第五章 何!?

第12話 恋愛師匠、佐藤満先生

アニメは絆を深めると聞いた事が有る。

しかし.....それでもまさか七瀬と御白が仲良くなるとは思わなかった.....のだが。

今の惨状で本当に仲良くなったと言えるのだろうか.....。

御白は掃除が不器用なのか埃を振り撒いている。

七瀬に至っては.....頭からバケツを被った。


七瀬は料理は得意だがそういうのは苦手の様だ。

俺はあちゃーと思いながら額に手を添えて.....白島さんは本が濡れない様に、埃まみれにならない様に必死に慌てて対策をとっていて、先輩は苦笑していた。


「ゆーちゃん。これは苦手って訳じゃ無いんだよ」


「.....いや。もう良い。苦手って事が分かった。取り敢えずはどうやったらそんな感じになるのか教えてほしいぐらいだ」


「.....先輩。これは苦手って言いません」


「.....お前も黙れ」


同じ様な事を言うな。

って言うか.....二人とも笑うな。

俺は盛大に溜息を吐きながら.....苦笑した。

でも良い感じでは有るな、と思いながら。


「.....七瀬。御白。お前ら、本の整理に回ってくれ。俺が掃除するわ」


「.....え?出来るの?掃除」


「失礼だな。ボッチ力を舐めるなよ?七瀬。掃除は得意だぜ」


箒も床掃除も得意だからな。

思いながら白島さんに向いた。

何処を掃除したら良いのか、と聞く。

七瀬と御白は俺を見てから奥に行った。



「ねえ!皆んな!」


掃除も中程まで進んだ頃。

そんな感じで居ると奥から御白と七瀬が慌てながらやって来た。

手に何かを持っている。

俺は?を浮かべながら、どうした?、と聞いた。

すると.....七瀬は何かを見せてくる。


「これ.....凄く無い?」


「.....恋愛ノート?」


「.....え?これって何だい?」


恋愛ノートと書かれた分厚い本だ。

と言うか.....簡単に言えば、ノートの上にノートを貼り付けた。

そんな感じのノートだ。

図書室には似つかわしく無い。

何だこれ?


「.....白島さん、知ってたか?」


「し、知らないです。何でしょうか.....」


「.....図書委員が知らないのか.....」


何処に有ったんだこのノートは。

思いながら.....少しだけボロいそのノートを見る。

七瀬が奥の方を掃除していたら出て来たの。

と話す。

マジかよ。


「.....中を見てみます?」


「.....しかしなぁ.....他人が隠したものだろ」


「勝手に隠したものだったら表面に名前も無いし中を見るしか無いと思うね」


先輩が言うなら.....まぁ開けるか。

と思って一ページをめくる。

白島さんも、誰のだろう、と呟きながら見つめる。


そこには.....誰かの恋愛模様が描かれていた。

写真も貼ってある。

この聖子ちゃんカットとかから髪型から推測するに、結構前。


「.....何だか幸せそうだね」


「.....だな。笑顔だしな」


しかも一人じゃ無い。

かなり大人数のカップルの恋愛模様が.....そこに記録されていた。

でも何だか見た事の有る人も居る様な?


でも.....何だってこれの保管場所が図書室なんだ。

思っていると.....背後に人影を感じた。

俺達はバッと背後を見る。


「.....さ、佐藤先生!?」


「.....貴方達。何をやっているのかしら」


「いえ、え!?」


そのノート.....見つけてしまったのね。

と.....少しだけ赤面しながら.....先生は呟く。

え?と俺は素っ頓狂な声が出る。

先生はノートを見ながら苦笑する。


「.....見つけてしまったものと中身を見てしまったのなら仕方が無いわね.....そのノートの創設者は私よ」


「.....ファァ!?」


「え!?先生!?」


「.....当時、図書委員だった私。そのノートは処分しようと思ったら失くしたの。この黒歴史を探し当てた人は何処の人かしら?あはは」


先生は満面の笑顔だった。

まぁその、黒くなかったら良い笑顔なんだけど。

俺たちは顔を引き攣らせて傅きながらノートを渡す。

そのノートを受け取った先生はペラペラ捲る。

そして盛大に溜息をぶち撒けた。


「.....全く。当時の私ったら何でこんなものを.....」


「.....でも先生も青春していたんですね」


「.....青春.....ね。二十年前の話よ」


「あはは」


このノートは個人情報満載だからシュレダーにかけるわ。

と先生は話す。

そんな先生に七瀬が立ち上がって聞いた。

指をクルクルさせながら、だ。


「.....えっと!先生!」


「.....ど、どうしたの?」


「恋愛師匠!私は.....ゆーちゃんと付き合うにはどうしたら良いでしょうか!」


言葉に目をパチクリしながら佐藤先生は驚愕する。

ブファッと唾を吹き出してしまった。

な、七瀬の野郎!

思いながら居ると、佐藤先生は少しだけ困惑しながら.....恋愛師匠って。

と呟いていた。


「.....えっと.....私は師匠って呼ばれる覚えは無いわよ?先生だから.....」


「いや、でも.....付き合っていたんですよね!?」


「.....え、えっと.....」


七瀬、取り敢えず戻って来い。

思いながら.....再び盛大に溜息を吐いた。

佐藤先生は目を回している。

えっと、えっと.....と困惑していた。

すると。


「それだったら.....それだったら!!!!!」


「.....え?」


「私だって.....せ、先輩が好きですから.....恋愛の色々を教えてほしいです!」


いきなりたちあが.....へ?

俺と先輩と白島さんは突然の事に、へ?、としか声が出なかった。

へ、え.....ぇ!!!!?

超絶真っ赤に赤面する、俺。

唖然とする七瀬。


「.....七瀬先輩だけズルイですから!」


「ちょっと待て御白!?どういう事だよ!!!!?」


「私.....昔から先輩が好きでしたよ?」


「ウッソだろお前!?」


いきなりの告白。

世界が止まった様な気がした。

スローモーションになった気が。

その中で佐藤先生は再び溜息を吐いた。

それから.....見つめてくる七瀬と御白を見る。


「.....そんなに言うなら.....と言うか私に聞いてもろくな意見は言えないわよ?」


「それでも良いんです!」


「はい!」


何だこの戦い。

なんか.....掃除だっただけがえらい事になってねぇか?これ。

思いながら.....モテモテだな、お前、と先輩にイシシと言われながら。

赤面をしつつ気を逸らす様に外を見た。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る