第15話 はーちゃん、ゆーちゃん

鮎川西見という名の少女。

俺のクラスメイトであり、そしてクラス委員でも有る。

そんな彼女がボッチで有る俺に声をよく掛けてくれていた。

だけどそれはヤレヤレな感じで接しているものと思っていたのだが。


今日、生徒会室で.....偶然、本が落ちてきて鮎川を守る為に押し倒した際に落ちたロケットペンダントの古ぼけた写真で、俺の.....幼い頃の幼馴染と判明した。

そして今、目の前の生徒会室の入り口に悲しげな顔をしている.....七瀬が居る。

では問題。


この場合、七瀬は一体.....誰だ。


七瀬は一体、何者なのだ?

俺の記憶が.....七瀬も鮎川も微かしか無く。

それでいながらも俺の親も全てを認識させている七瀬は.....誰だ?

一体、誰なんだ。


鮎川が俺の幼馴染。

だったらおかしいだろ、七瀬の存在が、だ。

俺を好いている理由がまた分からなくなってきた。


「.....真実を話して聞いてもらえるかな」


「.....お前.....ちょっと待て。誰なんだお前」


頭が混乱してきた。

一体、誰なんだ七瀬は。

七瀬水色とは俺の敵なのか?


それとも別の何かなのか?

すり替わっているのか?

複雑に思っていると、七瀬はパイプ椅子に腰掛けてそして。

その口から答えを出した。


「.....七瀬水色は確かに貴方の幼馴染だよ。そして.....貴方のその記憶にはもう一人、幼馴染が居るの。そしてその女の子は.....鮎川西見っていう、彼女だよ」


「.....え?」


「.....実は私、ジグソーパズルの破片を持っているの」


「.....は?」


ジグソーパズル?

いきなり何の話を.....と思っていると。

七瀬は胸元からネックレスを引っ張り出した。

そのネックレスには.....確かにジグソーパズルのピースが有る。


簡単に言えばそれは何処かにハマりそうな感じで.....金属で出来ている様だった。

俺は???を浮かべながらジグソーパズル型のネックレスのエンブレムを見る。

そして.....七瀬は真剣な顔で言ってきた。


「.....今まで黙っていたけど、西ちゃんは.....私の親戚だよ。だけど.....ゆうちゃんの幼馴染でも有る。そんな西ちゃんも.....ジグソーパズルのピースを持っているんだ。このジグソーパズルは完成する。貴方。つまりゆうちゃんの持っている.....ジグソーパズルのボード型のネックレスさえあれば」


「.....つまりは何だ。俺は.....幼馴染が二人居て。そして.....ジグソーパズルがハマった方が勝ちって事か?」


「.....そうだね。それで.....全部が決まるよ。でもボードのネックレスをゆうちゃんは無くしている。だから.....今は無理なの」


「.....鮎川の存在を俺の親は知っているのか?」


知らないね。

この事は.....大昔、私、君、西ちゃんで外で決めた事だから。

文句無い様にって、ね。

昔から西ちゃんも私も貴方が好きだったから。

だから.....決めれないからそれなら文句無いよねって。

そう、説明した.....七瀬。


俺は愕然とした。

じゃあ鮎川も俺を.....好きな人?

何でアイツは今まで俺に隠していたんだ?

その様に.....思いながら居ると。


ネックレスを机に置いた、七瀬。

そして、何で、って思っているんだよね、と声を掛けてきた。

当たり前だ。


何故.....鮎川は俺に秘密にしていた。

それも.....半年以上。

好きだったから隠していた?違うよな。


「西ちゃんは.....照れ屋さんだから。って言っても納得しないよね。西ちゃんは多分、私が攻めているのを見て自然と諦めたんじゃ無いかな。だからゆうちゃんに自然に接しているだけだった。だけど.....今日、ゆうちゃんがロケットペンダントを見てそれは終わったって事だよ」


「ちょっと待て.....それじゃ鮎川を追わないといけないじゃ無いか!」


「そうだね。説明している暇は無いね。私も探すよ。こうなった以上はね」


七瀬はネックレスを持って立ち上がった。

ちょっと待て、マジに鮎川は何処に行ったんだ!?

