう言うとそいつは何かを投げてきた。とっさにテレシアは僕をかばおうと目の前に一瞬で移動してきたが、それはスモーク弾だった。辺りが煙で覆われ、物音とともにやつらは消えていた。
テレシアはくるりと振り返る。
「おケガはありませんか?」
僕は状況を全く理解できていなかった。なによりも...
「君は一体...」
テレシアは静かに答える。
「私はα型0001。ー戦争のためにつくられたドールです。」
彼女の瞳は美しく真実をつげていた。
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