第13話 この世界の希望に気付いた時

途轍もない事が判明した。

何がと言うと俺の事を御白が好きだという点。

たったそれだけと周りは思うかも知れないけど俺にとってはかなりヤバいんだが。

何がヤバいかと言えば.....七瀬.....とか。


「有難うございました!お手伝いして頂き.....!」


「いや、大丈夫だよ。此方こそ有難うね。色々と楽しかった」


図書室の掃除が終わった。

菜々先輩はその様に白島さんに話す。

白島さんは、有難うございます、と繰り返し頭を下げた。

それからお礼をしたいと白島さんは言う。


「.....今度、またお伺いします。その時に.....!」


「.....白島さん」


「あ.....はい?」


「大丈夫。手伝い部は手伝いするのが目的だからね。そんなに頭を下げないで」


七瀬が大丈夫と言いながら白島さんにそう話した。

俺は.....その姿を見ながら.....顎に手を添える。

しかし.....御白が.....と、だ。

見た御白はハワワという感じで赤面していた。

唐突すぎたかな.....という感じで呟いている。


「御白。大丈夫か」


「は、はい!先輩!」


「.....」


「.....」


そして言葉が途切れた。

どうしたら良いのだろうか.....。

俺達は頬を掻く。

それから.....うーんと俺は悩んだ。

すると背後から抓られた。


「ゆーちゃん。デレデレしない」


「あ、はい.....」


「な、七瀬先輩だけの先輩じゃ無いです!」


「お、おう」


む、と七瀬は言いながら。

右左で腕を取り合う、七瀬と御白。

勘弁してくれ.....と思いながら先輩に助けを求める。

しかし.....先輩は止める気は無さげな感じで見ていた。

アハハ、と苦笑している。


「.....でも幸せだよ。私は」


「.....え?」


「.....楽しいから、だ。勇大、雪子、水色。君達が来てから」


それじゃあ挨拶も済んだし行こうか、と先輩は言う。

俺達は顔を見合わせて頷いて駆け出す。

まだまだ色々問題は有るけど。

取り敢えずは.....今を楽しもう、と思った。


「.....そう言えば佐藤先生は帰ったのかな?」


「ああ、奥で整理していたから知らないんだろ。職員室に帰ったぞ」


「そうなんだね」


さて.....部室に戻ったらどうするか。

思いながら.....俺は部室に帰宅しようとした。

その際に思い出す。


もう直ぐ.....4月中旬だな、と、だ。

4月中旬はテストが有る。

小テストだが.....面倒臭いな。


「あれ?長谷部くん?」


「.....あれ?鮎川」


「どうしたの?埃まみれ.....」


ビックリしている書類を持った鮎川が目の前に立っていた。

かなり重そうな感じだ。

俺は直ぐに鮎川に駆け寄り手伝う。

すると.....鮎川は有難う、と言いながら目をパチクリする。

俺は笑みを浮かべる。


「埃まみれなのは気にすんな。仕事して来たんだ」


「.....あー、なるほど。.....ところでその、長谷部くん、其方の女の子は?」


「.....後輩の御白雪子だ」


「.....えっと.....睨みがキツいね.....あはは.....」


鮎川は苦笑しながら俺を見る。

この馬鹿野郎。

俺は額に手を添えながら盛大に溜息を吐いた。


そして肝心の御白を見る。

御白は頬を膨らませてムーと言っていた。

再び盛大に溜息を吐く。


「.....先輩。その方は誰ですか」


「.....クラス委員の鮎川。.....あのな、そういう関係じゃ無いって」


「あはは。そんな関係じゃ無いよ。.....ん?でも.....もしかして御白さん.....」


鮎川はニヤニヤしながら御白を見つめる。

御白は目をパチクリしながら、えっと、と目を彷徨わせた。

そしてこくんと頷く。

俺もボッと赤面しながら.....そっぽを見た。


「.....そっか。御白さん。.....頑張ってね」


「.....はい」


御白は恥ずかしがりながらの笑みを鮎川に見せた。

それを見ながら俺は少しだけ口角を上げて笑みを溢す。

すると鮎川が俺の肩を叩いた。


「それはそうと.....長谷部くん。その書類、生徒会室まで運んでくれない?」


「.....分かった。運ぶよ」


「ちょっと。ゆーちゃん。私を忘れてない?」


俺は見開いた。

そして背後を見る。

七瀬が黒いオーラを出しながら腕を組みながら立っていた。

俺は思いっきり冷や汗を噴き出す。

それから.....苦笑した。


「.....な、七瀬.....忘れていた訳じゃないんだが.....」


「.....じゃあ何か?イチャイチャしても仲が良いから許してくれるって?あはは。冗談キツいよ〜。.....詳しく話を聞かせてくれるかな?今直ぐに」


「.....す、すいませんでした」


今直ぐに謝らないと殺されそうな勢いであった。

それから頭を上げて、詳しく話すから今はこれを運びたい。

直ぐに行くから.....帰っていてくれと言う。

七瀬はまだ話が終わってないよ?と言うがそんな七瀬の腕を先輩が掴んだ。

それから俺に向く。


「まぁまぁ水色。帰るよ。.....良いかい?」


「え?.....あ、はい.....?!」


全く、駄目だよと菜々先輩が結構黒い笑顔を見せる。

まさかの先輩の表情、行動に俺も驚愕であった。

御白の腕も掴まれて連れて行かれる。


取り敢えずは書類が運べそうだな。

思いながら俺は鮎川に向いて、じゃあ行くか、と、話した。

って言うか先輩、怖い。

俺は顔を引き攣らせながら居ると鮎川がクスクスと笑いながら俺を見る。


「.....君が.....安心したよ。楽しそうな人達に出会って.....そして面白そうな部活に入って。私は心配だったんだ。君の事が」


「.....お前は俺の母親かよ」


「ん?本当だよ?心配だったんだからね。.....でも君を守ってくれる様な人達が.....現れてくれて良かったな。私.....それも安心した。君は.....一人だったから」


「.....お前な.....」


俺は少しだけ嬉しくなる。

そんな中、俺に笑みを見せながら鮎川は、早く行こう、と俺の手を取る。

本当に.....鮎川は良いやつだな。


友達.....昔から鮎川が居たらどれだけ.....良かったか。

クラス委員のメンツだろうけどそれでも俺なんかを心から心配してくれる。

俺が.....絶望していた時も、だ。


「.....鮎川。俺さ、お前にも出会えて良かった。有難うな」


「.....今更?.....あはは。私は.....当たり前の事をしているだけだよ。君が.....困っている姿を見て.....救いたいって思ったから救った。ただそれだけ」


「.....でもお前とかを軸に何もかもが変わったよ。本当にな。世界の見方も」


「.....大袈裟だよ。あはは」


いいや。

俺にとってはマジなんだ。

鮎川、七瀬、御白.....皆んな。

そいつらに支えられて.....今が有る。

だから今度は.....俺が.....。


『はーちゃん。私ね.....』


「.....?」


「.....?.....どうしたの?長谷部くん」


「.....いや.....?」


何だ今の声。

頭の中に.....まるで入り込む様に。

少女の声がしたが.....。

気のせいか?

俺は首を振って鮎川に向く。


「何でもねぇわ。早く運ぼうぜ」


「あ、うん。そうだね」


俺は眉を顰めて考える。

でも気のせいにしては.....と、だ。

はっきりとした少女の声。

聞いた事の無い声だな。

今のは何だろうか.....。

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