俺は鮎川の行きそうな所を考える。

そしてハッとした。


「.....分かった。鮎川は.....多分」


「.....何処に行ったか分かるの?」


「中庭の大きな桜の木の下だ。多分そこだ」


「.....そっか。じゃあ行こうか」


本当は追って欲しく無いけどね、と七瀬は少しだけ頬を掻きながら言う。

だけどそんな事じゃいけないから、と七瀬は話す。

頷きながら取り敢えず.....鮎川からも話を聞きたいと思いながら俺は.....生徒会室を飛び出した。



ビンゴだった。

駆け出して下駄箱を靴を履いて越えると。

桜の木の下で蹲っている鮎川が居た。

鮎川は俺達の姿に気が付いてない様だ。


因みに何故、桜の木の下か。

それは.....俺がよく見ていたから、だ。

だからそこに行きそうだと。

直感だった。


「鮎川」


「.....ッ!?.....は、長谷部くん.....?」


髪を揺らしながら赤面で俺を見る、鮎川。

俺は.....背後の七瀬に頷きながら。

桜を見る。


「何やってんだ?」


「.....な、何って.....言われても.....」


同じ様に桜を見ながら。

俺には全く見向きもしない。

そんな姿に.....俺は声を発する。


「.....お前さ、俺に隠し事をしてないか?」


「何も.....隠して.....」


「西ちゃん」


鮎川に声を掛けた、七瀬。

ビクッと鮎川が反応して.....七瀬を見た。

そして.....鮎川は視線を彷徨わせる。


「.....隠してもバレるものはバレるんだよ。気持ちも、だけどね」


「.....えっと.....えっと.....ななちゃん.....?」


「.....もう良いんじゃ無いかな。正々堂々と私と戦ってくれない?自分の気持ちを素直にさらけ出す時かもよ」


「.....」


鮎川は、でも、と俺を赤い顔で見る。

そして.....ボッとまた赤面した。

でも私は.....はーちゃんを好きだなんて.....ななちゃんに申し訳無いし.....と目線を彷徨わせる。

胸にロケットペンダントを押し当てながら、だ。

すると七瀬は空を見上げて話した。


「私、考えた。西ちゃんの幸せも考えないといけないんじゃ無いかって」


「.....え?」


「.....西ちゃんの意見も尊重するべきじゃ無いかってね」


「.....でも私は.....」


鮎川は泣きそうな顔になった。

それを.....七瀬が抱き締める。

それから.....七瀬は鮎川の額を弾いた。

痛い!と鮎川は言う。


「.....私は負けたと思ってないからね」


「.....」


「.....」


ピースサインを出す、七瀬。

俺は.....その姿を見ながら.....溜息を吐く。

二転三転する様な性格だな、コイツ、と思いながら。

すると鮎川が聞いてきた。


「.....私.....良いの?」


「.....俺は決めれない。何故かって.....記憶が無いのに申し訳無いから、だ。だからお前らのバトルについていける気はしない」


だけどな、と俺は言葉を切る。

そして鮎川の頭に手を添えながら笑みを浮かべた。

お前ら、仲が良いんだから、と言う。


「.....鮎川。俺はお前が素直になってくれる事を祈るよ。幼馴染なんだから」


「.....分かった。.....有難う。はーちゃん。ななちゃん」


「.....でもゆーちゃんの件は負けないけどね」


「.....お前.....」


鮎川から笑い声が出た。

俺達は桜を見上げる。

もう散ってしまったが。


それでも.....桜が咲いている様な。

そんな感覚に陥りそうだった。

幸せは続くよ何処までも。

その様な.....感じだった。

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