第四章 記憶に有る少女

第9話 ヤバイんですが

この家には俺、母さん、父さんが住んでいる。

だけどそんな家に対して俺の嫁候補として.....七瀬水色という少女が居る。

所謂、ホームステイの様な形で、だ。

俺と父さんと母さんで七瀬と一緒に暮らし始めて3日目になる。


七瀬と居ると世界が色付く様に見える。

だがそんな中で少し気になっている点が有る。

何が気になっているのかと言えば。


父さんと母さんは.....何も言わないが相手側。

つまり七瀬両親に関して俺に知らせた情報が殆ど無いのだ。

七瀬もあまりその事に触れない。

だから俺は敢えて何も言わないが.....。


このままで良いのだろうかと悩んでしまう部分も有る。

俺は思いながら.....朝ごはんを食べる。

取り敢えずそれは置いて。

今日、小テストも有るが取り敢えずそれが終わってから部活の活動をしよう。


「七瀬」


「何?ゆーちゃん」


「.....テストが終わったら.....部活をしようと思う。良いか」


「良いよ。ゆーちゃんに任せる」


そうか、と俺は前を見る。

ニヤニヤと目をへの字にしている親父が居た。

何だコイツ、気持ちが悪い。

思いながら眉を顰めつつ親父を見る。


「いやー。お前も変わったな!勇大!アッハッハ!」


「気持ちが悪いんだが親父.....」


「あ?お前殴るぞ?」


笑顔が消えて俺を睨む親父。

息子を簡単に殴るなよ。

溜息を吐きつつ俺は考える。

すると.....七瀬が笑顔で俺を見てきた。


「ゆーちゃん。今日のご飯は美味しい?」


「.....相変わらずお前は上手だよな。料理。美味いよ」


「昔は違うけどね。.....良かった。喜んでもらえて」


「.....でもお前、この前から聞いているけど昔は違ったのか?」


そうだよ、と七瀬は控えめに言う。

俺は.....その言葉にそうか、と答えた。

昔.....は違う.....。

その時代に俺も居た筈なのだが.....。

俺は少しだけ控えめに笑みを見せながら言う。


「お前も食べろ。このままだと遅刻するぞ」


「あ、そうだね。ゆーちゃん」


とご飯を食べようと七瀬が動いた時。

インターフォンが鳴った。

俺は箸を持ったまま?を浮かべながらインターフォンを見る。


朝の七時三十六分。

なのに誰だ?こんな朝っぱらからと考えながら見ていると。

あらあら誰かしらと母さんが立ち上がった。


「はーい?」


そんな母さんの呼び掛けに。

相手側の声がする。

それは.....若い女の子の声でこの様に話す。

衝撃的な一言であった。


『えっと、長谷部勇大くんは居ますか』


「.....あ.....?」


俺は目が丸くなる。

長谷部勇大は俺だが.....え?

直ぐに父さんが窓から外を見る。

そして俺を訝しげな目で見た。


「お前、浮気でもしてんのか?」


「.....そんな訳有るか。ってか女の子?」


「女の子だ。つーか.....美人だぞ相当な」


「.....は.....?」


そんな馬鹿な事って?

俺は大きく見開きながら直ぐに七瀬と共に窓から確認する。

インターフォンの前。

確かに美少女が立っている。

嘘だろ、あんな知り合いは.....はっ!


「.....ゆーちゃん。あれは誰かな?」


七瀬から黒い炎がボウッと音がして燃え上がった。

俺は冷や汗を流しながら親父を見る。

何で俺だ!?という感じで逃げて行く親父。

逃げんなよコラ!?

俺は慌てて玄関まで走る。


ガチャッ


「あ」


「.....あの、俺が長谷部勇大だけど.....どちら様かな?」


「御白雪子(ミシロユキコ)です。岡山の学校で先輩に助けられて.....今回、引っ越して来た地区の学校で先輩が歩いているのを見掛けたので挨拶しに来ました」


「.....御白.....雪子.....」


御白雪子、その名前を聞いて.....俺はハッとした。

そして.....思い出す。

名前に記憶が有る.....そう。


俺が確か.....中学校に登校している途中に足を挫いていて助けた女の子だ。

その後に名前だけ確かに聞いたんだが.....でも、それだけだぞ。

本当にそれだけなのに?


思いながら見つめる。

そう言えば.....黒縁メガネを着けて無いせいか。

分からなかった。


御白は地毛の茶髪。

そして.....黒縁メガネであまり目立つ存在じゃ無かった。

顔立ちは可愛い方だと思う。

成績が優秀だったけどそれを誇ったりもしない。

俺みたいなボッチとその事件をきっかけに話してくれた.....唯一の女の子だ。


引っ越す時に.....別れを告げて。

当時は.....まだ携帯も持てなかったから。

だからそのまま別れてその後は音沙汰なしになってしまった。

のに。


今、コンタクトをしているのか黒縁メガネが無く。

そして茶髪をポニテにして。

更に.....かなり清楚な雰囲気になって。

俺の学校の制服を着ている。

そんな御白に笑みを浮かべる俺。


「すまない。御白。お前が誰か分からなかった。随分と.....綺麗になったな」


「先輩もお変わり無いようで嬉しいです。この前見た時、何だか.....随分と丸くなった様な感じの様に見えました」


「.....」


御白しか親友と呼べる存在が居なかった昔を思い出す。

俺と御白はボッチだから合点が一致していて意気投合だったんだ。

その事を思い出していると.....背後から寒気がした。

俺はバッと背後を見る。


「.....誰かな?ゆーちゃん」


「.....あ、えっとな.....昔の友人だよ」


「..........ふーん.....」


いや.....冷めた目をするな。

そんな関係じゃ無い.....と思っていると。

御白が俺の袖を引っ張った。

それから.....俺をジト目で見る。


「.....何で一緒に帰って居た人が家に居るんですか。こんな朝早くから」


「.....いや.....その.....」


「私は同棲しているんだけど。文句有るかな?」


言ってはいけない事を七瀬は言ってしまった。

七瀬の背後の炎が燃え上がっている。

俺は愕然としながら顔を引き攣らせて見つめる。


真っ赤に赤面する、御白。

それから俺の肩を掴ん.....できた。

色々と燃えている。


「.....どういう事ですか?先輩。詳しく話を聞かせて下さい」


「そうだね。そこだけは合点が一致しているね。ゆーちゃん。この子とは色々とどういう事かな?そして何で記憶しているのかな?」


「.....」


なんて近所迷惑なんでしょう。

そして何で俺はこんな目に遭っているのでしょうか?

ただ昔、仲良かっただけなのに。


俺.....殺されるんじゃ無かろうか.....。

額に手添えながら.....最悪の再会を感じつつ.....説明を考えた。

ヤバイ、何も思い浮かばない.....。

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