Dolls Heart
白木優
第1話 Encounter
サイレンの音が止まない。
今私の研究所はテロの襲撃をうけている。だが関係はない。私は"あいつ"のためにこの今の世界のためにこれを完成させなければならない。
「白井教授!もう限界です!はやく逃げましょう!」
私の助手は心がおれんばかりの恐怖に押しつぶされそうな顔をしている。
「私はいい。君だけでもはやく逃げなさい。」
「ですがっ....!」
「君には娘がいるはずだその子のもとに戻りなさい。」
教授が優しい笑顔で言うと、彼女本上マユミは人生に悔いるような顔をした。
「ごめんなさい...」
マユミは走り去っていった。
よし、完成だ。後は郵送するだけだ。すぐそばまでやつらは来ている。時間がない...。
私は完成した最後のドールα型0001を郵送用ドールポットにつれていき、行き先を白井ユウト。私の息子のもとへ設定した。巻き込んでしまうのはわかっている。だが、ユウトに託すほかない。きっと守ってくれるはずだ。
後ろから複数の足音が聞こえる。もう時間がないみたいだ。最後にユウトに会いたかった。
それが教授が最後に思ったことであった。
*
西暦2156年、日本とアメリアは人類初となる自立型人工知能人型ロボット通称"ドール"の開発に成功した。当初はまだ様々な分野において適応力がなかったが、2217年、人間の生活をサポートするβ型、そして工業や産業のサポートをするγ型が登場したことにより、ドールは世界的に瞬く間に普及した。それを当時23歳にして設定したのが白井コウタ教授である。彼は日本とアメリカの架け橋となる重要な人物であった。
しかし、彼は死んでしまった。
*
父さんが死んだと知ったのは、学校から帰宅し、ふとつけたニュースだった。今日も何もない普通の生活が終わったと思っていた僕にはあまりに唐突で突然で理解できなかった。
「どうして...父さんが...」
彼、白井ユウトはただただテレビの前でうずくまり泣いていた。
ユウトが気がついた頃には辺りは暗くなりとっくに夜になっていた。
「晩ご飯つくらないと...」
彼は重い腰を上げ、立ち上がり、キッチンへと向かった。
なにかをしていないと悲しみと怒りに押し潰されそうな感覚に陥ってしまうようだった。
食材を取ろうと冷蔵庫を開けようと手を伸ばした。するとベランダでなにかものすごい物音がした。まるでミニロケットが着陸するかのような...
「なんだ...」
ユウトはとっさに自分も父さんと同じようにテロリストに命を狙われているのではないかと恐怖を感じた。しかし、覚悟を決め、ベランダへ続くカーテンの前まで移動した。
「大丈夫...」
自分に言い聞かせるようにいい、一回深呼吸をしてから思い切ってカーテンを開けた。
「ドール...ポット...?」
そこには見たこともない白髪の少女。ドールが保管されていた。
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