第11話 アニメの力

手助け部の規則というか、鉄則というか。

この手助け部に助けを求めてわざわざ来てくれた客人に対して失礼などを絶対にしないという事を聞いた覚えが有るのだが.....。


俺は額に手を添えながら.....今現在の目の前を見る。

わざとでは無いかも知れないが、七瀬と御白。

かなりの威圧感で有った。


これは困ったもんだな.....。

思いながら俺は盛大に溜息を吐く。

それから.....もう一度見た。


目の前のパイプ椅子に腰掛けている白島さんはビクビクしている。

俺は先輩はというと学習机を2つ付けて長机にした手前に腰掛けている。

因みに御白と七瀬はお茶を淹れているが.....。


「.....あ、あの.....」


「お茶です」


「.....あ、あの.....」


「お菓子です」


御白と七瀬がそれぞれその様に話す。

かなりニコニコしながら接してはいるが怖いってばよ。

思いながら俺は.....苦笑いを浮かべる。


まるでナ○トの主人公の様な口調だが。

するとその空気を変える様に先輩が手をパンパンと叩いた。

それからハイハイと二人に言う。


「えっとね。水色。雪子。ダメだよそんな感じじゃ。客人に失礼だろ。えっと.....白島さん。詳しく話を聞かせてくれるかい?」


「あ、えっと、はい!.....えっと.....図書室の掃除をしてほしいという件なんですけど.....図書委員が風邪で休んでいて清掃員が足りないので.....手伝ってほしいんです」


皆んなが使う場所なので綺麗にしておきたいんです。

白島さんは周りを気にしながらその様に話した。


なるほど、と俺は顎に手を添えて思いながら先輩を見る。

そんな先輩は柔和に接していた。

話を聞くのも嬉しそうな感じで有る。

この部活が.....蘇った事も有るのだろうけど。


「.....なるほど。確かにそれは大変だ。じゃあ手伝おうか。良いかい。水色。雪子。勇大。仕事だ」


「分かりました。先輩」


そして溜息をまた吐きながら背後を見る。

御白と七瀬が睨み合いながらもフンと首を振っていた。

いやもう、仲良くしろって.....。

思いながら俺は額に手を添えて全くよ.....と思う。


「えっと、雪子。水色。仲良くね。喧嘩していても仕方が無いよ」


「そうですね.....」


「.....はい」


七瀬と御白は複雑そうな顔で御免なさいという感じで頷く。

先輩も少しだけ苦笑しながらそれを見つつ図書室へ向かう準備をする。

しかし.....七瀬と御白.....本当に仲良く出来るのだろうか。

少しだけまだ不安なのだが。

心の中が不安だ。



この学校の図書室は3階に有る。

そして.....とても綺麗だ。

この学校の生徒の心を表現している様なものだろう。


思いながら.....俺は窓から外を見る。

青空が広がっていた。

飛行機雲が見える。


「.....どうしたの?ゆーちゃん」


「.....何でも無い。いや.....部活に入って良かったって思ってな」


「.....!.....ゆーちゃん.....」


そうだね、とニコッと笑みを見せる、七瀬。

俺は.....少しだけ赤面した。

可愛らしい笑顔だったから。

全く.....信じられんよな。

こんな可愛い子が俺を好いているとか。


昔の俺だったらここまで変わらない。

そして変わる事は無いだろう。

七瀬のお陰だ。

思う。


「.....先輩。ジッと七瀬先輩を見ないで下さい。不愉快です」


「.....お前.....境○の彼方のヒロインみたいな事を言うな」


「.....え?」


分からないならそれでも良いけど。

あの子も不愉快です、と言うからな。

考えながら.....図書室に向かう。

先輩が早く早くと言うので、だ。

俺は溜息を交えながら二人を見つつ歩く。


「先輩、アニメ好きなんですか?」


「.....は?」


「.....いえ、私、京アニ、シャ○トとか好きですよ。さっきは咄嗟の事で分からなかっただけです」


「.....お前、アニメ観るのか?女なのにか?」


女だからって関係無いですよ。

だって面白いじゃ無いですかアニメって世界が広がるって言うか。

と御白はワクワクしながら目を輝かせて話す。

面白いっちゃ面白いが.....。

まさかアニメ好きだとは思わなかった。


「.....御白。じゃあ.....F○eeとかは?」


「観ますよ?観ました。あれ良いですよね。水泳ボーイズの青春アニメです」


「.....成る程.....」


俺は結構なアニオタだ。

コイツとはかなり気が合いそうな。

と思っていると七瀬がズーンと落ち込んでいた。

俺は慌てる。


「.....えっと.....その.....な、七瀬さん?」


「ふん。私はどうせアニメも分かりませんから」


「.....いや.....それが悪いって事じゃ.....」


俺はしまったな、困った.....と思っていると御白が七瀬の手を取った。

そして.....少しだけ控えめながらも笑みを見せる。

それからこの様に話した。

もし良かったら、と切り出して、だ。


「.....もし良かったらアニメ一緒に観ます?お勉強という事で」


「.....え?良いの?」


「はい。た○こマーケットとか.....そうですね.....響けユー○ォニアムとか面白いですよ!一緒に.....観ましょう」


「.....じゃあ.....一緒に」


御白も嬉しそうだった。

七瀬と御白を目を丸くして見る。

偶然ながらも.....アニメで繋がった。

喧嘩が.....収まっている。

俺は.....嬉しく思ってしまった。


「.....君達。図書室までまだ着いてないぞ。さっきから呼んでいるのに」


「「「.....あ」」」


先輩が#を浮かべてハリセンを取り出していた。

俺は顔を引き攣らせる。

そして.....皆んなもクスクスと笑っていた。

こんな単純で世界は繋がるんだな。

俺は.....少しだけ考えを変えようと思った。

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