第14話 鮎川西見という少女

俺みたいなのを好いても.....仕方が無いと思ったりもする。

だけど七瀬も御白も.....俺に惹かれたと言う。

そんな二人に俺は答えを渡したいと思っているが.....俺は根性が無いな。

その様に.....思える。

二人はそんな事は気にして無い様に見えるが.....。


「鮎川」


「.....何?」


「女の子が好きになるってどんな感じなんだ?」


「.....直球で私も女の子なのに聞いてくるね。.....どう答えろって?私って恋をした事無いんだよ?もう」


俺は少しだけ青ざめながら頭を掻く。

そうか.....要らん事を聞いたな。

俺はその様に申し訳無さげに言いつつ頭を下げながら.....生徒会室で目の前の書類の山を片す。

すると暫くして声が聞こえた。

うーん、と悩んだ声だ。


「.....アドバイス欲しいんだよね。.....一つだけ言えるのはね。女の子が好きになるってそう無いよ。1万回出会いが有ったとしてもその中で好きになるって一回、有るか無いかだと思うよ。全部が.....まぐれなんだよ」


「.....」


「.....好きになるって本当に.....不思議なんだよ。人は何処で恋に落ちるか分からないけどそれは奇跡だと思うから。だから.....君は絶対に後悔させる思いをさせたら駄目だから。って言うか君がそんな事はしない人だって分かるけどね」


ね?と鮎川は笑みを浮かべる。

日差しも有ってか鮎川の笑みが輝いて見えた。

俺は.....その姿を見つつ.....そうだな、と言う。

だよな、と、だ。

書類を見ながら.....鮎川を見る。


「.....分かった。.....あ、そう言えば書類.....あとどう片したら良い?」


「.....あ。もう良いよ。ここまで書類を運んでくれたらもうだいじょ.....」


そこまで言い掛けた鮎川の背後から本が落ちてきた.....!?

俺は危ない!と鮎川を突き飛ばした。

それから倒れて俺が上から下の鮎川に手を突く形になって。

鮎川が目をパチクリして赤面する。

そして鮎川は、あ、有難う、とゆっくりと起き上がる。


「でもそういうのは二人にしてあげて。私じゃ無くて」


「.....あ、ああ。すまん.....」


「.....でも君は本当に優しいね。体を張ってくれるって」


「.....当たり前の事をしただけだ」


そうかな?

でも.....そんなに簡単に出来ないと思うよそんな行動。

ふふっと嬉しそうに笑みを浮かべる、鮎川。

俺は.....その姿を見ながら笑みを溢す。


「じゃあ俺、行くな?」


「.....うん。じゃあね」


そして鮎川と別れ、歩き出すと。

何かを蹴飛ばした。

俺は?を浮かべて足下を見る。


その場所に.....ロケットペンダントが落ちていた。

俺は拾い上げる。

鮎川のか?思いながら鮎川に声を.....え。


「.....え?」


そのロケットペンダントは蹴飛ばしたせいか開いていた。

うっかり中を見てしまったが.....そのペンダントの写真は.....幼い頃の俺と。

その写真に記憶が有る。

間違い無く幼い俺だ。


横にはブイサインをした鮎川だろうか、写っていた.....え?

え.....ちょっと待て。

どういうこ.....とだ???

俺は唖然としながら.....鮎川を見る。

気付いた鮎川は.....余りの衝撃だったのか手から書類をバサバサと落とした。


「.....嘘.....」


鮎川は小さく、その様に呟く。

俺は見開きながらロケットペンダントを見た。

そして.....聞く。


「.....鮎川.....どういう事だ.....この写真は.....!!!!!」


と思っていると鮎川は俺の手からロケットペンダントを無理矢理、奪った。

その勢いで俺は膝がガクンとなって後ろに手をつく。

そのまま生徒会室から鮎川は走って行った。


俺は.....仰天に仰天しながら.....目を真正面のゴミの様に落ちている書類を見る。

額に手を添え.....そして考える。

考えを無理矢理、纏める。

しかし.....全く.....答えが出ない。


「.....確かにあれは俺の写真だ。だけど.....え?」


『はーちゃん。私ね.....』


確か七瀬は俺を今も.....{ゆーちゃん}と呼んでいた。

だが、あの時、俺が少女の声がした時。

その時に呼ばれたのは.....{はーちゃん}だった。

ちょ、ちょっと待てどうなっている。


年齢と共に.....七瀬の俺への呼び名が変わったと思っていた。

だけどそれは違うという事か?

じゃああの{はーちゃん}は.....七瀬じゃ無い.....?

あれが鮎川なら.....!?


「.....」


喉が鳴った。

ゴクリと唾を飲み込んだ音だ。

俺は.....無意識に唾を飲み込んでいた。

え.....じゃあ七瀬は記憶の少女じゃ無い.....という事か?


「.....あ、鮎川.....鮎川に聞かないと.....!」


無理矢理、押されて尻餅をついた。

その為に尻が痛い。

だけど今はそんな事を気にしている場合じゃ.....と思っていると。


目の前に.....七瀬が立っていた。

俺は.....見開いて.....静かに見つめる。

いや、見据えた。


「.....七瀬.....」


「.....知ったんだね。真実を」


「.....」


俺に七瀬の記憶が無い。

それは.....何と無く分かった気がした。

だけどそれでも.....それでも。


謎が多過ぎて頭が纏まらない。

何が.....起こっているのか。

それも分からない。

ただ俺は.....目の前の悲しげな顔の七瀬を見つめるしか出来なかった。

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